しむしむさんよりいただいた話

  『ラブ・ショコラ』  



何やってるんだあの人は?

「ただいま帰りました」と声をかけたのに気付かない様子でPCに向かったまま何やら百面相をしている。
近づいて後ろから声をかけると、心底びっくりしたように跳ね上がってPC画面を背中で隠した。いやいや、全然隠れてませんから。失礼して覗き込むとそこに出ていたのは・・・ラブローション?え?

違う!違うんだちたろー!そうじゃなくてチョコレートを探していてなのに普通のチョコの下にバレンタイン特集でチョコ味のこんなものが出てきて今の女性はこういうものを買うのかそれはいったいと思って!

はいはい邪魔です。軽く羽交い絞めにして画面をスクロールしてみた。
ほー、女性が運営しているラブコスメのサイトか。と言っても、明るく真面目清潔に美容と健康と快適な毎日をと。成程。

「で、坂本さん、このローションが欲しいんですか?」
ンなわけあるかー!と腕の中でジタバタしながら真っ赤な顔が言う。
恥ずかしがってる顔も可愛いな。ってことは、坂本さんがチョコ味になってバレンタインにハイどーぞって?

それもいいかもしれない。

「坂本さんだって、食べられちゃうんなら美味しく食べられた方がいいですもんね?」
そりゃその方がいいに決まってって、私の話じゃなーい!だから世の中の女性が!
「いや、俺にとっては坂本さんしかいませんから。でもこういうものが無くても」
後ろからの羽交い絞めを解き、坂本さんの身体をこちらに向けてみた。
「俺はいつでも美味しくいただいてますけどね」
軽くキス。これだけだってもう十分ですから。

「・・・それだけでいいのか?」

そういう事を素で言うのかこの人は。
負けた気がしたのは絶対に口には出さないで飲み込んで、
では、遠慮なく。

おしまい。