『指先』


しむしむさんよりいただきました「花恋3月号」センサカの続き!




千太郎が先に鍵を出したので、もう手を離していいかと指をゆるめてみた。
しかし手を握り続けることに意識しすぎていた為か指がほぐれない。ぎこちなくも指を一本一本ずつ外そうと思った時、強く握り返されそのまま玄関に引きずり込まれた。千太郎の胸に顔面から突っ込むと同時に、後ろで音を立てながらドアが閉まる。
見上げると千太郎がこちらを見下ろしていた。文句の一つでもと思い口を開こうと息を吸った時、千太郎が言った。

坂本さん、困りました。

は?困った?何がだ?と問うと、ずっと長く手を繋いできたので指が離れないと言う。


だから坂本さん、俺から離れられませんよ。

離れられないって、そんな訳…と思いながら倒れこんでいた態勢を整えようと足を踏み出すが、繋いでいない方の千太郎の手が自分の腰をがっちりホールドしている事に気が付いた。
ちょっと待て、手を繋ぐって家に帰るまでだ帰るまで!ここで終わりとばかりに手を振り払おうとしたが、なお千太郎の指に力がこもる。

坂本さん、外せます?

アホなことを…と急に腹が立って、力づくで手を振り払ってみた。何でこういう時ばかり私に振るんだこいつは。何を私に言わせようとする?睨み上げると一見真顔、だがちょっと落胆したような複雑な顔がそこにあった。それと共にホールドされていた手が緩む。瞬間、焦りと怒りが混ざった気持ちが湧きあがり、その手を引きとめていた。

お前、全然変わってないな!と思う。情けない顔して、大事なところでいつもこいつは人に譲る。誰かに、それは坂本さんを想うがゆえですよと言われたことがあるが、そんなことは考えなくていいのだ。全部私の了承が必要な訳ではないだろう?お前が思う時に、私の事をすくい取っていけばいいのだ。
ああでも、やっぱり何時でも何でもは駄目だ。躾と一緒だ、飴と鞭だ。そこを上手い事どうしたらいいのか。今は、今はどうすればいい?

私達の間に何か足りないものがあるとしたら言葉だろうか、気持ちが作る距離だろうか。でもそれは、お互いほんの一踏み足を前に出すだけでいいのかもしれないと突然思う。探ってる。お互い踏み出すタイミングを計ってる。でも見上げると千太郎はこんなにも近くにいるじゃないか。お前の前にだって、私はいるだろう?手を遠くまで伸ばさなくとも指先だけですぐ届く。
千太郎の指をもう一度自分から握った。こんなに意識して触れたのは初めてだと思う。


今は許すから。お前のお願い時間続行でいいだろう。だが言っておくが今だけだ。

お前の、好きにしていいんだ。

そこは未だに、口には出せないけれども。


おしまい。




しむしむさんより「花恋08年3月号」の手をつないでうちに帰ったセンサカのその後をいただきましたよ〜(>_<)!!!
あのなんとも居ても立ってもいられないソワソワセンサカ。逃げてないよ、坂本さん、手をつながれているよ・・・(T△T)っ
来るところまで来た!
そんな感動をセンサカ人の胸に湧き上がらせた「花恋3月号」。たぶんまだ書店で売っていると思われますので未読の方はぜひ要チェックで!

で、続きですよ。
このモジモジのドキドキよ(*´w`*)ノ
このくらいの時期はもう胸の内互いで一杯ですね!
確かめたいし、確かめられたくないし、確かめて欲しいと相反する思いも出てきたり。
このジリジリとソワソワよ!めちゃ好物!
ありがとう、しむしむさん!          
                          つぶて拝





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