Memories off 2nd Short Story

君とともに (2003 Edition)

作 山倉 健悟

 

 

第一章 ある夏の日

 

 

 あれからしばらくの時が経った。

 ほたるは結局ウィーンには戻らず、日本の音大を受験して合格し、今はその大学に通っている。

 僕もなんとか三流大学に合格し、そんなに今までと変わらないような生活をしている。

 そんなこんなで、あっという間にあの夏から4年という時が過ぎようとしている。

 僕はこの不況のご時世の中、なんとか就職も決まり。

 ほたるもピアノが弾けるからと言って音楽の先生を目指している。

 そして僕もこの夏にあるひとつの決心をしている・・・

 

 「健ちゃ〜ん、おはよ〜!」

 「おはよ〜、ほたる。ご飯まだ〜?」

 僕たちは今ではこの朝凪荘で一緒に暮らしている。

 あの再会劇の後ほたるは父親に勘当されてしまい、僕のいる朝凪荘に転がり込んできたと言う訳だ。

 とは言っても少しばかりの生活費を毎月静流さんが届けてくれるし、学費は一応ちゃんと親が払ってくれているそうだ。

 「ところで健ちゃん、なんでぼう〜としてるの?もうすぐご飯出来るよ〜」

 「うん、わかった。すぐ支度するよ。」

 「それなら宜しい。今日のメニューはほたる特製モーニングスペシャルだよ〜♪」

 ほたるは鼻歌を歌いながら慣れた手つきでフライパンをゆすっていた。

 

 「それでは、いただきます〜。」

 僕はほたる特製モーニングスペシャル(とは言ってもただのベーコンとスクランブルエッグだけだけど・・・)を二人で仲良く食べていると、突然ドアがノックされた。

 「うん?誰だ?こんな朝早くから?・・・・はいは〜い、開けますよ〜!」

 僕は渋々ドアを開けた。

 

 ・・・すると、そこには信君がいつものように笑って立っていた。

 「うむ、相変わらず熱いねぇ〜、伊波夫婦は・・・、本当に朝からご馳走様。」

 「もう〜!信君、んでこんな朝っぱらからから何か用ですか?」

 「もう〜、信君ったら・・・、朝から辞めてくださいよ〜。せっかく健ちゃんと仲良く朝ご飯食べてるのに〜」

 こんな感じで僕たちのいつもの朝が始まった。

 ところでどうでも良い事だが信君は今ではルサックの店長になった。

 そして僕もあの夏以来、今だにずるずるとルサックでバイトを続けている。

 その理由はほたるがいるのでさらに生活費がいるのと、もう一つはある計画のために・・・・・、いまだにこのバイトを続けている。

 そういえば、このバイト生活にも少し変わった事があった。

 それは、ほたるがルサックにバイトで入ったという事だ。

 こうして僕は、いつも信君や他の店員にから毎度のようにいやみを言われながらバイトをしている。

 「・・・ところで、こんな朝っぱらから何の用ですか?」

 「・・・そのことなんだが、イナケンよ、君にはたるたるがいる。・・・しか〜し、俺には誰も愛してくれている女性がいない。だから俺はその人を町に出て探してくる。それじゃ〜、店番よろしく〜!!」

 信君は、すたすたとドアを開けて、急いで走り去るってしまった。

 「・・・ちょ、ちょっと、待ってくださいよ〜」

 と、僕が次に言葉を発した瞬間には信君の姿はいずこへと消え去ってしまっていた。

 「・・・・・まあ、仕方ないか、ほたる」

 「・・・いつものことだしね。」

 「・・・・・さ〜てほたる、今日もバイト頑張るぞ〜!」

 「そうだね、健ちゃん!」

 結局僕達は、渋々とバイトを引き受ける事になった。

 

 

 第二章 ルサックにて

 

 

 と言うわけで僕とほたるは今日バイトを一緒にしている。

 そして僕は稲穂店長(あまり慣れないけど)に店長代理(一日限り)として客に謝り続けていた。

 「本当に大変だな〜、もう〜、本当にどこに行ったんだ信君は、本当に迷惑だね・・・、ほたる?」

 「まあまあ、本当にそうだけど健ちゃん頑張って〜!あと5時間だよ〜!」

 「・・・そうだな。まあ頑張るか〜。ところでもう昼の客も空いたし、どこか公園でも行ってお昼にしようか?」

 「いいな〜それ、それじゃ〜、出発〜!!」

 と僕たちは近くのコンビニでお昼を買ったあと、ルサックの近くの公園のベンチに腰掛けた。

 ベンチに座り、すこし空を見上げるとそこには青空が広がっていて、蒸し暑いけどなにか気持ちが良くなる感じがした。

 「ホントに今日はいい天気だな〜、さてお昼食べようか」

 「うん、そうだね♪それでは、いただきま〜す!」

 「いただきま〜す!」

 と僕たちはいつものように仲良く話しながらお昼を食べた、僕はその時ある決意をしていた。

 ある重大な決意を・・・・・

 

 

 第三章 指輪

 

 

 そして、僕とほたるは仲良く昼食を食べた後、再びルサックに戻り数時間バイトをしたあと、やっとのことでバイトの上がりの時間が来た。

 「ほたる〜、ちょっと今日寄り道したいところがあるから先に帰っていてくれない?」

 「うん、でも何するの〜?まさか、誰か他の人と会うの〜?」

 「違うよ〜、僕がほたるのほかに他の女の人と会うもんか、だって僕が好きなのは、・・・・・ほたるだけだから。」

 「も〜、健ちゃんったら〜、でもあんまり遅くならないでね!」

 「わかった、わかった〜♪それじゃ、また後でね〜♪」

 僕はほたると桜峰駅前で別れて、しばらくシカ電に揺られ藤川へとやってきた。

 そして僕は、藤川のショッピングモールの一角にある宝石店へとやってきた。

 そこで買うものとは、僕はこの世界で一番愛しい人にあげるもの・・・そう、婚約指輪だ。

 「いらっしゃいませ〜、今日は何をお探しですか?」

 「え〜っと、婚約指輪が欲しいんですけど・・・」

 「はい、それならこちらへどうぞ〜」

 「あっ、はい。」

 と僕はその店員に婚約指輪が置いてあるコーナーへと案内された。

 そして店員に促されるままにショーウインドウを見ていると、僕の目には一つの指輪が入ってきた。

 それはそのコーナーの中では、あまり目立たないが何かその輝きにはなぜかひかれるところがあった。

 「あの〜、これが欲しいんですけど〜」

 「はい、わかりました〜、はい、あっ、これですね、お客さん」

 「はい、この指輪です・・・。」

 「そうですか、でもお客さん本当にいい目してますね〜」

 「へっ、そうですか?」

 「これはある巨匠の作品を店長が特別品として仕入れてきたものなんですよ〜」

 「そうですか、じゃあそれをください、おいくらですか?」

 「15万円になります。」

 「はい、じゃあこれを・・・」

 と僕はバックの中からとある銀行の名前が入ったの袋を取り出した。

 このお金は僕が苦面して貯めたほたるとの結婚資金だ。

 そして、そのお金を店員に払ってラッピングされた品物をもらうと僕は店を後にした。

 僕はは帰りのシカ電の中で、どうやって彼女にプロポーズしようかと悩んでいた。

 しかし無情にも電車はすぐに桜峰に着いてしまった。

 こうして僕は悩みながら歩いているうちにあっという間に朝凪荘の前についていた。

 そこには、仲良くトモヤとじゃれあうほたるの姿があった。

 「健ちゃんおかえり〜」

 「うん、ほたるただいま〜」

 「それじゃあ、健ちゃんも帰ってきたし夕飯でも作りますか・・・。今日はほたる特製謎の夏野菜カレーにしようかな〜♪」

 「それじゃあ、それを頼もうかな〜、でもその謎って何なの?・・・何か変なものでも入れるの?」

 「それは秘密だよ〜♪秘密は秘密〜なの〜♪」

 とほたるはそんな事を言いながら元気良く朝凪荘の中に入っていった。

 そして僕はしばらくトモヤとじゃれあいながらほたるの作る『謎』の夏野菜カレーが出来るのを待っていた。

 そして、夕食を食べ終わってしばらくたった後僕とほたるは海岸に散歩に出掛けた。

 そのとき、僕の頭の中にはある言葉達が回転していた。

 僕の想い伝えるためのことばが・・・

 

 

 第四章 浜辺にて・・・

 

 

 しばらくすると僕とほたるは近くの浜辺に着いた。

 少し薄暗い砂浜には他に誰の姿も無く、時折肌に感じる浜風は心地よく感じる。

 そんな事をふと僕は感じながら、しばらくほたると海岸を散歩すると、僕たちは岩肌のある海岸の砂浜に腰を下ろした。

 「そういえばここにくるの久しぶりだな〜。・・・あの頃以来、だもんな・・・」

 「・・・えっ、あの頃って健ちゃん・・・?」

 「4年前のちょうど今頃さ・・・」

 「・・・そう。でもほんとにあの頃は色々な事があったよね〜、でもあのときあんなことがあったから、今こうして私は健ちゃんといられるんだよ〜、ねっ、健ちゃん?」

 「ああ、そうだね、ほたる。」

 そんなことを僕とほたるは薄暗い浜辺で、視界いっぱいに広がる海を見ながら、あの頃の事を思い出しながら語り合った。

 しばらくたった後、僕はようやく本題に入る決心をした。

 

 「・・・そういえば、今年のクリスマスイヴで丁度ほたるとであってから五年がたつんだよな〜。・・・本当にいろいろなことがあったよね・・・」

 「・・・、うん。そうだね・・・。ほんとうに健ちゃんはいつも迷惑かけてばっかりだもんね!」

 「・・・・・そうだね、ほたる。・・・ところでちょっと大事な話があるんだ聞いてくれるかな?」

 「うん。でも大事な話ってなに〜?」

 

 

 

 

 大きく息を吸いこむ・・・

 

 

 

 

 「・・・・・それは、やっと僕は就職が決まったし、あとはほたるの結果待ちだけだから、言おうと思うんだけど・・・。・・・・・それは僕と結婚して欲しい!!今までの同棲生活と違って、本当に僕の妻としてお互いを支えあっていく関係になって欲しい。いいかなほたる?」

 

 

 

 「・・・うん、だめじゃないよ!駄目な訳ないよ!!今までこの時がくるのを待ってた。ず〜〜〜〜っと前から。」

 ほたるは僕に体を預けてきた。その目には、すこし涙を浮かべながら・・・

 「そう?それならほたるにこれを受け取ってほしいんだ・・・。」

 「えっ、なに?」

 僕はポケットの中から小さな箱を取り出す。

 その箱の中にはさっき宝石店で買った指輪がはいっている。

 「これを受け取って欲しいんだ、僕が世界で一番愛しいひとに・・・・。」

 「うん、でも健ちゃん一つだけお願いしていい?」

 「なに、お願いって?」

 「うん、・・・・・この指輪を・・・・・、はめて欲しいの・・・・・。」

 「・・・うん、いいよ。」

 僕はほたるの指にそっと指輪をはめた。

 「健ちゃん?」

 「なに、ほたる」

 「ずう〜〜〜〜っと一緒だよ。」

 「ああ、いつまでも一緒だよほたる。」

 僕たちはどちらともなく静かに唇を重ねた。

 この幸せが永遠に続くことを願いながら・・・

 

 

 第五章 Happy Life

 

 

 「健ちゃん、起きて〜。朝ですよ〜!!」

 「う〜ん、もう食べられないよ〜」

 「も〜、いつまで寝てるの?お寝坊さん、会社に遅れちゃうぞ〜!」

 「・・・・・う〜ん、わかった、わかった、起きるよ〜」

 と僕は眠い目をこすりながら布団から起き上がった。

 そういえばあれときから10年が過ぎた。

 それから僕たちは、その告白した年のクリスマスイヴに入籍した。

 二人が出会ったあの日に・・・

 そして今では二人の子供を持って幸せに暮らしている。

 名前は、健二としずくという双子の兄妹である。

 そして、近況を言うと、僕はある会社で係長の職についている。

 ほたるは、市内の小学校で音楽の教師をしている。

 彼女はその全国で優勝するほどのピアノの腕はさる事ながら、その温厚な人柄や、親切丁寧な教え方で生徒の人気を集めている。

 ふと僕はなぜかそんなことを僕は思いながら、朝食の席に着いた。

 「そういえば今日はクリスマスだな〜」

 「ふたりのプレゼント何にする?」

 「う〜ん、そうだな〜健二のほうはサッカーボールなんてどうだ?」

 「そうね〜いいんじゃない!そして、しずくは何にする?」

 「そうだな〜、ほたるはその年の時何をもらってた?」

 「う〜ん、多分そのころは、多分ほたるの好きな曲の譜面をもらっていたと思うよ。」

 「じゃあ、それはほたるに頼める〜?」

 「うん、今日は終業式だから大丈夫だよ。」

 「じゃ〜、よろしく〜。でも、この子達本当に僕達に似てるよな〜」

 「うん、そうだね!!そりゃ〜、かわいいほたるとかっこいい健ちゃんの子供だからっぺ?」

 「・・・ほんとに良く言うな・・・。まっ、いいか。じゃあ健二のは僕が買ってくるよ。(・・・君のも・・・。)」

 と僕は最後にちょっとほたるに言いそうになってしまったが、なんとか寸前のところでやっと言うのを止めることが出来た・・・。

 

 「最後になんか言った?」

 「いやっ、なんにも・・・・・。」

 「・・・・・怪しいな〜。あっ、そろそろ行かないと遅れちょうよ〜」

 「あっ、そうだ時間無いや。・・・じゃあ、行ってきま〜す!!」

 「いってらっしゃ〜い!今日は遅くならないでね〜!!」

 と僕はほたるに見送られながら会社に出勤した。

 今日はとても仕事をする気分でなく何度も課長に怒られてしまった。

 こうしているうちに1日の仕事がやっと終わりを迎えた。

 「はぁ〜、やっと終わった〜、さ〜てプレゼントを買いに行くぞ〜!!」

 「よぉ!イナケン、ひさしぶり〜!!」

 と最寄りの駅の改札の前で信君にあった。

 余談だが、信君は今でもまだルサックの店長のままである。

 でも若くして店長になったし高校も出ていないのにこの役職にいることだけですごいことだと僕は常々思っている。

 「どうしたんですか、急に?」

 「・・・だってそりゃ〜、今日クリスマスだろ〜?うちのバカ息子にプレゼントあげなくちゃいけないから探していたんだよ〜」

 「そうですね〜、まだ決めてないんですか?」

 「そりゃ〜、まだ決めてないに決まってるよ。ところでイナケンは?」

 「僕の息子はもちろんサッカーボールですよ〜。」

 「・・・そりゃ〜、2代そろってサッカー馬鹿になるな・・・。こりゃ〜」

 「なんか言いました?」

 「・・・いいや、じゃあ、デパートにでも一緒に行くか?」

 「ええ、じゃあ、さっさといきましょうか・・・。 」

 こうして僕と信君は一緒にプレゼントを買った後、駅前で別れた。

 そのあと僕はある店へと出掛けた。

 そう、今日はほたるとの結婚記念日でもあるからそのプレゼントを取りに行ったのである。

 そして、7時前に僕は家に帰ってきた。

 「お父さん、お帰りなさい。」

 「お父さんおかえり〜。」

 と僕の子供達、健二としずくが玄関に迎えにやってきた。

 「健二、しずく、ただいま。ほたるもただいま〜」

 「あっ、健ちゃんお帰りなさ〜い。」

 「ああ、ただいま。」

 「さ〜て、お父さんも帰ってきたし夕御飯しましょうか〜?」

 「そうだな〜、さ〜て、健二、しずく、夕飯だぞ〜!」

 「は〜い!!」

 「はい。」

 と2人は返事をすると台所に向かって仲良く走って行った。

 その後、僕たちは4人でクリスマス&結婚記念日ディナーを楽しんだ。

 そして2人が眠った後、僕とほたるは、一緒にワインを傾けながら、昔の思い出話をして、日付が変わる前にほたるは先に眠りに就いた。

 なぜかと言うと僕は2人の子供と愛する妻の元にプレゼントを届けるために少し長く起きていた。

 「さ〜て、日付も変わったし。2人にプレゼントを届けますか〜」

 と僕は戸棚からプレゼントを取り出すと健二としずくの枕元にそっとプレゼントを置いた。

 そして僕は自分とほたるの寝室へ戻った。

 するともうほたるはぐっすりと眠りついていた。

 僕はほたるの枕元にプレゼントを置いて眠りに就いた。

 

 

 次の日の朝・・・

 「あ〜、サンタさんのプレゼントだ〜!!」

 「私は、大好きなピアノの楽譜だ〜!」

 「僕は、サッカーボールだ〜!!」

 二人はとても喜んでいた。

 ほたるは・・・・

 「健ちゃん、プレゼントどうもありがとう。」

 「どういたしまして。」

 と僕たちは朝から軽くキスを交わした。

 2人は願った、いつまでも幸せな日々が永遠に続くようにと・・・・

 

 

                                  FIN

 

 

 

あとがき

 

 ど〜も山倉です。と言う訳で今まで誤字の多かったこの作品を大(小?)幅修正致しました。

 今読んでもまだまだ誤字が多いかも・・・(滝汗

 まあ、これが公式に載ってもうそろそろ1年ほどが経とうとしていますね。

 山倉自身も成長したはず・・・(滝汗

 と言う訳でまた次の作品でお会いしましょう。

 ではまた〜