エイプリルフールなセンサカ。



「お前なんか大嫌いだ!」



出会い頭にそういわれて驚かない人がいるだろうか。

ましてや自分の大好きな人である。

嫌いだと力いっぱい言われて平静でいられる人間がいるのならばずいぶん心のできた人間だ。

残念ながら俺はその領域に達していない。

だいたい前後関係なしにそんなことを突然言ってくるその態度はどうなんだ・・・

などと衝撃を受けつつも、突っ込めるところだけは突っ込んでおく。

その衝撃を与えた相手に直接言うことはないが。

まあ、そんなことを考えていると相手には二の句も告げられないくらい驚いていると判断されるのか、こちらが何か言うよりも早く回答が帰ってくることがある。



「おい・・・そんな世界が終わったような顔せんでも・・・今日はエイプリールフールだろ?」



俺、そんな破滅的な顔をしていたんだろうか・・・

いや、それはさておき、今のセリフはなんだ。

エイプリールフール。

ということは・・・



「じゃ、坂本さん、俺のこと大好きってことなんですね。」

そういって手を握り締めると、いつものことだが慌てたように

「いやっ、そんなこと一言も言ってないから。おまえのことは大嫌いだ!」

などと繰り返してくる。

さっき、エイプリルフールだと自分で言っていたじゃん、などといえば追い詰めてしまうので、

「俺はあなたのこと大好きですよ。・・・ああ、これはエイプリルフールじゃないですから。」

そういって抱き寄せれば、抗いもせず。

普通は大嫌いならば即座にホールドは解除だ。

なかなか言ってくれない人の苦しまぎれにも似たアピールに、裏ではなくはやく表の意味でストレートに本音を言ってくれたら言いのになあなどと、思いつつ。

まあ何某かの意志をこちらに向けてくれただけでも良しとしなければ。

・・・にしても大嫌いはないと思うが・・・

ま、いっか・・・エイプリルフールだそうだからな。

そんな嘘ならだまされてもいいか。



おしまい。(2005.4.1)