漫評

魍魎戦記MADARA  コナミ初の本格RPG


 魍魎戦記MADARA

 1989年8月30日 初版  発行所:角川書店

 著者:田島昭宇・大塚英志  

レア度:★★★☆☆  中古書店中心。全7巻揃っている事は稀
あらすじ:物語の主人公マダラは、生まれたばかりのとき魍鬼達に身体を奪われてしまう。
失った身体を取り戻すには魍鬼を一匹ずつ倒していかなくてはならないことを知り、足りない部位をギミックで補い魍鬼退治の旅に出る。


 魍魎戦記MADARAは1987年にゲーム雑誌「マル勝ファミコン」に連載されていた、斬新な漫画でした。

 どこが斬新だったのかというと、連載当初からゲーム化する目的を持っていた事です。あらすじからわかる通り、ストーリーは当時のRPGの主流であるミッション形式になっています。ちなみに左開き。


【ストーリー】

 マダラは強大な力を持って生まれ、その力を恐れた金剛国の帝王である父ミロクは、八匹の魍鬼にマダラの身体を分け与えてしまう。

 そして蓮の花に乗せられ川を下り、ニソの杜にたどり着く。
そこに生きる日修羅人は身体の一部分が欠落して生まれてくるので錬金術で造られたギミックと呼ばれる義手義足のようなものをつけて生活していた。

頭部と一部の神経系のみしか生身の身体を持たないマダラを救ったのは、日修羅で最も優れた錬金術師タタラで、マダラの育ての親となる。

 時は流れ、運命の日がやってきた。

マダラが15歳の誕生日を迎えた日、村に攻め込んできた金剛国の侵攻隊との戦闘によって、マダラのバトルギミックが覚醒する。

バトルギミックとは戦闘用のギミックで、タタラが極秘で装着させていた。
日修羅一族の秘宝聖剣クサナギを額にかざすと霊力が解放され作動する。



バトルギミックの仕掛けの一例。


 見事、金剛国八大将軍の一人・渦耳幽羅(カジューラ)を倒すと、奪われた身体の一部分、耳が戻ってきた。


耳が戻ってくる衝撃的なシーン


 闘いのさなか使魔の邪兎に刺され瀕死の傷を負ったタタラはマダラに、「ミロク帝に仕える八代将軍を倒せば奪われた身体を取り戻す事ができる」と告げて息をひきとってしまう。

 こうしてマダラの魍鬼退治の旅が始まる。
マダラはチャクラ(霊力の源)のある身体の部分を奪われているため霊力が不完全であるが、同行するタタラの孫娘麒麟が持つ勾玉のネックレス(さざなみ)がそれを補う。

 タタラは剣がギミックを解く鍵に、勾玉が力の増幅器にしたのだが、なぜ勾玉をマダラ本人に渡さず麒麟に持たせて同行するよう仕向けたのかは物語の最後明らかになり、この謎が物語の大きなテーマの一つになっている。

旅の途中で仲間になる、個性豊かなキャラクター達も魅力。


以上、主要キャラ。他にもたくさん。


 本当の身体を取り戻し、ミロク帝を倒して理想郷アガルタへ再び人々を導くために、宿命の戦士マダラの数奇な旅は続く。


【作品自体について】

 ほんのさわりだけ紹介させていただいた、この魍魎戦記MADARA、単行本の最後に必ず設定資料がついてまして、キャラ図鑑や地図はもちろん、後半ほとんど意味をなさない各キャラ毎のステータス表や年表まで載っているんですが、このコラム書くため読み直したら改めて、この作品のどう楽しんでいいのか見失うほどの奥深さを感じました。

このテの漫画にありがちなアバウトさにも脱力を覚えたり・・・なにより脱力必至なのが誤植。
ミロク帝がしょっちゅうミクロ帝になってます。
大事な文でずっとコレなときもあり、連発されるとこっちが本物に思えてきたりします。それにしても凄い弱そうな帝王です。ミクロ帝。

 なんかオススメしてない感じですが、あんまりそういったアラにこだわらない人ならおもしろく読める作品だと思います。

肝心のファミコンの方は、音楽が素晴らしい。これに尽きる。
気合い入ってます、さすがコナミ初の本格RPG(当時の宣伝文句)


【田島昭宇×大塚英志】

 原作・作画の名前を見て気付かれた方も多いと思いますが、この作品は「多重人格探偵サイコ」で知られる田島×大塚のタッグで生まれました。

 かといってサイコにハマってるからこれも楽しめるのかというと全く保証はできません
十何年も前とはいえ、田島先生の絵は変わりすぎだと思います。

 大塚氏は色々な漫画の原作や小説をこなす筑波大出身のマルチクリエイターで、MWの株を0.5%持った事から株主原作者と一時期呼ばれていたこともあるという。
また評論家でもあり、某大学の現代文の試験で彼の評論が出題されたのにはビビりました。


【手塚治虫作品「どろろ」との関係】

 魍魎戦記マダラは、1967年〜1968年に少年サンデーで連載されていた手塚治虫先生の作品「どろろ」になぞらえています。

 「どろろ」は、父・醍醐景光の天下をとるという野望のために、身体の48カ所を魔物に奪われて生まれてきた主人公の百鬼丸が、妖怪を一匹倒すごとに失った身体を取り戻すことができることを知り、偶然出会ったドロボウの少年どろろと共に妖怪退治の旅をするという物語です。

 ちなみにこのどろろの正体は「少年サンデー」では普通の子として生まれたとあるんですが、「冒険王」のリテイク版では妖怪が百鬼丸から奪った48カ所の身体をもとに作りあげたことになっています。

二人の出会いは偶然ではなく運命という事になり、実は魍魎戦記マダラのマダラとキリンの関係はこちらに近いです。

 百鬼丸の仮の身体の設定も、漫画では義手義足は動かす練習をして動けるようになっていましたが、小説版では念動力で動かしているなど違いが見られ、マダラのギミックの設定は小説版に近かったりします。

 「どろろ」は色々な形で現在も発売されているので、一度読んでみる事をおすすめします。今読んでもおもしろいです。


【メディアミックスと転生】

 話をマダラに戻します。
実はマダラは原作者の勝手な思いつきで108回も転生しなければならない運命で、最初に紹介したあらすじはマダラ”壱”ということになり、壮大な物語のほんの始まりにしかすぎないのです。

 転生とは漫画『僕の地球を守って』で一躍社会問題に発展した仏教思想でいう輪廻、生まれ変わることであり、「私は○○の生まれ変わりで云々」など、思春期の少年少女に有害な妄想を与えやすい思想です。

 主人公達が色々な違った時代、シチュエーションに活躍の場を広げることができる(例:古代編・現代学園編・戦国編・未来編など)、つまり人気キャラの使いまわしができて便利です。

 とはいえ108回はどう考えても多すぎます。
もし田島氏が一人で描くとしたら、今もやらねばならないでしょう。
この問題を解決するため、大塚氏は前代未聞の提案をしました。

 マダラの同人誌を描いてる同人作家に執筆を頼むというものです。

マダラのイベントへ行き、力のある作家を捕まえ続きを描かせる、ちょっと危険なこの企画は大塚氏の思惑どおり成功しました。
誘った同人作家には「ほっといてくれ」と言って断る人も多かったようですが至極当然だと思います。

 もともと大塚氏は同人誌自体もマダラの転生の一つだと考えていたようで、読者が話を好きなようにいじりやすくするため、ワザと物語にスキマを作ったそうです。

 しかし、ヤ○イ好きなお姉さん方にいじられた魍魎戦記マダラは、なんというかまぁ、そんな感じになってます。

 さらになんと女性向けアンソロジーマダラ公式海賊本(海賊版なのに公式て)も発売されました。
大きいお姉さんにまじって作者の田島昭宇先生も参加しています。
表紙も描いてます。なんだかもうついていけません。

 マダラの転生は、ゲームやOVA、小説、ラジオドラマなどあらゆるメディアに及びます。

一方、何作も続編が出ても「オレはファーストマダラしか認めねえ!」というファンは多いようです。


 そんなマダラも最近になって終わりを迎えました。

大塚氏自らの小説「僕は天使の羽根を踏まない」でひとまず長い旅に終止符を打ったようですが、転生が108回に満たない上に伏線が回収できていない、作画が田島昭宇先生ではない等の納得できない部分も多く、またいつかマダラ達に再会できる日が来るのではないかと期待させます。

ーマダラの旅はきっと、まだ終わらない。

何度も言うようで恐縮ですが、108回は多すぎると思います。

広げすぎた大風呂敷、果たしてマダラ達のゆく先にはなにが・・・
多分、原作者すら知らない。


トップに戻る