季節は初夏、木々が若葉を茂らせるとき。
僕は、普段通いなれた通学路の途中でぼんやりと空を眺めていた。
季節の調べ
第一楽章 「そよかぜとともに・・・」
「は〜今日も学校か〜」
と1人僕はつぶやく、僕の名前は斉藤 隆史。学年は1年、まあ、俗に言う新入生だ。僕はこの学校に入学して半月、部活にも入らず、友達も作らず、いつも1人で空を見上げていた。
流れる雲、そよぐ風、ときより飛んでくる虫たちの姿を見ていると、なんか学校には行く気がしなくなてしまった。
でも所詮僕は学生、学校を休めるはずはなく僕はとぼとぼと、また歩き始めた。
そして放課後、僕はもちろん部活には入っていないので、部活に入っている人とは違い帰るのは早いはずだが、早く帰ってもすることが無いので、特別の用事が無い限り、僕はここ数日、学校の屋上で時間をつぶしていた。(と言ってもただ寝るだけだが・・・)
「あ〜、今日も何も無い1日だったな〜、あ〜ホントになんか良いことでもないかな〜。でも日頃の行いが良くないから良いことは有るはず無いか・・」
と1人意気消尽してみる。そして更に僕は1人でぼやく。
「しかも、この学校に入って早2週間、部活も入らず、友達も作らず、ただ外を眺めているだけ。果たして僕はこのままで良いのだろうか・・・・」
「別にそれは君の好きで良いと思うよ!」
と僕の向いている方とは逆の方向から1人の少女の声が帰ってきた。
「えっ?」
「だから〜、自分で好きでやっているんでしょ?それならもっと自分に自信を持たないと・・・」
「ああ、そうだけど、ところで君は誰?」
「ああ、私、私は久保 純。一応君と同じクラスなんだけど・・・・」
「そう、ゴメン。僕あんまりクラスのこと知らなかった・・・、と言うか知る気も無かったから・・・、本当にゴメン。」
「まあ、別にそんなに謝ることないよ。私も君のことはただ前だったから知ってるだけ。」
と気さくに笑う彼女。
「・・・そうなんだ・・・、全然気が付かなかった・・・。」
と僕は少しうつむいてみる。
「も〜、斉藤君。 落ちこまないで、だからもう気にしてないってば〜!!」
「・・・・・・・」
「う〜ん、それなら、お詫びに今日はこの町、案内してくれないかな〜」
「・・・、えっ、なんで?」
「うん、私、昨日この町に越してきたんだ。」
「そうなんだ、それなら案内するよ。それでどこか行きたい所ある?」
「う〜ん、そうだな〜、それなら、どこかゆっくりと空が見える所に行きたいな〜」
「う〜ん、空か〜、どこが良いかな〜〜、う〜ん・・・・・・」
「どう、そういう所ってある?」
「・・・・・・、あっ、あった〜!!」
と僕は勢いよく立ち上がった。
「えっ、・・・・・そう、それでどこにあるの?」
「えへへへへ、それは行ってのお楽しみ〜」
と僕は少し思わしげに微笑んだ。
ここは僕の住んでいる町のそばを流れている川の土手、ここの堤防の所には芝生が生えており、僕はたまにここに来て空を眺めていた。
「ここだよ。」
と僕は芝生に座りこむ。彼女も
「ふ〜ん、ここか〜。結構良い所ね。」
と言いながら一緒に座りこむ。
「たまに来てるんだ〜、ここに・・・」
「・・・そう。」
「でも今日はいい天気だな〜」
「うん、そうね。」
とお互いにいつの間にか芝生に横になっていた。
「あ〜、なんか眠くなってきちゃった・・・・」
と彼女はしばらくすると寝てしまった。
「・・・・、僕も寝ようかな・・・・。」
と僕は空を見ながら横になった。
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『トントン、トントン』
「んっ、なんだ?」
と僕は夢の中から誰かによって現実の世界へと呼び戻された。
「も〜、斉藤君。私より寝てるんだから〜」
「ああごめん。君が寝てるの見てたら僕も眠くなって・・・、いつのまにか寝てた・・・。」
と少しうつむいてみる。
「まっ、仕方ないか・・・、私にも責任があるし・・・」
「・・・・・、そうだそういえば君ってどこに住んでるの?」
「えっ、私、・・・・・、う〜ん、多分この近くだと思う・・・」
「ふ〜ん、そうか〜、僕もこの近くなんだ。それじゃあ、送って行こうか?」
「うん、いいよ。」
「それじゃあ行こうか・・・」
と僕は彼女より先に歩き出す。
「えっ、ちょっと待ってよ、私まだこの町に来たばっかりなんだから道わかんないんだから〜〜、家帰れないよ〜〜」
「えへへへ、どうしようかな〜、どっか他の所にも置いて帰ろうかな〜」
「うっ、も〜、やな感じ!じゃあもういいですよ〜だ、一人で帰るから。」
と彼女は逆の方へ行ってしまった。
「・・・・・、わかったよ、ゆっくり歩くから・・・・・」
「うん、解れば宜しい。じゃっ、行こうか。」
「ああ。」
と僕達は今度、そろって歩き出した。
「じゃあ少し走って行く?」
「ああ、別に良いけど・・・」
「うん、それなら遅かった人がジュースおごりね!」
「・・・・・!?」
「それじゃ〜お先に〜」
と少し考えていた僕を尻目に彼女は駆け出した。
「お〜い待ってくれ〜」
と夕暮れを迎えていた川の土手に僕の悲痛な声が響いたのはそこに咲いていたタンポポしか知らなかった。
でも今まで一人で過ごしていた高校生活に光が差したある初夏の日であった。
Fin