CONTENTS
●飼料と餌料
●餌料系列
●初期餌料の種類
●期待される淡水生物餌料
1.飼料と餌料
エサのことを『飼料』とか『餌料』と呼ぶことがありますが、これらは同じ意味ではありません。
『飼料』とは、生き物を飼育するために作られた合成資材のことを言います。栄養価や粒径を任意にすることができるため
安定したエサである反面、孵化したばかりの稚魚のエサにはなりません。ベビーフードと言った名前で販売されているものも
ありますが、これを与えても大半の稚魚は死んでしまいます。『飼料』は成魚を飼育するためのエサなのです。
これに対して『餌料』はエサになる生物そのものを言います。乾燥製品を指すこともありますが、一般的には生きている生餌
が『餌料』です。自然界ではすべての稚魚がこの生餌を食べて大きくなります。『餌料』は稚魚を飼育するためのエサなのです。
2.餌料系列
ある魚類(生物)が生れてから育つ際に摂食する餌料を順に並べたものを餌料系列と言います。自然界では【繊毛虫・ワムシ】⇒
【ミジンコ】⇒【水生昆虫】と言ったように稚魚が成長段階によって餌料生物を選んで摂食します。
特に重要なのは初期餌料です。大きさや栄養価の面で餌料が限定され、適当な餌料生物が充分いるか否かがその後の生残率や成長
速度を大きく左右します。この初期餌料に最も適した餌料生物がワムシなのです。
ところが飼育環境には自然の餌料系列が存在しません。そのため、孵化した稚魚が大きくなるか否かはすべてが初期餌料にかかっ
てくるわけです。孵化した稚魚に特別のエサを与えない限り、稚魚が消えていく理由はここにあるのです。
3.初期餌料の種類
必須の初期餌料は魚種によって異なります。例えばキンギョやフナはかなり簡単で、孵化後2日からブラインシュリンプを与えれば
育ちます。自然界ではブラインシュリンプはいませんので、これに代わる餌料はミジンコです。しかしながら自然界ではワムシとミジ
ンコがいたら、率先してワムシを食べているはずです。稚魚にとってはミジンコよりもワムシの方が御馳走なのです。飼育環境ではワ
ムシを与えない場合、ブラインシュリンプしかエサが無いだけのことです。
アユを始めとする多くの魚種がここ数十年の間に養殖可能となりました。この理由のほぼすべてがシオミズツボワムシの培養による
ものです。養殖魚の多くは初期餌料にブラインシュリンプを与えると栄養不足のために消えていきます。ブラインシュリンプは第2系
列の餌料で、初期餌料にはあまり向いていません。
現在、人工生産が最も期待されているものにウナギがあります。養殖ウナギはすべてが天然仔魚からの養殖で、孵化した稚魚を育て
ることはできません(特殊餌料で一部成功)。ウナギの初期餌料が何なのか未だ不明なのです。ウナギのレベルではワムシとても万能
ではないのです。
4.期待される淡水生物餌料
現在流通しているワムシはすべてがシオミズツボワムシと言う汽水産のワムシです。シオミズツボワムシの培養には海水が必要ですが、
海水を用意することはかなり面倒です。また、シオミズツボワムシは淡水中では長く生存できませんので、淡水魚の餌料には必ずしも適
当ではありません。このようなことを考えると、淡水生物幼体の餌料に『淡水ワムシ』を与え、淡水ワムシの餌料に『淡水藻類』を与え
る技術が整えば、これまで難しいとされてきた淡水生物の飼育(増殖)が比較的簡単になるかも知れません。
今回供給可能なワムシは、ツボワムシ(Brachionus calyciflorus)と言う淡水ワムシです。供給量や価格の面では課題が残り
ますが、淡水養殖(飼育)の世界では画期的技術となると自負しています。このツボワムシ以外にも、淡水性のフクロワムシやコガタツボワムシ
についても培養可能の目処が立っています。ご期待ください。
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