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● センサ化防災対策---せいりゅう。さんからいただきました!  ●


『不測の事態』という言葉が、昨今は絵空事ではなくなった。
ここ最近、千太郎くんのもっぱらの関心事と言えばそう、”防災”なのだ。

大きな災害が起こったとき、自分は大切な人を守れるのだろうかー。
何としても守り抜いて見せたいー。
でも、自然の脅威に対して人間の出来ることは微力だ。
予期せぬ事態に備えて自分が出来ること。
そう、それも身近で、自分の専門をちょっとだけ発揮出来るような…。

「坂本さん!」

とある春の休日の買い物からの帰り道。
坂本さんと千太郎くんはもはや新婚夫婦のような感じで、仲良く遠回りなんかしながら歩いていたりするのだ。
ふと立ち止まった千太郎くん。

「どうした?何か買い忘れた物でもあったのか?」
「ちょっと気になる案内板があるんです。これ見て下さいよ!」

千太郎くんやや興奮気味。
案内板に書かれた文字は、『免震工法 モデル住宅公開中 この先100m』。

「あ〜、免震って最近話題になってるよな。地震に強いんだったか?」
「そうです。いつか俺達2人の住む家は、絶対免震設計にしたいなあって。」
「そうか…(照)」

千太郎くんには、マイホーム(それも坂本さんとの!!)を自分で設計したいという大きな夢があるのだ。
つまりそれは、この先一生2人一緒に生活するということ。
坂本さんは千太郎くんを受け入れはしたものの、まだやっぱり彼と”一緒になる”という感覚に慣れて来ない。
でも、いざというとき千太郎くんがいれば心強い。
だから、この状態を自ら壊すような真似はしたくないかな、と思っているのだ。
相変わらず素直に口には出さないけど。

「帰って買った物を置いたら、すぐ見学に行きましょう!!こういうモデル住宅って、すごく勉強になるんです。」
「お前のことだと、質問とかしたりして何時間も居座りそうだな。あー私は面倒臭い。それより腹が減った。すぐに夕食にしたい。」
「ああもう…。30分くらいですよ。それに坂本さんも基本的な知識は押さえた方がいいと思うんです。今後のために、とても大切なことだから…。」
「うむ、まあ…お前がそこまで熱心ならば仕方あるまい。ってか、お前の事務所って大型設備の設計が主だったよな!?個人住宅を一から設計する仕事など、請け負えるのか!?」
「(キッパリ)その時までには独立するんです!」
「簡単に言うけど、お前…。」
「大丈夫ですよ。大学では、住居・ビルの工法から橋の強度計算まで幅広く学んで来てますから。」
「いや、そうじゃなくて。親のコネで入った会社をそんな簡単に辞められるものなのか!?」
「坂本さんにだけは言われたくないんですけど。結局ここ大阪から戻ったら、お父さんに頼って職を斡旋して貰うつもりでしょう?」
「ええい、うるさい!今は私のことはどうでも良いのだ!!」

ここでまた口喧嘩が勃発。
なのに2人から険悪な雰囲気は感じられず、状況を楽しんでいる余裕すら感じられる。
これは、歩いている通りを覆い尽くす満開の桜並木のせいなのだろうかー。

そんな2人の気を逸らせたのは、1人の通行人の女性であった。

「なんかあの人、来た道からまた戻って、ずっとぐるぐるしているような…?」
「道に迷ったのだな。よし、こうしてはいられん!」

坂本さんの”人助けアンテナ”がピーンと張るのである。
どんどん近付いて来た坂本さんに、困ったような眼を向ける女性。

「あっあのっ!○○っていうパン屋さんって、この近くにあるかご存知ですか?」
「あ〜、○○ならよく知ってるぞ。えっとそこの角を曲がって坂を上がって…。」

人懐っこく女性に喋りかける坂本さん。
その様子をやや遠くから、呆れの混ざった表情で眺めている千太郎くん。

「この辺の地理には明るくないのか?」
「はい。私、東京から最近こっちに引っ越して来たばかりで。」
「おお、何と奇遇な!私もなんだ。始めのうちって、交わされる関西弁に慣れないよな〜。」
「アハハ、アウェーな感じしますよね。エスカレーターで右側に並んだりとか。」

会話も盛り上がってしまった。

またいつものお人好しが始まった…。
それに坂本さんって、人見知りしないんだよな〜。
俺じゃ駄目だ。
初対面が相手だと、つい畏まって話してしまう…。

さすがアメリカのあちこちを渡り歩いた坂本さん。
時折見せる彼のコミュニケーション術を、千太郎くんは密かに盗んで参考にしたいとすら思っている。

「分かりました。じゃあ、ここからまだ15分くらい歩くんですね。」
「そっちは少し寂れた通りなんだ。良かったら私が一緒に…。」
「えっ(照)」

(なっ!!??)

千太郎くん、思わず買い物袋を落としそうになる。

何言ってるんだ、あの人はー!!
俺とモデルハウスを見に行く先約があるでしょうがっ!!
あっ、それに腹が減ったというのはどうなった??
人助けに夢中で、どこかに吹き飛んでしまったのか!?
それにあの女性、坂本さんにデレデレし過ぎなんだっ!!!

稚拙な焼きもちだということくらい分かっている。
ただ、目の前の2人が普通にお似合いに見えてしまって、沸き立つ感情が爆発しそうになって来る。

千太郎くんの鋭過ぎる視線に気付いた女性。

「あの…、わざわざご一緒していただかなくて結構です。お急ぎだったんでしょう?」
「別にそんなこともないのだが。それならお嬢さん、この地図を持って行くといい。このエリアの美味しい店なんかも紹介されているから。」
「まあ、ありがとうございます。」
「じゃあ気を付けて。」
「はい。では、失礼します。」

そしてー。

「全くあんたって人は!!
「何だ貴様は。あのような困った若い子を放っておけというのか?」
「お人好しも度を過ぎるとお節介ですよ。それに渡したあの地図、坂本さん頻繁に見ているし1枚しか無かったんでしょう!?」

女性にあげた地図は簡単なガイドブックにもなっていて、坂本さんがディナーなどのレストラン選びの参考にしていた物だった。
また、方向音痴な所もある坂本さん。
地図無しでは、いつ迷子になるか分からない。
そしてパン屋に至るまでの寂しい通りには、つい先日引ったくり事件があったばかり。
大の大人の男性が狙われる可能性も低いのだが…。

こんな風に、妙に女性慣れしてる態度に神経を尖らせるのはいつも千太郎くんの方。
能天気な坂本さんを振り返りながら、「もっと小さいことにこだわらない、あの人を守り切れる包容力のある人間にならないとな。」と、1人反省したりしているのだ。

「坂本さん。俺…またもっと落ち着けるように早くなりたいです。」
と、坂本さんにぴったりくっ付いて、むぎゅむぎゅしながら囁く千太郎くん。
「はっ!?今夜はダメだぞ!!」
「(クスッ)そういうことじゃないんです。”揺るぎない安定”を、ずっと求めて行きたいんです。」

こうして難波珍道中の1日がまた終わろうとしている。

と、ギャラリーである我々は今後も”波乱”の方を期待してまっす!


おしまい。


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またまたせいりゅうさんからいただいておりました品をこんなに遅くにupすることになり陳謝を・・・というのも毎度のセリフになってしまいまして申し訳ない(>_<)!
大阪でのセンサカは時間がだいぶ経った後も二人には思い出深い日々になるんだろうなあと既に懐古調だったりしますが、非常にこの初々しさがよいですね!
またセンサカ話浮かびましたら、お待ちしておりますよ〜(*´-`*)ノ
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