CONTENTS
●タンク養殖の問題点
●理想とする養殖方式
●新方式の導入
●試験成績等
●今後の課題と予定
●試験種苗の販売等
●雑 記
★投稿(平成25年1月吉日)
1.タンク養殖の問題点
現状のタンク養殖システムでは、寄生虫のギロダクチルスの大量寄生とこれに伴うエアロモナス他の蔓延
によって、養殖ドジョウの大量斃死を招くことがしばしばである。ギロダクチルスの大量発生を抑える薬剤
は無いわけではないが、これらは基本的にはドジョウへの投与が認められていない。ドジョウのタンク養殖
はギロダクチルスとの戦いであると言っても過言ではない。
このギロダクチルスの大量寄生を避けるため、現状のタンク養殖システムでは徹底した施設内の清掃と大
量の地下水のかけ流しが行なわれているようである。ギロダクチルスの施設内への進入は防ぐことができな
いため、少しの油断がドジョウの大量斃死を招く結果となる。現状のタンク養殖システムには大量斃死の危
険性とハイコストの施設費、光熱費が付いて回ることとなる。
2.理想とする養殖方式
ドジョウの養殖は、できれば
@ タンク養殖が望ましい。−−−−−水揚げ時に人手がかからない
A 飼育水は循環濾過が効率的である。−−−−−効率よく暖房ができる
B 用水は水道水でまかなえる程度が現実的である。−−−−−個人でもすぐに始められる
C 当然、薬剤は一切使用したくない。−−−−−食用ドジョウとしての信頼性
と考える。誰でも最初はこのようなことを考えるが、実際にやってみるとドジョウは95%以上が斃死する。
まるでキンギョやフナを飼うようにドジョウの養殖ができれば、ドジョウ養殖はもっと普及するはずなのだが。
3.新方式の導入
上に述べたような理想の養殖方式は確かにあった。生物工学研(わむし屋)では平成23年2月から平成24年7月までの
1年半の間に養殖試験を実施し、2に述べた『理想とする養殖方式』の開発にほぼ成功した。
導入した方式は、ドジョウ養殖の歴史を塗り替える可能性を秘めているため、当面の間は発表できない。
4.試験成績等
新方式導入後、ドジョウの斃死は、1,000尾当たり1ヶ月に3尾程度である。これらの斃死原因は明確ではないが、
少なくともギロダクチルスの寄生とこれに伴うエアロモナスなどの感染症が原因ではない。ギロダクチルスは全く
発生できない(発見できない)状態が続いている。
現時点では、1tタンク(水量400L)に自家製のドジョウ稚魚約3,000尾を飼育している。この半年間で大量斃死は
一度も起こっていない。
5.今後の課題と予定
生物工学研(わむし屋)は、本格的な養殖施設を保有しない。また、種苗生産に必要な充分な親魚も確保できないでいる。
このため小規模養殖の実用化研究は進むものの、本格養殖に関する実証ができないでいる。
今後は、1万尾を対象としたやや現実的な小規模養殖について養殖試験を実施し、コスト面の課題について検討を進
めていく。また、この規模での養殖は必ずしも試験養殖ではないため、市場等への出荷も念頭に進めていく予定だ。ノ
ウハウや技術はあくまで公表する予定はない。
6.試験種苗の販売等
ここに挙げた養殖技術の話しとは別に、養殖試験等に必要なドジョウ種苗の販売をしてく予定。種苗は以下の段階を
予定。
@ 1ヶ月稚魚−−−−−配合飼料で飼育可能な稚魚(腸管呼吸開始後)
A 5cm稚魚−−−−−春先に養殖を開始し、夏の最盛期に出荷するサイズ
B 10cm成魚−−−−−蒲焼用に養殖するためのサイズ
尚、ドジョウの元種はすべて静岡県焼津市産の純粋な国産ドジョウである。ネット上では韓国産のドジョウが出
回っている。このドジョウは種類は日本原産のドジョウと同じであるが、かなり動きが激しい。食べると骨が固い等の
違いがある。遺伝子検査をすると判明する。
7.雑 記
思えば、私がドジョウのタンク養殖を考え始めたのは平成9年のことであった。当時日本セイバアの会長だった田淵
さんからの依頼によるものだ。当時のドジョウ養殖は休耕水田を利用した粗放養殖のみで、タンク養殖は不可能とされ
ていた。田淵さんは、ドジョウ養殖の大家の成田さんの知り合いで、水田養殖には否定的だった。個人でもできるウナ
ギ方式の養殖キットを作れと言うのだ。
当時の私はコンサルタント会社の技術社員であったこともあって、頭の中のみで考えたタンク養殖の計画書を作成した。
今思えば良くできた計画だったが、当時はギロダクチルスの脅威について理解をしていなかった。成田さんから頂いた
ドジョウ稚魚800尾が1週間で全滅したこともあったが、当時は克服できる問題だと思っていた。
私も齢をとり、『いつかどうにかなる』とばかりは言っておれないようになった。本気でドジョウ養殖に取り組み、
私をここに導いた先輩方に恩返しをしたいと考えている。
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