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6月21日の裁判員ミニフォーラム(世田谷)に参加した聴覚障害者の感想と意見 (東京地方裁判所事務局 総務課長宛提出)
(0)裁判員制度へのかかわりについて
・検察審査会においてはかつて視聴覚障害を欠格事由としていましたが、聴覚障害者が抽選で選ばれて失格に異議を唱えたことから、多くの欠格条項に先立って廃止されています。この経緯から裁判員制度ではどうなるかと注目していましたが、幸い障害による欠格は規定されませんでした。そうなると視聴覚障害者が選ばれた場合は情報保障が必要です。最高裁の裁判員制度関連のウェブサイトを読んでみましたがその方面の情報はありません。問い合わせようにもアクセス手段は電話番号のみしかなく、聴覚障害者の私には書面しか方法がありません。手紙を出しても返事がありませんから、仕方なく人に電話してもらうと、「その手紙は着いているが書面の返事は出来ないことになっている」という返答でした。電話ができれば少なくとも手紙が着いたことの確認くらいはできるのだと残念で、そのいきさつ及び広告やホームページでは多くの場合、アクセス手段として電話番号のみしか表示しないことを批判して新聞に投稿して掲載されました。ちょうどその頃からそのウェブサイトにメールアドレスが表示されるようになり、何回か投稿して返事をいただいたこともあります。 ・それと平行して裁判員の啓発映画に字幕が付与されるようになったのですが、その借り出しの申し込みは地裁に電話しなければならないので何のための字幕かと思われ、それについてもう一人の方と一緒に抗議したのですが、連絡用のファクス番号の公開は拒否されました。しかしその後は各映画はウェブサイトからダウンロードして見られるようになり、その限りではこの問題は解決したことになります。この字幕入りの啓発映画の一つが今回のミニフォーラムでも上映されたわけで、あの時に声をあげておかねばどうなったかと感慨がありました。 (1)情報保障について ・お手配くださった手書き要約筆記のお二人は東京手話通訳等派遣センターを通じて依頼されたものと思います。私の当初の希望であったパソコン要約筆記をそちらの方でもお考えとのことでしたが、どのようにして探されたのでしょうか? パソコン要約筆記者は同センターからも派遣可能となっているようですが、実際は熟練者の数が少なく、なかなか需要に応えられないようです。 ・聴覚障害者が裁判員に選ばれた場合に依頼する手話通訳、要約筆記者の絶対数が不足する可能性があり、各地裁で苦慮しておられると聞いております。一方で聴覚障害者自身が情報保障者についての情報を持っている場合が少なくなく、前項の私の場合でもパソコン要約筆記のベテランを何人も知っておりましたので、そちらから問い合わせてくだされば双方に好都合な結果となった可能性があると思います。これは東京という条件のよい地域の話ですが、地域によっては情報保障の事情について十分に把握している組織は必ずしも存在しませんので、聴覚障害者が裁判員に選ばれた場合は、情報保障の手段の他に情報保障を行う者についても本人に聞いてみることが必要であり、有益であると思います。 ・私は当初希望するものとして、「聞き取りができないのですが、手話には慣れておりませんので、パソコンで筆記する方を2,3名同道させていただきたいと思います。要約筆記ですと公的派遣はあるようですが、経験からして専門語が多いと困難なようですので、裁判所速記官で電子筆記をなさっている方にお願いしたいと思っております。」とお知らせしました。これに対して「ご要望のありました裁判所速記官の派遣につきましては、検討しましたが、裁判所速記官の業務の範囲外であるため、難しいという結論になりましたので、ご了承ください。」というご回答でした。裁判所速記官の方々は電子タイプを利用することによって、現にリアルタイムで全文の文字化を行っているということですが、こういう優れた手段があるにもかかわらず「業務の範囲外」ということで用いないのには疑問を感じます。過去に聴覚障害者が当事者や証人の事件で、速記官が法廷で文字通訳をした事例は何例もあるということですし、「業務」といえばミニフォーラムには現職の裁判官の方が何人か説明役で出席されていましたが、これなど裁判員制度普及のための新しい業務なので、速記官による情報保障も裁判員制度の発足に伴って新しい業務として認められても、少しもおかしいことはないと思います。なお、アメリカでは聴覚障害者のために速記タイプを用いて情報保障するビジネスがありますが、その起源は裁判の記録の作成であるということです。御参考になる事実だと思います。 ・知人の手話ユーザの聴覚障害者があるミニフォーラムに参加し、7月の(2日制の?)模擬評議にも参加するということでいろいろ問い合わせたのですが、後者では自分で選んだ手話通訳を同道するということです。私の場合と異なるようですが、これはミニフォーラムの参加者と模擬評議の参加者の違いなのでしょうか。 (2)参加者の情報について ・ミニフォーラムの受付で住所氏名のようなものを記入するのだと思っておりましたが、そういうことが全然ないので驚きました。想像するに個人情報保護の関係からそういうことになったのではないでしょうか。説明員の裁判官の方とも雑談しましたが、個人情報保護の行き過ぎは種々の悪影響を及しているようです。 ・参加者は模擬評議の後、裁判員・裁判員制度について懇談するものだと思っておりましたが、実際には模擬評議の結果を集約したところで終了し、あとは任意に説明員と懇談ということで、参加者の感想や意見は後に残らないことになったようです。裁判所側は参加者が今回の経験を周囲の人に話すことによって裁判員制度への認識が深まればよいという立場でしょうが、せっかく人を集めるのですから、参加者からの意見や注文を聞いて記録し、後々の改善に資するものとするという考え方はなかったのでしょうか? 参加者の発言は記録されていなかったようですし、住所氏名の記入を求めなかったことから後々のフォローの手段も放棄したわけで、もったいないと思います。アンケートはありましたが、内容のあることを書くスペースや時間はありませんでした。あるいはアンケートは後日郵送でも可とすればよかったかもしれません。なお、住所氏名不要ということが個人情報保護に関係するならば、これは主催者がしっかりと保護管理をすればよいことだと思われます。 ・この項目について特に書いたのは、私という聴覚障害者が参加したにもかかわらず、記録に残るのは情報保障者の選択や依頼の方法程度で、聴覚障害者がフォーラムや模擬評議に参加してどうであったかは問われていないということに気がついたからでした。聴覚障害者が一名参加したというのみで、参加以前のやりとりはともかく、会場到着以後のことについては何も残らないのでは、今後に資することはできないでしょう。手話ユーザの知人が参加したということを聞いたので、要約筆記ユーザも参加して存在を認識させたいと、不自由な身体を押して出かけたのですが、参加したという事実のみしか残らず、現実のどうであったかということには関心を払われないようでしたのは残念でした。住所氏名の記入があれば後のフォローも可能性があると考えたわけです。私自身は積極的に係の方とコンタクトし、遅ればせながらこういうものも書いているのですが、これは一般化できないと思います。 (3)謝礼について ・ミニフォーラム参加者にはボールペンと資料を入れたバッグが渡され、謝礼はありませんでしたが、もちろんそれで十分です。正規の裁判員は日当1万円程度だと聞きますが、1日制ないしは2日制の本格的模擬評議の場合はどうなのでしょうか。私の知人は公務員なのでことわったと聞きましたので、謝礼が出るということのようですが。 ・同じ知人によると、その方は自分で選んだ手話通訳2名を同道するが、この方々も公務員ないしそれに準じる者なので謝礼は辞退するということです。一方で私の場合は「田中様が御自身で要約筆記者を依頼された場合は,当庁から費用をお支払いすることはできませんので,御了承ください。」とのことでした。ミニフォーラムと本式の模擬評議とでは扱いが違うと解してよろしいのでしょうか? (4)残された疑問 ・ある新聞に「裁判員制度における障害者施策の検討に際して、最高裁判所では外部の障害当事者等を交えた検討委員会等の設置は考えていない。」という記事が載りましたが、これは事実でしょうか? 事実とすればどういう理由からでしょうか? その後最高裁がこの記事に対して訂正を申し入れたということは聞いていません。何故そうまで言い切ってしまったのかと疑問です。たとえば障害者自立支援法などでも対象となる障害当事者の意見を聞くことが不十分ないしは皆無だったので、施行後はさまざまの不都合が生じ、時間的にも費用的にも多くの無駄やあつれきを生んでいます。最高裁が本当に「障害当事者の意見は聞かない」とお考えであるのならば、一日でも早くそれを改めていただきたいと思います。 ・「図面・写真や証拠の録音テープなどを見聞きすることが事実認定に不可欠な場合は、裁判員法の欠格事由に当たるとして視覚・聴覚障害者を選任しないケースもあり得る」という報道もあります。これは今後裁判員の選抜に当たって基準になるものなのでしょうか? 裁判員の選定が最終的には当該法廷の裁判長に委ねられることを考えると、この「基準」が理由とされて、ほとんどの場合に視聴覚障害者が排除される危惧を感じます。視聴覚障害者の参加が100%可能であるとは言い切れませんが、面倒を嫌うような人によってこの「基準」が容易に用いられないように、もっと厳密なルールをこしらえるべきでしょう。その意味でも常に障害当事者と接触して、意見を聞く場を設けておくことは必要だと考えます。 ≪質問≫ (1)に関して ◎知人の手話ユーザは自分で選んだ手話通訳を同道するということで、これは私の場合と異なるようですが、ミニフォーラムの参加者と模擬評議の参加者の違いなのでしょうか。 (2)に関して ◎ミニフォーラムの参加者の発言は、個々には記録されなかったのでしょうか? ◎ミニフォーラムや模擬評議に参加する障害者については、その参加の事実及び事前の準備といった事項以外の、障害者の参加後の感想や意見といったことも記録されるのでしょうか? (3)に関して ◎私が要約筆記者を同道した場合は謝礼は払われないということでしたが、知人の手話ユーザの場合は同道する手話通訳に謝礼が提示されたそうです。これもミニフォーラムと模擬評議で違うということでしょうか? (4)に関して ◎ある新聞に「裁判員制度における障害者施策の検討に際して、最高裁判所では外部の障害当事者等を交えた検討委員会等の設置は考えていない。」という記事が載りましたが、これは事実でしょうか? 事実とすればどういう理由からでしょうか? ◎「図面・写真や証拠の録音テープなどを見聞きすることが事実認定に不可欠な場合は、裁判員法の欠格事由に当たるとして視覚・聴覚障害者を選任しないケースもあり得る」という最高裁の見解が報道されています。これは事実でしょうか。事実とすれば今後の裁判員選抜に当たって基準とされるものでしょうか? そうであればこのままでは一般的すぎて視聴覚障害者をほとんど締め出すことに通じかねません。おそらくは要約と思われますので、詳細な見解をお知らせください。 2008年7月4日 |
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