〜カッコーの巣の上を〜
神戸編
狂った人形・ラチェッド
仙台、新潟、静岡と日に日にお芝居がかわっているという評判は聞いていたけど
これほど変わっていようとは!!
東京とはまるで違うお芝居を見ているようでした(あくまで私見です)

東京では肝心のラチェッドさんの声が小さくて残念に思っていたのが
神戸ではどの役者さんの声も過不足なく聞こえました。
マクマーフィー(今井さん)たくましい身体、男の匂いをプンプンさせて
これが獣の世界なら雌たちはみんな彼の虜になるだろう(笑)けど
本能に真っ正直な可愛い男でもあったと思いました。
最後には『神』のようにその死を悼まれるマックさん。
でもそれはあの精神病院の中だからそう成りえたのでしょうね。
一般の世間で受け入れられるはずないもの。
娯楽室に集う心を病んだ優しき患者たちのおかげで
マックは「伝説の男」として永遠に生きることが出来たんじゃないかなあ。
ハーディング(吉田さん)
きっと優しいとてもいい旦那さんだったんじゃない?
SEXだけがすべてじゃないと思うんだけど…、可哀想。
そんな奥さん、こっちから離婚したらいいのに。
にしても吉田さんのハーディングさんは芸が細かいですよね。
壁にお尻をこすりつけてる姿なんてなんで?って思うほどおかしすぎるもの。
ビリー(植本さん)
この役はちょっとドキリです。息子をもつ母としては^^;
息子ってねえ、やっぱ可愛いっていうか
でもビリーの場合もおかしいのはお母さんの方よね。
30過ぎた息子に「可愛いビリーちゃん」なんて誰が言うかあ!!
今だったら即、母親チェックでカウンセリング。
「親が変われば子どもは変わる!」ってな方向へ治療が進んでいくんでしょうけど
この頃は違ってたのね。
チーフ(関本さん)
彼の独白を聞きたかった!
そうすればこの作品はもっと大きなテーマをかかげられたと思う。
権力対巨大なる権力に抹殺される人々というテーマ!
それをカットして人間対人間ということになってたけど、
『組織>パパ』『ママ>パパ』の後者だけが強調された今回の上演は
少し無理があったかなあ?って思います。 
男が成長していく中で「父性」は不可欠。
それがチーフの幼い目の前で粉みじんにされていく。
「パパに似ている」とマックにしがみついて泣くチーフ。
男性が自立していく時、やはり大きく影響してくるのは父親の生きる姿なんじゃないかな。
お父さん、がんばれえ〜!!ですね*^^*
マックの亡きがらを肩にかつぎ故郷の滝へもどるチーフの
生きていこうとする姿で終わるのは
感動的でした。
スカンロン・爆弾魔(深貝さん)
鋭い感性ですよね、ユーモア感覚も抜群。
マックの「密告」にヒイヒイ笑ってるもん。
この人なんで精神病院に入ってるのかなあ?
お尻を噛むから?
爆弾に固執してるから?
戯曲読んだら強姦したせいだって書いてあった。
そらイカン厳罰に処すべし!!被害者の身になってみなさい!!
チェズウィック(間宮さん)
この人は何故精神病院に入院してるんだろう?
ラックリーやマーティニの面倒もよく見ているよ。
はしごの下から女の子のスカートの中をのぞくから?
スカンロンもチェズウィックもハーディングもビリーも
社会に適応した形で女性と関係を持てなかったのよね。
それは男性にとって大問題だとパンフレットで演出家さんはおっしゃっている。
でもだからどうしろって言うの?
そういうテーマをかかげつつ、ラストシーンが
父性に巡り合い生きていこうとするチーフの姿であるのはなんか変じゃないかなあ?

私はこの「カッコーの巣の上を」という作品は「男と女」の話ではなく
「男」がたくましく生きたいというファンタジーだと思う。

では元にもどりまして。
マーティニ・幻覚(鶴さん)
彼の入院は納得できます。
言動が幼いし幻覚を見て人からは決して理解できないだろう行動をするから。
「おーれたち、おーれたち、おーれたち、おーれたち」と
はしゃぐマーティニちゃんは可愛い!

ラックリー(水口さん)
手をずっと横に上げて十字架になってるのはさぞやしんどかっただろうと。
頭の傷跡が痛々しい。
あの歩きかたが印象的!
スパイヴィー医師(大塚さん)
彼はなんでラチェッドに頭が上がらないんだろう?
彼女にいちいち反論するのがじゃまくさいのかなあ?
彼女がここでしか生き場所がないのを知ってるからなのかなあ?
とにかくカッコいいお医者さんだった。
ラチェッドをお嫁さんにもらってあげれば良かったのに(笑)

キャンディ(香月さん)
グリークスではヤンさんヘレネの娘、ヘルミオネちゃんだった。
今回も一応あばずれ(?)
ケバい化粧だけど、サンドラさんより上品だった。
ビリーをリードして天国の扉を開ける娯楽室の天使でしたねえ。

ミス・フリン(山賀さん)
大人しいかわいコちゃん。
ラチェッドの忠実な部下だけど、疑問も持ってるんじゃないかな?
サンドラ(津川さん)
ダイナマイト・スウィートボディ!
結婚式のあとの感涙の場面が彼女の見せ場だと思うけど
良かったわ!

ウォーレン(河内さん)
お若いのにしっかりしてらっしゃる〜。
ズッコイ性格、要領良く立ち回る、陰口たたくくせにラチェッドには
絶対服従してるよね。

ウィリアムズ(中山さん)
マッチョマン!
ウォーレンみたくこずるくなさそうだった。

タークル(栗田さん)
声がね、ヤクザ。コメディーがお好きそう。

そいでもって我らがヤンさん!ラチェッド婦長〜〜!!!
難しい役ですよねえ。
日を追うごとに迫力を増していく婦長さん!
神戸での婦長さんには大満足。
見かけが華奢なだけに、より強い演技が必要だろうけど
芸達者な方々ばかりの中でひときわ輝いてらした。
私はラチェッドというのは半分以上狂気の人だと思うので
強い台詞と優しい台詞の差がそれを表現していたような気がして嬉しかった。

動きにキレがあるので、台詞だけでなく動きでもその鋭さを表現してらして良かった!
そうそう、それと目つきね、眼光!!
ワールドシリーズの投票の時なんて、ガンとばしてらっしゃいましたよ。
コワァァァ〜〜〜〜〜。

ヤンさんファンは安寿婦長のもとで思いきり狂えて幸せなんだけど、
患者さんたちも結構楽しそうでしたよね。
ラチェッド婦長に従わなければいけない事が彼らの生活のアクセントになってるの。
婦長のもとにいれば、苦手な社会に適応した男女の交感から逃げていられるし
そうした適応出来てる人たちから受ける劣等感からも隔離されるんだから。
巣の中にいる限り、患者たちはそれなりに幸せだったのよ。
なんちゃってね。

ま、ひとそれぞれ好き嫌いのある作品であったでしょうが、
私はキライじゃありませんでした。

なんてったって、
ヤンさんの看護婦さん姿が見れたんだもーーん*^^*
文句あるか!?!
ここはミーハーサイトなのだ!!

終わり。

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