算数。   数学にならないうちにけりをつけたいと思っているのです。



@1000-34

・いつまでも、どこにも勤めもせんと、だらだらしていたと思っていたあの人が、働き始めた。いつもぶらっと訪ねていくと、諸手をあげてではないが、なんとなく歓迎してくれている風で出迎えてくれたりもしたが、そうなると在宅していること自体がまれになり、約束を取り付けようとしても、「忙しいのだ」の一点張りで、取り付く島もない。最初働いていないのをからかって、大の大人としてどうか、国民の三大義務を果たしていない等と、ことあるごとにいっていたのが災いした。

就職先は俺のところに永久就職、ということをはっきり言えればよかったのだが・・・



A34-1000

・疲れた・・・こういってはなんだが、普通に働くのは初めてなのだ。9時から18時までの間と、なんだかよくわからないくらい積み重なる仕事群に残業を余儀なくされて、うちに着くのは夜中になってしまう。世のサラリーマンとはよく働くものよ、高杉も緒方君もよくあんなに元気よく働けるな。ほんとに毎日がうちと会社の往復だ。しかし、これで奴から義務を果たしてないから国民の資格がないだの何だのいわれないですむ。ふっふっふ。

・・・しかし、くたびれたな。



B1000+34

・日常にまぎれて、あの人とも随分ご無沙汰だ。どんな仕事をしているのだろうか。今流行の風邪引いて体調崩していたりしないだろうか。もしかして入ったばかりの新人だからといって、あの新型肺炎の影響も覚めやらぬ国々に出張で人身御供のように飛ばされていないだろうか。だいたいあの人、アメリカにいっていたというが、英語しゃべれるのか?また怪しい外人の男に言い寄られているのではないだろうか。何であの人がぶらぶらしているときに護身術のひとつでも教えておかなかったのか。(俺が襲ったときに返し技されると困るからと思ったのが裏目に出た・・・)

ちゃんと三食食べて眠っているだろうか。



C34+1000

・風邪を引いた。働いているセクションの島全体が風邪の列島になっている。えらいこっちゃ。しかも、風邪引いて熱が出ても休めないのだ(涙)。周りでは熱の高さを競い合ってるし、セキ・熱・鼻水・頭痛・腹痛等、どの種類もとりそろっている。1袋198円、詰め放題だよ、奥さん、という感じだ・・・この調子だとこの風邪が治っても、ブーメランのように新しいのが戻ってきそうだ。さらにバージョンアップして・・・

しかし、食欲がなくて、ポカリスウェットで水分補給しているくらいなのでふらふらだ。帰りたいのは山々だが、この山積みの仕事を片してからにしないと・・・



D1000÷34

・何とはなしに胸騒ぎがして、とりあえず電話をかけてみる。

・・・・・・・・・・・つながらない。留守電にもならない。なんて使えない携帯なんだ。→猛然ダッシュで坂本邸に。

いくらうちのベルを鳴らしても出てくる気配がない。まだ戻ってきていないのだろうか。どうして、勤め先のことについてよくよく聞いておかなかったのか。なんで、もっとちゃんと連絡を取り合わなかったのか。あの人が働きだしたから、新たな門出の邪魔をしてはいけないと思い、ひと段落着いたら、なんてのんびり構えていたのがいけなかったのか。つうか、こんな時間になってもまだ戻ってこないなんて、何かあったんじゃないのか。事故か?いや、でもあの人も大の大人だから、大人の付き合いがあるかも。それはそれで心配だ。心配すぎる。また言い寄られているのでは・・・(どうしても思考がそこにループするらしい。)



    



E34÷1000

・なんだかもうほんとにふらふらのふらのすけで、死にそうになって戻ったときに、うちの前に人がいた。





















顔を見たら、なんだかほっとしてそのまま眼をつむってしまった。





F1000×34

・あの人が戻ってきたのはいいが、いきなり倒れられた日には、本当にまいる。なんか風邪を引いているようだ。熱がある。しかもえらくくたびれて見えるのは、風邪と働きすぎのせいか?でも、とにかく無事に戻ってきてくれて本当によかった。(ぎゅっと抱きしめて、喜びに浸っています。)



ところで、部屋の鍵はどこにあるんだ。





G34×1000

・気がついたらベッドに寝てた。いつの間に私はパジャマに着替えたのだろう。しかも、氷まくらが置かれてるし。薬まで飲んだ形跡がある。無意識でここまで準備できるとは、さすがは私だ。倒れるときも用意周到だ。おかげでだいぶ楽になっている。この調子なら、明日(もう今日か)一日寝ていれば、随分回復しそうだ。土曜日が休みの会社でよかった・・・







あれ、何で千太郎が・・・・









H1000=34

・しばらく寝入っていたらしい、あの人が身じろぎする気配で眼が覚めた。何でか驚いた顔をしている。まあ、そうか。帰ってくるなり倒れたのだから、記憶も飛んでいても仕方がない。とりあえず、何か食べられるかどうかだけ確認してみる。すると、そういえば、2日くらい固形物食べてないと言い出した・・・2〜3日食べなくても死にはしないが、何でもいいから食べてくれ。ついつい、いつも通り、大の大人が自分の健康管理もできないのか、というのがのど元まででかかったが、疲労困憊で病気の人に追い討ちをかけるのも酷かと、ぐっと言葉を飲み込んだ。その気配を察したのか、なんだか意外そうな面持ちでこちらを見やってくる。肩透かしを食らったような顔をしているので、とりあえず、心配だから、無理しないでください、ということだけはいった。するとますます意外そうな顔で、千太郎、お前熱があるんじゃないか?とききながら、俺の額に手をあててきた。その手のひらが随分熱い。どうも熱は下がりきっていないらしい。その手をそっと額からはずし、手は握ったまま、額と額を合わせてみる。するとあまりの急接近に驚いたのか、意味にならない言葉をわめいて、あっという間に真っ赤になった。えらくかわいい・・・ついキスをひとつ。するとまたえらく赤くなった。そっと抱き寄せてみる。そのまま押し倒したいところだが、そんなことしようものなら、きっと出入り禁止で、口も聞いてくれなくなるに違いない。それは望むところではないので、その衝動をとりあえずやり過ごすために、立ち上がり、なにか食べられそうなものを作ってきます、といって部屋を出た。



俺の顔もたぶん坂本さんに負けず劣らず、真っ赤になってるに違いない・・・



I34=1000

・えらく顔が熱い。ものすごく熱が上がってしまった気がする。しかも人があっけにとられているうちにあんなこと・・・・(思考ループ中。)



















責任とって、今日は一日看病してもらうことにしよう。

→といって、その日は一日一緒にいましたとさ。おしまい。