about dormant egg of rotifera
●ワムシの耐久卵は、ワムシが有性生殖によって生産する休眠卵です。過酷な環境変化に耐え、長期間に渡って生き続けます。
●わむし屋では独自開発の技術によって、ツボワムシ耐久卵の製造・保存・孵化の制御に成功しました。
●耐久卵利用技術の確立によって、これまで難しいとされてきたワムシ培養の世界が身近なものになりました。
contents
●生産のメカニズム
●従来法との比較
●最も簡単な方法の紹介
1.生産のメカニズム
ワムシ成体は基本的には♀(メス)で、♂(オス)と交わることなく無性の卵を産卵して増殖します。無性の卵はすぐに孵化して♀として
同じように増え続けますが、ある程度増えてくると♂になる卵を生む♀が現れ、これから孵化するワムシは♂として生れてきます。♂は小型で
単純な形態をしており、♀を求めて水中を遊泳します。♂が♀と交尾すると、この♀は耐久卵を産卵するようになります。耐久卵は1週間程度
で孵化するものもありますが、多くは孵化せずに休眠し、数ヵ月後か1年後に孵化します。
図1 ツボワムシ属の生活史 日野明徳(1983)より
2.従来法との比較
これまでのワムシの利用では、培養ワムシを購入し、これを維持培養しながら餌料として利用する方法と高密度培養されたワムシを大量購入し、
これを一方的に餌料として消費する二つの方法があります。前者は小規模向けですが、エサプランクトンの入手とワムシ入手のタイミングの煩
わしさや、必要時以外のワムシ管理の手間がかかり、プロのブリーダー以外には普及しにくい側面がありました。後者は便利であるものの、供給量
が大きいために、養魚場や水産試験場以外には利用できないのが現実です。
いずれも欲しい時に欲しい量を確保し難く、無駄な部分のコスト(時間とカネ)がかかりすぎの方法でした。一方、耐久卵を利用する方法では、
エサプランクトンの入手(または培養)は必要なものの、冷蔵庫に保存された耐久卵を必要量取り出して孵化させるだけのことですから、従来の
方法と比べると極端に簡単です。また、ドライイースト(乾燥パン酵母)を用いれば短期的増殖が可能なため、ブラインシュリンプと同じような
方法で生餌を作ることも可能です。
要するに『全く新しいワムシ培養の世界』が実現したわけです。
表1 従来法と耐久卵法の比較と利点
3.最も簡単な方法の紹介
耐久卵を用いたワムシ餌料の作り方には色々なバリエーションがありますが、ブラインシュリンプと同様の簡単な方法がありますので紹介します。
@ 容器(1〜10L程度)を用意する。
A 水道水を入れ、塩素抜きする。
B 耐久卵とドライイーストを入れる。
C エアレーシュンする。
D 24時間待つ。
25℃では24時間で孵化し、ツボワムシ幼体が泳ぎだします。入れておいたドライイーストも休眠から覚めて浮遊し、これを食べてワムシが増殖します。
セット3日目にはワムシをエサとして利用可能になります。この方法では、飼育魚が産卵した日にセットすれば、摂餌が始まる頃にワムシも使えるように
なります。
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