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第三部 公共経済シミュレーションへの応用
2000年
東洋大学 経済学部 専任講師(執筆当時) 上村敏之
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1.最適所得税:部分均衡モデル
【第三部】では【第二部】の基本モデルを公共経済に応用することを目的とする。最初は簡単な最適所得税モデルである。特に、最適線形所得税はその扱い易さから、シミュレーション分析の分野において大変活発に研究されてきた。まず、部分均衡分析を前提とした最適線形所得税の経済モデルを提示する。ここで分析するのは、労働所得税であるから、【第二部】における労働供給行動のモデルを基本的には利用することになる。
さて、以下で提示される最適所得税モデルのフレーム・ワークを簡単に述べよう。複数存在する家計は余暇(労働供給)と消費の選択に関する効用関数を持っている。政府は、家計の効用水準から構成される社会的厚生関数を持っていると仮定し、社会的厚生を最大にするような労働所得税の税率と人頭補助金(もしくは税額控除)を決定する。これが最適線形所得税問題である。以下で具体的なモデルを展開する。
家計i(i=1,2)の効用関数UはおなじみのCES型である。ただし、消費c、労働l、ウェイト・パラメータα、消費と余暇(1−l)の代替の弾力性ε=1/(1+μ)とする。
家計が支払う労働所得税額Tは、税率τ、効率あたり賃金率w、所得控除額Dとすれば
のように表現できる。ただし、Gは税額控除額(もしくは人頭補助金)を示す。また、効率あたり賃金率wは家計の労働の効率性を反映させるために、労働の効率性Eと賃金率ωの積で表現されるとしよう。
![]()
以上の結果、家計の予算制約式は以下のようになる。
![]()
家計の効用最大化問題を解けば、一階の条件が

のように整理でき、これを予算制約式に代入することで、
労働供給関数 where ![]()
消費需要関数
がそれぞれ得られる。
さて、最後に政府の行動を記述しよう。政府の予算制約は労働所得税率τによって得た税収と人頭補助金Gによる支出が一致する均衡予算であるとする。
![]()
ただし、この予算制約式を満たすτとGの組合せは無限にある。そこで、政府が以下のような社会的厚生関数SWを持つとしよう。
where γ≠0
ここで、不平等に対する社会的価値判断のパラメータγである。γ=1ならば、社会的厚生関数は家計の厚生を同じウェイトで評価するため、ベンサム的な社会的価値判断を示す。γ=−∞ならば、社会的厚生関数は最も恵まれない家計の厚生を最も重く評価するため、ロールズ的な社会的価値判断となる。すなわち、γの値が与えられるならば、この社会的価値判断に対応した最適な労働所得税制が求められることになる。
このような最適所得税問題をシミュレーションによって解いてみよう。ただし、E1= 1、E2= 3、ω=1、ε1=0.4、ε2=0.6、α1=0.1、α2=0.01とする。また、γの値はγ1=0.3、γ2=0.2、γ3=0.1、γ4=-1、γ5=-5を想定し、それぞれの最適所得税を計算しよう。
さて、プログラムは以下の通りであるが、直観的にアルゴリズムを解説しよう。労働供給行動については繰り返しになるので解説しない。労働所得税の税率と人頭補助金の組合せについては、政府の税収を満たすように決定される。つまり、任意の値の税率を与え、税収が一致するような人頭補助金を探せばよいわけである。この手続きにより、等税収曲線と呼ばれる税率と人頭補助金の組合せが求められる。そして、等税収曲線上の社会的厚生の値を計算し、それぞれのγにおいて最大となる税率と人頭補助金の組合せが、最適所得税として求められるのである。
DOUBLE PRECISION EPS(1 : 2), ALPHA(1 : 2),
MU(1 : 2), K(1 : 2), L(1 : 2)
DOUBLE PRECISION U(1 : 2),E(1 : 2), GAMMA(1
: 5),SW(1:5),W(1:2)
DOUBLE PRECISION OMEGA,TAU,TAUST,G,GST,MAXU,H,TR,TG,C(1:2)
INTEGER I,J
25 FORMAT(F8.3,F12.5,F12.5,F12.5,F12.5,F12.5,F12.5)
E(1) = 1 !各パラメータを与える 労働の効率性
E(2) = 3
OMEGA = 1 !ω
EPS(1) = .4 !ε
EPS(2) = .6
ALPHA(1) = .1 !α
ALPHA(2) = .01
GAMMA(1) = .3 !γ
GAMMA(2) = .2
GAMMA(3) = .1
GAMMA(4) = -1
GAMMA(5) = -5
WRITE(*,*) ' τ G SW(1) SW(2) SW(3) SW(4)
SW(5)'
TAU = 0 !労働所得税率の初期値
TAUST = .1 !労働所得税率のステップ幅
G = 0 !人頭補助金の初期値
GST = .01 !人頭補助金のステップ幅
50 DO I = 1,2
W(I) = E(I) * OMEGA
MU(I) = (1 - EPS(I)) / EPS(I)
K(I) = (ALPHA(I) / (1 - ALPHA(I))) ** EPS(I)
L(I) = .01
H = .01
MAXU = -10000
100 C(I) = (1 - TAU) * W(I) * L(I) + G
U(I) = ((1 - ALPHA(I)) * C(I) ** (-MU(I))
+ ALPHA(I) * (1 - L(I)) ** (-MU(I))) ** (-1
/ MU(I))
IF (U(I).GT.MAXU) THEN
MAXU = U(I)
L(I) = L(I) + H
GOTO 100
END IF
IF (U(I).LE. MAXU) THEN
L(I) = L(I) - H
H = H / 10
IF (H.LT..00000001) GOTO 200
L(I) = L(I) + H
GOTO 100
END IF
200 END DO
TR = 0
TG = 0
DO I = 1, 2 !税収と支出
TR = TAU * W(I) * L(I)
TG = TG + G
END DO
IF ((TR - TG).GT.0) THEN !人頭補助金の収束計算
G = G + GST
END IF
IF ((TR - TG).LE.0) THEN
G = G - GST
GST = GST / 10
IF (GST.LT..00000001) GOTO 300
G = G + GST
END IF
GOTO 50
300 DO J = 1, 5 !社会的厚生関数
SW(J) = 0
DO I = 1, 2
SW(J) = SW(J) + (1 / GAMMA(J)) * U(I)
** GAMMA(J)
END DO
END DO
WRITE(*,25) TAU,G,SW(1),SW(2),SW(3),SW(4),SW(5)
G = 0
GST = .01
TAU = TAU + TAUST
IF (TAU.GT.1) GOTO 400
GOTO 50
400 END
これを計算した結果は以下の通りである。τとGの組合せが等税収曲線を示し、任意のγの値に対応した社会的厚生の値を計算している。もちろん、労働所得税率のステップ幅を小さくすれば、より詳細な計算結果を得ることが出来る。
τ G SW(1) SW(2) SW(3) SW(4) SW(5)
.000 .00000 7.20045 10.47712 20.42263 -2.07835 -2.54687
.100 .13650 7.19731 10.48172 20.43472
-1.99185 -1.83137
.200 .27300 7.19343 10.48521 20.44528
-1.91324 -1.31276
.300 .40950 7.18900 10.48770 20.45442 -1.84215 -.93675
.400 .54198 7.17945 10.48463 20.45755
-1.78331 -.67584
.500 .67500 7.17090 10.48203 20.46066 -1.72993 -.48210
.600 .80397 7.15824 10.47478 20.45857
-1.68735 -.34643
.700 .92771 7.14131 10.46262 20.45097
-1.65596 -.25228
.800 1.04400 7.12016 10.44545 20.43761
-1.63676 -.18958
.900 1.11105 7.03553 10.36480 20.36080
-1.67918 -.17887
例えば、SW(3)はγ3の場合に対応している。γ3のとき、最も高い社会的厚生は20.46066(太字で表示)であり、労働所得税率τ=0.5、人頭補助金Gは0.67500の組合せが最適所得税になることがわかる。γが高ければ、効率性を重視する社会的価値判断になるため、なるべく税率が低い方が望ましくなる。一方、γが低ければ公正性を重視する社会的価値判断になるため、税率を高くして累進性を強めることが望ましくなり、所得再分配効果が高くなる。
2.税制:静学的一般均衡モデル
【第二部】において税制のない静学的一般均衡モデルを扱った。ここでは租税が導入された単純な静学的一般均衡モデル(応用一般均衡モデル)を提示しよう(たとえば、Shoven and Whally(1992),Applying General Equilibrium Analysis, Cambridge, Chaptar3を参照)。ただし、簡単化のため、労働供給は外生的に与えられているとする。家計m(m=1,…,M)、財j(n=1,…,N)、生産要素(資本Kと労働L、それぞれの価格はrとw)の経済で、家計の効用関数および企業の生産関数をCES型に特定化する。
まず、財jにそれぞれ異なる税率で課税する売上税を考慮すると、生産者価格をpj、消費者価格をqj、商品税率をτjとすれば
![]()
が成立する。また、要素税として産業別に異なる給与税τlj、資本所得税τkjを要素価格に上乗せする形で導入すれば、生産者の労働ならびに資本の税込利用者価格はw(1+τlj)、r(1+τkj)となる。
所得税関数は単純な線型所得税関数であると仮定する。限界税率をτy、実質人的控除をFとすれば、家計mの所得税額Tymは
![]()
である。ただし、
と
は家計mの労働と資本の初期保有量である。このデルでは税収は全て家計に移転支出されると仮定され、家計mの受け取る移転所得Tmは総移転支出T(歳出面)の中から支払われ
ただし ![]()
が成立する。また、総税収R(歳入面)の内訳は以下のようになる。
![]()
産業j(j=1,…,N)の単位費用最小化問題は、生産関数Q
jにおいて、Φjを効率パラメータ、δjを分配パラメータ、σjを代替弾力性の示すパラメータとすれば
min 
st. ![]()
であり、以下の単位要素需要関数を得る。


これらを用いれば、利潤ゼロ条件により生産者価格pjを要素価格の関数で表せる 。
一方、家計mの効用最大化問題は、効用関数Umにおいて、αimを家計の商品iに対するシェアパラメータ、μmを代替弾力性を示すパラメータとすれば
max 
st. ![]()
である。ただしximはそれぞれ家計mの財iの需要とする。この最大化問題より家計mの商品iへの需要関数は以下のように表される。

総需要を満たすように各財は産出され
![]()
であることから、これを単位要素需要関数に代入することで要素派生需要が分かるので集計的超過要素需要関数ρl、ρkは
![]()
![]()
により与えられる。また均衡以外では総税収と総移転支出は一致しないという意味での超過税収を示す超過税収関数ρgが加わる。
![]()
Walras(ワルラス)一般均衡モデルの均衡は全ての財と要素の超過需要がゼロか負となるところ及び、超過税収がゼロになるところで成立する財価格、要素価格、税収の組みあわせとして定義され、Walras法則は一般的に次式のように定義される。
財の超過需要総額+要素の超過需要総額+超過税収額=0
しかしながら、利潤ゼロ条件によって財価格は生産要素である労働と資本の価格に集約され、解空間の次元を生産要素の数と税収(つまり3次元)にまで縮小することができる(次元縮小法)。つまり一般均衡は資本と労働の超過需要関数及び超過税収関数が同時にゼロとなる要素価格と税収で成立する。
![]()
すなわち、生産要素が2つであれば、財の数(つまり産業数)がいくら多くても、次元縮小法によって解空間は3次元となる。また、需要関数は要素価格と税収に関してゼロ次同次なので、価格正規化を行うこともできる。
さて、このような3次元の一般均衡価格を計算するためには、プログラミングにおいてやや技術的な手法を採用することになる。ここでは詳しい解説を避け、プログラムも提示しない。ただし、以上のモデルに適当なパラメータを与えた数値例を再現するFortran90プログラムを参照したい方は、【財政学の館】(橋本恭之関西大学教授)の「フォートランの部屋」−「ダウンロードコーナー」よりダウンロードできる(ファイル名:prog1.f90)ので、そちらを参考にすること。
3.税制:動学的世代重複モデル
【第二部】において、簡単な動学的世代重複モデルが提示された。このモデルに税制を導入しよう。ここでの税制とは、すべて家計が負担する租税であり、労働所得税、利子所得税、消費税を考察する。また、政府は税収を政府支出として処分する。基本的なモデルの構造はすでに経験済みであるから、税制が導入されることにより、定式化が異なる部分に注意してモデルを展開してゆこう。したがって、税制を除く記号についてはまったく同じものを利用する。最初に均衡財政モデル、次に財政赤字モデルを提示する(たとえば、Auerbach and Kotlikoff(1987), Dynamic Fiscal Policy, Cambridge, Chaptar2を参照)。
均衡財政
t期に経済に参入する家計tのCobb=Douglas(コブ・ダグラス)型効用関数uは以下の通りである。
![]()
そして、家計tのライフサイクル予算制約は、消費税率τc、利子所得税率τr、労働所得税率τとして、以下のように記述される。

このとき、ライフサイクル貯蓄は次のようになる。

以上より、家計tの効用最大化問題の1階の条件が得られる。

さて、Cobb=Douglas型生産関数から、限界生産力原理が得られる。
or ![]()
![]()
![]()
市場均衡条件は労働市場、資本市場、財市場の順に以下のようになる。
![]()
or ![]()
ただし、総消費Cである。
![]()
政府支出Gは一人あたり政府支出gとして
![]()
また、税収TRは
![]()
であり、政府部門の均衡財政を仮定しよう。
![]()
以上より、モデルの動学方程式が得られる。
![]()
このような動学的世代重複モデルの移行過程と定常状態を求める。ただし、β=0
.7、α=0.3、g=0.04、k0=0 .01、L0= 1、N =0 .01とし、労働所得税率τ=0.1と利子所得税率τr=0.2は各期において固定し、均衡財政を維持するように消費税率τcを調整する。
プログラムは以下の通りである。基本的なアルゴリズムはほとんど変わっていないが、各期において消費税率を操作する部分が新たに追加された。
DOUBLE PRECISION K(0 : 100), U(0 : 100),
Y(0 : 100), SK(0 : 100)
DOUBLE PRECISION CY(0 : 100), CO(0 : 100),
A(0 : 100), SY(0 : 100)
DOUBLE PRECISION R(0 : 100), W(0 : 100),
L(0 : 100), GR(0 : 100),N
DOUBLE PRECISION TAU(0:100),TAUR(0:100),TAUC(0:100),TAUST(0:100)
DOUBLE PRECISION TG(0:100),TR(0:100),C(0:100),G
INTEGER T
50 FORMAT(I3,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4)
BETA = .7
ALPHA = .3
G=0.04
SK(0) = .01
L(0) = 1
N = .01
A(0)=(1+N)*SK(0)
DO T = 0,99
TAU(T)=0.1!労働所得税率
TAUR(T)=0.2!利子所得税率
TAUC(T)=0.0!消費税率の初期値
TAUST(T)=0.01!消費税率のステップ幅
L(T + 1) = L(T) * (1 + N)
W(T) = (1 - ALPHA) * SK(T) ** ALPHA
R(T) = ALPHA * SK(T) ** (ALPHA - 1)
60 CY(T) = BETA * (1-TAU(T))*W(T)/(1+TAUC(T))
A(T + 1) = (1 - BETA) *(1-TAU(T))* W(T)
CO(T)=A(T)*(1+(1-TAUR(T))*R(T))/(1+TAUC(T))
IF (T.EQ.0) CO(T)=0.0!0期において老年世代は存在しないと仮定
C(T)=L(T)*CY(T)+L(T-1)*CO(T)
TG(T)=G*(L(T)+L(T-1))!政府支出
TR(T)=TAUC(T)*C(T)+TAUR(T)*R(T)*A(T+1)*L(T)+TAU(T)*W(T)*L(T)!税収
IF (TG(T).GT.TR(T)) THEN!均衡財政の収束計算
TAUC(T)=TAUC(T)+TAUST(T)
GOTO 60
END IF
IF (TG(T).LE.TR(T)) THEN
TAUC(T)=TAUC(T)-TAUST(T)
TAUST(T)=TAUST(T)/10
IF (TAUST(T).LE.0.000001) GOTO 70
TAUC(T)=TAUC(T)+TAUST(T)
GOTO 60
END IF
70 SK(T + 1) = SK(T) ** ALPHA * (1 - ALPHA)
* (1 - BETA)*(1-TAU(T))/(1+N)
SY(T) = SK(T) ** ALPHA
K(T) = SK(T) * L(T)
Y(T) = K(T) ** ALPHA * L(T) ** (1 - ALPHA)
IF (T.EQ.0) GOTO 80
GR(T-1)=(Y(T)-Y(T-1))/Y(T-1)!経済成長率
IF (T.GT.30) GOTO 100
80 END DO
100 DO T=0,99
U(T) = (CY(T) ** BETA) * (CO(T+1) ** (1
- BETA))
END DO
WRITE(*,*) 'POPULATION GROWTH RATE N= ',
N
WRITE(*,*) ' T R W SK SY CY CO U Y GR TAUC'
DO T = 0,20
WRITE(*,50) T, R(T), W(T), SK(T), SY(T),
CY(T), CO(T), U(T), Y(T), GR(T),TAUC(T)
END DO
END
このプログラムを実行した結果は以下の通りである。
POPULATION GROWTH RATE N= 9.999999776482582E-003
T R W SK SY CY CO
U Y GR TAUC
0 7.5357 .1758 .0100 .2512 .1119 .0000 .1193
.2512 .6068 -.0100
1 2.5505 .2797 .0470 .3996 .1690 .1384 .1721
.4036 .1610 .0428
2 1.8428 .3215 .0748 .4593 .1945 .1794 .1947
.4686 .0531 .0415
3 1.6716 .3353 .0860 .4789 .2031 .1951 .2022
.4935 .0227 .0399
4 1.6234 .3395 .0896 .4850 .2058 .2002 .2046
.5047 .0138 .0393
5 1.6092 .3408 .0908 .4868 .2066 .2018 .2053
.5116 .0111 .0392
6 1.6050 .3412 .0911 .4874 .2068 .2022 .2055
.5173 .0103 .0391
7 1.6037 .3413 .0912 .4875 .2069 .2024 .2056
.5227 .0101 .0391
8 1.6033 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5280 .0100 .0391
9 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5333 .0100 .0391
10 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5386 .0100 .0391
11 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5440 .0100 .0391
12 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5494 .0100 .0391
13 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5549 .0100 .0391
14 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5605 .0100 .0391
15 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5661 .0100 .0391
16 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5717 .0100 .0391
17 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5775 .0100 .0391
18 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5832 .0100 .0391
19 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5891 .0100 .0391
20 1.6032 .3413 .0912 .4876 .2069 .2024 .2056
.5950 .0100 .0391
当然ではあるが、税制を導入しても初期状態から定常状態への移行過程が見られ、最終的な経済成長率が人口成長率に等しくなることがわかる。
財政赤字
次は財政赤字をモデル化してみよう。繰り返しを避けるため、前のモデルから変更する部分のみを提示してゆく。
まず、政府予算制約は財政赤字Dとして、
のように表現できる。財政赤字の存在により、資産市場の均衡条件は
![]()
となる。これを世代人口Lで除算すれば、
![]()
のような一人あたりの均衡条件となる。ただし、dは世代一人あたり財政赤字であり、簡単化のために一定のパラメータであると想定しよう。
![]()
このとき、動学方程式は次のようになる。
![]()
さて、以上のモデルをプログラム化したのが以下である。ただし、10期までは均衡財政を維持し、11期から財政赤字が発生するように設定した。また、政府は一般会計の均衡のために、各期において労働所得税率を調整する。
DOUBLE PRECISION K(0 : 100), U(0 : 100),
Y(0 : 100), SK(0 : 100)
DOUBLE PRECISION CY(0 : 100), CO(0 : 100),
A(0 : 100), SY(0 : 100)
DOUBLE PRECISION R(0 : 100), W(0 : 100),
L(0 : 100), GR(0 : 100),N
DOUBLE PRECISION TAU(0:100),TAUR(0:100),TAUC(0:100),TAUST(0:100)
DOUBLE PRECISION TG(0:100),TR(0:100),C(0:100),G,SD,D(0:100)
INTEGER T
50 FORMAT(I3,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4,F7.4)
BETA = .7
ALPHA = .3
G=0.04
SD=0.01!一人あたり財政赤字
SK(0) = .01
L(0) = 1
N = .01
A(0)=(1+N)*SK(0)
DO T = 0,99
TAU(T)=0.0!労働所得税率
TAUR(T)=0.2!利子所得税率
TAUC(T)=0.05!消費税率の初期値
TAUST(T)=0.001!消費税率のステップ幅
L(T + 1) = L(T) * (1 + N)
W(T) = (1 - ALPHA) * SK(T) ** ALPHA
R(T) = ALPHA * SK(T) ** (ALPHA - 1)
60 CY(T) = BETA * (1-TAU(T))*W(T)/(1+TAUC(T))
A(T + 1) = (1 - BETA) *(1-TAU(T))* W(T)
CO(T)=A(T)*(1+(1-TAUR(T))*R(T))/(1+TAUC(T))
IF (T.EQ.0) CO(T)=0.0!0期において老年世代は存在しないと仮定
C(T)=L(T)*CY(T)+L(T-1)*CO(T)
TG(T)=G*(L(T)+L(T-1))!政府支出
TR(T)=TAUC(T)*C(T)+TAUR(T)*R(T)*A(T+1)*L(T)+TAU(T)*W(T)*L(T)!税収
D(T)=SD*L(T)!財政赤字
D(T+1)=SD*L(T+1)
IF (T.LE.10) THEN!10期目までは均衡財政
D(T)=0.0
D(T+1)=0.0
END IF
IF (D(T+1).GT.(D(T)*(1+R(T))+TR(T)-TG(T)))
THEN
TAU(T)=TAU(T)+TAUST(T)
GOTO 60
END IF
IF (D(T+1).LE.(D(T)*(1+R(T))+TR(T)-TG(T)))
THEN
TAU(T)=TAU(T)-TAUST(T)
TAUST(T)=TAUST(T)/10
IF (TAUST(T).LE.0.000001) GOTO 70
TAU(T)=TAU(T)+TAUST(T)
GOTO 60
END IF
70 SK(T + 1) = SK(T) ** ALPHA * (1 - ALPHA)
* (1 - BETA)*(1-TAU(T))/(1+N)-SD
IF (T.LE.10) THEN
SK(T + 1) = SK(T) ** ALPHA * (1 - ALPHA)
* (1 - BETA)*(1-TAU(T))/(1+N)
END IF
SY(T) = SK(T) ** ALPHA
K(T) = SK(T) * L(T)
Y(T) = K(T) ** ALPHA * L(T) ** (1 - ALPHA)
IF (T.EQ.0) GOTO 80
GR(T-1)=(Y(T)-Y(T-1))/Y(T-1)!経済成長率
IF (T.GT.30) GOTO 100
80 END DO
100 DO T=0,99
U(T) = (CY(T) ** BETA) * (CO(T+1) ** (1
- BETA))
END DO
WRITE(*,*) 'POPULATION GROWTH RATE N= ',
N
WRITE(*,*) ' T R W SK SY CY CO U Y GR TAUC'
DO T = 0,20
WRITE(*,50) T, R(T), W(T), SK(T), SY(T),
CY(T), CO(T), U(T), Y(T), GR(T),TAU(T)
END DO
END
このプログラムを実行した結果は以下の通りである。
POPULATION GROWTH RATE N= 9.999999776482582E-003
T R W SK SY CY CO U
Y GR TAU D
0 7.5357 .1758 .0100 .2512 .1173 .0000 .1252
.2512 .6589 -.0010 .0000
1 2.3675 .2888 .0523 .4126 .1750 .1455 .1771
.4167 .1386 .0913 .0000
2 1.7900 .3256 .0779 .4651 .1978 .1823 .1973
.4744 .0479 .0885 .0000
3 1.6424 .3378 .0881 .4826 .2057 .1962 .2043
.4972 .0219 .0864 .0000
4 1.5980 .3418 .0917 .4883 .2083 .2009 .2066
.5081 .0138 .0857 .0000
5 1.5840 .3431 .0928 .4901 .2092 .2024 .2073
.5151 .0112 .0854 .0000
6 1.5795 .3435 .0932 .4907 .2095 .2029 .2075
.5209 .0104 .0853 .0000
7 1.5781 .3436 .0933 .4909 .2095 .2031 .2076
.5263 .0101 .0853 .0000
8 1.5776 .3437 .0934 .4910 .2096 .2031 .2076
.5316 .0100 .0853 .0000
9 1.5775 .3437 .0934 .4910 .2096 .2032 .2076
.5370 .0100 .0853 .0000
10 1.5774 .3437 .0934 .4910 .2096 .2032 .2076
.5424 .0100 .0853 .0000
11 1.5774 .3437 .0934 .4910 .2216 .2032 .2208
.5478 -.0054 .0330 .0112
12 1.6349 .3385 .0887 .4835 .2195 .2192 .2190
.5448 .0068 .0273 .0113
13 1.6471 .3374 .0878 .4820 .2189 .2180 .2185
.5485 .0091 .0268 .0114
14 1.6505 .3371 .0875 .4816 .2187 .2177 .2184
.5535 .0097 .0267 .0115
15 1.6515 .3370 .0875 .4814 .2187 .2176 .2183
.5589 .0099 .0266 .0116
16 1.6518 .3370 .0874 .4814 .2187 .2176 .2183
.5645 .0100 .0266 .0117
17 1.6519 .3370 .0874 .4814 .2187 .2176 .2183
.5701 .0100 .0266 .0118
18 1.6519 .3370 .0874 .4814 .2187 .2176 .2183
.5758 .0100 .0266 .0120
19 1.6519 .3370 .0874 .4814 .2187 .2176 .2183
.5816 .0100 .0266 .0121
20 1.6519 .3370 .0874 .4814 .2187 .2176 .2183
.5874 .0100 .0266 .0122
11期目から財政赤字が発生し、労働所得税率の調整によってマクロ経済が影響を受けていることに注目したい。また、財政赤字のモデル化については、様々なやり方があるので、上の方法が唯一ではないことを注記しておく。例えば、財政赤字Dの水準を一定にする方法が考えられる。これについては課題としておこう。
4.年金:動学的世代重複モデル
さて、続いて公的年金に目を向けよう。ここでも今までと同様に動学的世代重複モデルによって公的年金システムをプログラム化したい。公的年金には大きく分けて2つの財政方式がある。一つは賦課方式であり、いま一つは積立方式である。賦課方式はある期の若年世代から徴収した保険料をそのままその期の老年世代へ年金給付として移転する方式である。積立方式とは若年世代が積み立てた年金保険料は当該若年世代が老年世代になったときに運用益とともに給付されるという方式である。公的年金システムがこれらのいかなる方式を採用するかで、マクロ経済への影響は大きく異なる。以下では、賦課方式をモデル化してみよう。ただし、繰り返しを避けるため、先のモデルと重複する解説や記号の説明は極力省くことをお許しいただきたい(たとえば、Auerbach
and Kotlikoff(1987), Dynamic Fiscal Policy, Cambridge, Chaptar10を参照)。
t期に経済に参入する家計tの効用関数は次の通りである。
![]()
また、生涯予算制約は年金保険料率θ、年金給付額bとして
![]()
と表現される。すなわちライフサイクル貯蓄は以下のようになる。
![]()
ここで賦課方式の公的年金部門における予算制約式を登場させよう。
以上を考慮した家計の効用最大化問題を解くと、以下のような解が得られる。

![]()
さて、資本市場の均衡条件は、賦課方式の場合は次のような単純な式になることはお分かりであろう。
![]()
家計の1階の条件、限界生産力原理、資本市場の均衡条件を使うことで、やや複雑な資本の動学方程式を得ることが出来る。
![]()
ただし、この式は右辺にも左辺と同じkt+1が入っているため、一方向の変遷方程式の形にはなっていない。数式展開の力量のある人ならばこれをまとめることも容易かもしれない。しかし、収束計算を利用することで、近似的に動学方程式を解析することが可能である。
以上のモデルのプログラムは以下の通りである。ただし、10期目までは人口成長率が1%だが、11期目からは0%になるように設定した。
DOUBLE PRECISION K(0 : 100), U(0 : 100),
Y(0 : 100), SK(0 : 100)
DOUBLE PRECISION CY(0 : 100), CO(0 : 100),
A(0 : 100), SY(0 : 100)
DOUBLE PRECISION R(0 : 100), W(0 : 100),
L(0 : 100), GR(0 : 100)
DOUBLE PRECISION THETA,SKSTEP,SKT,N1,N0,N
INTEGER T
50 FORMAT(I3,F8.5,F8.5,F8.5,F8.5,F8.5,F8.5,F8.5,F8.5,F8.5)
BETA = .7
ALPHA = .3
THETA=0.3
SK(0) = .01
L(0) = 1
N1 =.01!人口成長率1%
N0=0.0!人口成長率0%
A(0)=(1+N1)*SK(0)
DO T = 0,99
IF (T.LE.10) N=N1!10期までは1%
IF (T.GT.10) N=N0!11期からは0%
L(T + 1) = L(T) * (1 + N)
W(T) = (1 - ALPHA) * SK(T) ** ALPHA
R(T) = ALPHA * SK(T) ** (ALPHA - 1)
SKSTEP=0.0001
SKT=0.0001
60 SK(T + 1)=(1-ALPHA)*(1-BETA)*(1-THETA)*SK(T)**ALPHA/(1+N)-(1-ALPHA)*BETA*THETA*SKT**ALPHA/(1+ALPHA*SKT**(ALPHA-1))
IF (SK(T+1).GE.SKT) THEN
SKT=SKT+SKSTEP
GOTO 60
END IF
IF (SK(T+1).LT.SKT) THEN
SKT=SKT-SKSTEP
SKSTEP=SKSTEP/10
IF (SKSTEP.LE.0.000001) GOTO 65
SKT=SKT+SKSTEP
GOTO 60
END IF
65 SY(T) = SK(T) ** ALPHA
K(T) = SK(T) * L(T)
Y(T) = K(T) ** ALPHA * L(T) ** (1 - ALPHA)
END DO
DO T=0,99
CY(T) = BETA * ((1-THETA)*W(T)+THETA*W(T+1)*(1+N)/(1+R(T+1)))
CO(T+1) = (1-BETA) * ((1-THETA)*W(T)*(1+R(T+1))+THETA*W(T+1)*(1+N))
A(T + 1) = (1 - THETA) * W(T)-CY(T)
U(T) = (CY(T) ** BETA) * (CO(T+1) ** (1
- BETA))
IF (T.EQ.0) GOTO 75
GR(T-1) = (Y(T) - Y(T-1)) / Y(T-1)
IF (T.GT.30) GOTO 100
75 END DO
100 WRITE(*,*) 'POPULATION GROWTH RATE N=
', N1,'⇒',N0
WRITE(*,*) ' T R W SK SY CY CO U Y GR'
DO T = 0,20
WRITE(*,50) T, R(T), W(T), SK(T), SY(T),
CY(T), CO(T), U(T), Y(T), GR(T)
END DO
END
このプログラムを実行した結果は以下の通りである。
POPULATION GROWTH RATE N= 9.999999776482582E-003⇒
0.000000000000000E+000
T R W SK SY CY
CO U Y GR
0 7.53566 .17583 .01000 .25119 .09639 .00000
.11987 .25119 .35034
1 3.82682 .23508 .02633 .33583 .12840 .19939
.15199 .33919 .10634
2 3.09395 .25751 .03567 .36787 .14047 .22528
.16379 .37526 .03939
3 2.89368 .26500 .03925 .37857 .14450 .23441
.16770 .39004 .01917
4 2.83326 .26741 .04045 .38201 .14579 .23739
.16896 .39752 .01288
5 2.81453 .26817 .04083 .38310 .14620 .23834
.16935 .40264 .01091
6 2.80861 .26841 .04096 .38344 .14633 .23864
.16948 .40703 .01028
7 2.80677 .26848 .04100 .38355 .14637 .23873
.16952 .41122 .01009
8 2.80615 .26851 .04101 .38358 .14638 .23876
.16953 .41537 .01002
9 2.80604 .26851 .04101 .38359 .14639 .23878
.16953 .41953 .01001
10 2.80600 .26852 .04101 .38359 .14639 .23878
.16953 .42373 .01000
11 2.80598 .26852 .04101 .38359 .14652 .23878
.16941 .42796 .00315
12 2.78548 .26936 .04144 .38480 .14697 .23770
.16984 .42931 .00099
13 2.77908 .26963 .04158 .38518 .14711 .23803
.16998 .42974 .00032
14 2.77702 .26971 .04162 .38530 .14716 .23814
.17003 .42987 .00011
15 2.77632 .26974 .04164 .38535 .14717 .23817
.17004 .42992 .00002
16 2.77617 .26975 .04164 .38535 .14718 .23818
.17005 .42993 .00001
17 2.77611 .26975 .04164 .38536 .14718 .23818
.17005 .42993 .00000
18 2.77609 .26975 .04164 .38536 .14718 .23818
.17005 .42993 .00000
19 2.77608 .26975 .04164 .38536 .14718 .23818
.17005 .42993 .00000
20 2.77607 .26975 .04164 .38536 .14718 .23818
.17005 .42993 .00000
人口成長率の変化により、定常状態の経済成長率が1%から0%へ移行しているのがわかる。