CONTENTS
●甲殻類・軟体類に必要な栄養
●人工飼育環境と自然環境の違い
●珪藻の種類と性質について
●エビに対する珪藻の処方について
●その他の活性化餌料について
1.甲殻類・軟体類に必要な栄養
甲殻類や軟体類には多くの栄養が必要とされていますが、取り分け重要なのが不飽和脂肪酸と呼ばれる
油類です。不飽和とは飽和していないと言う意味ですが、これは分子の一部にまだ結合できる手が残って
いると言う意味です。
不飽和脂肪酸は植物油と呼ばれる一群で、リノール酸やDHA、EPAもこれに含まれます。低温下でも
固まらずにサラサラしているのが特徴です。一方、飽和脂肪酸は動物油のことで、ラードが有名です。低温下
では固まる特徴があります。
不飽和脂肪酸を蓄える生物は多くありますが、甲殻類や軟体類が摂取できるエサは植物プランクトンの仲間です。
植物は一般に光合成によってデンプンを細胞内に蓄えます。ところが珪藻類や海産緑藻の幾つかは不飽和脂肪酸
を蓄えます。従って、珪藻類は甲殻類や軟体類に必須とされる不飽和脂肪酸の供給源となっている訳です。
2.人工飼育環境と自然環境の違い
自然界には珪藻は至る所に生息しています。川の礫の表面が茶色くヌルヌルしているのは珪藻が付着しているからです。
春に内湾で発生する赤潮の多くも珪藻によるものです。要するに自然界では珪藻はどこにでもいる生物です。
一方、人工飼育環境ではどうでしょう。付着性の珪藻類が一年の僅かの間に発生することはありますが、飼育生物に
充分な量には増えません。自然界では珍しくない珪藻が、人工飼育環境ではほとんどいない訳です。結果としてエビは
水槽内の至る所をつついて珪藻を探す毎日を送ることになるのです。人工飼育環境は別の言い方をすれば、珪藻類が欠
乏した環境なのです。
珪藻類が欠乏していると言うことは、不飽和脂肪酸が欠乏していると言うことです。エビにとって当たり前のエサが無い訳です。
ここに珪藻を投与したらどうなるでしょう。エビは狂ったように暴れだします。このような行動はエビに限ったことではありません。
多くの生き物で観察されます。
4.エビに対する珪藻の処方について
浮遊性の小型珪藻(Cyclotella meneghiniana , Chaetoceros sp.)は通常与える珪藻、大型珪藻(Synedra ulna)は集中的に与える珪藻です。
浮遊性小型珪藻は水槽内を漂っていますから、直接エビの口に入る割合は高くありません。水槽中の微細なチリとフロックを形成し、残渣となってエビの口に入ります。
水槽全体が珪藻を含む環境に変わります。これに対して大型珪藻(Synedra ulna)は短時間に沈降します。02.mmの大きさですからRed Beeのような小型のエビからすれば
充分に認識できる大きさです。直接口に入ることができます。従って、
○親エビの抱卵誘発、抱卵期間中に与える:大型珪藻(Synedra ulna)
○飼育全体を通じて少量与える:浮遊性の小型珪藻(Cyclotella meneghiniana , Chaetoceros sp.)
と言うことができます。最も重要なのは経済性です。過度の投与は経済的に長続きしませんのでお奨めできません。尚、Cyclotella meneghinianaとChaetoceros sp.
は淡水産、海産の違いはありますが、どちらも淡水で使用できます。扱いはChaetoceros sp.の方がはるかに容易です。
5.その他の活性化餌料について
稚エビの生残率向上にワムシが効果的との意見を良く耳にします。確かに海産エビの養殖ではワムシが使われることがありますが、Red Beeの場合
は非常にハイコストになります。良ければいいと言うことにはならないでしょう。
わむし屋では海産緑藻のNannochloropsisをRed Beeの活性化餌料にすることを発案しています。Nannochloropsisは海産稚仔魚の飼育には非常に優れた
餌料です。問題は塩分です。Nannochloropsisは海水そのもので培養しますから、これを直接淡水エビに与えることはできません。濃縮して汽水洗浄する
こともできますが、コストがべらぼうにかかります。製造方法の確立にしばらく時間が必要です。
もう一つわむし屋が発案中の活性化餌料にドナリエラバウダーがあります。このパウダーはビタミンAとカロチンのかたまりです。
カロチンはニンジンの500倍含まれています。メダカなどの小型魚類の活性化効果や色揚げ効果が知られています。