あの夜公園で話したあと
二学期が始まってしばらく経ったあと
一通のエアメールが僕の元に送られてきた。
中にはこの様な事が書いてあった。
「私は、あなたが好きでした。
ですがこんな恋をしていた事を私は忘れます。
忘れる事にします。
すべての事を忘れて私は一つの夢にむかって向かう事にします。
今度出会う時にはお互いに笑って会いましょうと・・・」
と彼女から送られてきた手紙に中身にはそのような事が書いてあった。
Memories off 2nd Short Story
セーヌ川のほとり
1章 終わらない夏
僕はその手紙を読み終えたあと、とっさに自分の預金通帳があるタンスに手を移した。
記憶が確かならばその通帳には数十万円はあったはずだった。
そう、僕はある事を決めていた。
そして僕は額面を確認すると、下の階の信君のもとに向かった。
「信君いる~?」
「おう、どうしたんだ急に?」
「静流さんの事で相談があるんだ。」
「おい、どうしたんだイナケン?静流さんがどうしたって言うんだ?」
「ああ、そうだ信君。」
と僕は信君に今までのことを話した。
信君は僕にこう言った。
「イナケン、それで君はどのようにしたいんだ?」
「ああ、俺は、静流を日本に連れ戻したい。
だってただ彼女は自分の気持ちから逃げているだけなのだから。」
「そうか、でも、イナケン、そんなことをしていいと思っているのか?」
「ああ、でも彼女が拒んだら諦めるつもりだ。」
「そうか、でも解るのか住所?」
「それが困って信君に相談しにきたんだ。」
「わかった。静流さんのことなら、小夜美さんに聞いてみることにするか!」
「ありがとう、信君」
「どういたしまして、って言いたいところだが
それはちゃんと小夜美さんに聞けてからにしてくれよ。」
と言いながら信君は電話を取って、小夜美さんに電話をかけ始めた。
「もしもし、信ですけど・・・・、小夜美さんですか?
あの~、ちょっと聞きたいことがあるんですけど・・・宜しいですか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
はい、そのことなんですけど・・・・、ああ、彼ですか?
ああ、今ここにいるんですけど・・・・、はい、じゃ~代わります。」
と信君は小夜美さんに電話をしてしばらく話したあと突然僕に電話を差し出してきた。
「もしもし、伊波健ですけど・・・」
「あなたが静流の行ってた健くんね。あなたがどれだけ静流を傷つけたと思っているの。 あなたは彼女の心の内を解っているつもり?」
「はい 、どれだけ傷つけたかも解っているつもりです。」
「そう、でも彼女のことは解らないわ。」
「そうですか・・・・」
「でも、健くん、彼女に会ってどうするつもり?」
「はい、僕はちゃんと彼女に会ってあの時の答えをちゃんと聞きます。
僕は、あんな手紙を見ても、彼女にもう一度会って聞いてみたいんだ。
この恋は捨てられるものだったのか?って。
僕がそれを言ったとしても、彼女がこの恋は捨てられる。
といって僕を完全に捨ていくのだったら静流さんのことを諦めるつもりです。」
「そう、まあ一応静流が行っている、専門学校の場所なら解るけど。
住所がね~、まあ、それは彼女の親に聞いてみるわ。」
「はい、本当にどうもありがとうございます。」
「どういたしまして、でも、どうなっても知らないわよ~。まあ、がんばってらっしゃい。」
と最後に彼女は僕を励ますと、電話を切った。
そして僕は飛行機のチケットを手に入れるために旅行代理店にやってきた。
「いらっしゃいませ~、今日は何のご利用ですか?」
「すいませんが、パリ行きの航空券が欲しいのですけど?」
「はい、それでしたら、往復で日系の航空会社とフランスの航空会社とお安い東南アジア経由の航空券がございますが・・・
いかがいたしましょうか?」
「う~ん」
などとしばらく店員の話を聞いたあと、僕はパンフレットをもらって店を後にした。
そして朝凪荘に帰ってくると・・・・
「おかえり~、イナケン、どうだ、航空券って高かっただろう?」
「ああ、しかも帰りに静流を連れて帰ってくるとなると、東南アジア経由となると・・・・」
「う~ん、そうだな~、じゃ~格安航空券ていうのはどうだ?」
「ああ、あの新聞の広告に乗っているやつだろ~」
「うん、そうだが、イナケン、予算はどれくらい?」
「え~と、十万ぐらいかな」
「解った、チケットのほうは俺のほうで手配しておくから。
でも一週間ぐらいかかるからそれは覚悟しておいてくれ。
ま~、その間に渡航の準備でもしていてくれ。」
「ありがとう、信君。本当にありがとう。」
と僕は信君に感謝して少し涙目になっていた。
「お~い、気持ち悪いぞ~、イナケン。それじゃ~お休み~。」
「ああ、お休み。」
と言うと僕は部屋に帰った。そして、僕はすぐに深い眠りに着いた。
2章 捨てきれない想い
ここはところ変わってフランスのパリ
私は好きな人のいる母国を離れて今この国で
お菓子の専門学校に通っている。
私は。今日の授業が終わって下宿先への道を歩いてきた。
「は~、今日の授業も大変だった~。
だって英語ならともかく先生ったらフランス語で話すんだもん。
本当にこの国は、話すのはたいていフランス語、たまに英語
あ~、本当に日本が懐かしい。
でも、今はあの国にはつらい思い出があるから しばらくは、こんな生活もで良いかな。」
などと私は日本語でつぶやきながら歩いていると
すでに私は下宿先の玄関の前に立っていた。
「ただいま~!」
「おかえり~、シズル!!」
と下宿先の1人娘のエリスが私を迎えてくれた。
この下宿先は三人家族でしかも今は旦那さんは単身赴任でイギリスに出向中とのことだ。
という訳なので今は妻のクリスティーンと娘のエリスと私の女三人でこの家に暮らしていた。
そして、この家族はイギリス出身だったので会話は英語を使っていた。
「ところで、シズル、なんか今日はお土産ない?」
「え~と、あっ、実習で作ったエグレアがあるわよ。」
「わ~い、おかあさ~ん、静流がお土産持ってきてくれたよ~。」
「本当にどうもすにすみませんね。ほらエリス、食べるのは、ちゃんと手を洗ってからよ!!」
「は~い、解りました~。」
「本当にミス白河どうもすいませんね。いつも、いつも。」
「いいえ、どうせ実習で作ったものですから。」
とそのような話を終えると私たちはみんなでティータイムを楽しんだ。
そして夕飯が終えると、私は自分の部屋に入り明日の予習を始めた。
私は予習復習など一通り終わると最後に日記をつけた。
それが終わって一息着いた時・・・・・私は不意に泣き出していた。
・・・そう、どうしようもなく募る彼への思いに・・・・
「健くん、私はあなたが好き。どうしようもないぐらいに。
・・・・でも、あの手紙にはあんな事を書いてしまった。
でもわたしは・・・・・」
などと私は一人泣きながらつぶやいたが、いつのまにか私は泣きつかれて眠ってしまった。
泣き疲れて眠った日の夢には必ず彼の姿が出てくる。
・・・そう、楽しかったあの日々の頃の彼の姿が・・・・
3章 午後の旅立ち
そして一週間後、僕は成田空港の出発ロビーにいた。
そこには信君、そして翔太と小夜美さんが僕を見送りに来てくれた。
「まあ、がんばって連れてかえって来いよ。一応応援してるから。」
「ああ、俺もだ、がんばって来いよ。ちゃんと学校のほうは俺がフォローするからさ!」
「健くん、私は多分まだ静流はあなたのことが好きだと思うわ。
しかもあなたにあんな手紙を出したことにも相当後悔しているはずだからあなたが救って頂戴ね。」
とみんなに励まされたあと僕は出国ゲートに向かい。しばらくした後、飛行機に乗り込んだ。
そして30分後、僕を載せた飛行機は大空へとはばたいていった。
彼女がいるあの地まで・・・・
4章 再会
そして10数時間後、僕の乗った飛行機はフランスのシャルル=ド=ゴール空港と降り立った。
入国審査が終わり、僕はバスに乗り込み、そしてホテルに入って荷物を置くと彼女の通っている専門学校に向かった。
そして待つこと30分・・・・
専門学校の玄関の前から静流が姿をあらわした。
「どうして、あなたがここにいるの?」
「ああ、来ちゃったんだ君に会うために。」
「どうして?せっかく諦めようと思ったのに、せっかく・・・・」
と静流は泣きながら通りをかけていった。そして僕もその後をかけていった。
僕は全速力で走る静流を10分ぐらい経ってようやく追いつくことが出来た。
そして僕たちは、その近くにあったカフェに入ることにした。
「久しぶりだね。」
「ええ」
「どう、菓子の専門学校は?」
「ええ、毎日が充実していて楽しいです。」
「そうか、それなら最後にこれだけは言わせて欲しい。
静流、僕は君が好きだ、どうしようもないほど・・・・
だから僕は君の口からちゃんと返事が欲しい。
たとえそれがどんな結果でも・・・・
だからちゃんと返事が欲しい。
それがどんな返事であっても・・・・
だから今度は逃げないで欲しい。
また逃げたら僕はまた君を追いかける。
そうしないとこの恋は振り切れないんだ。だから返事が欲しい。
明日、今日と同じ場所で待っている。」
と僕は一方的に彼女にそう告げると伝票をもって店を後にした。
「健くん、ま・・・」
と私はそう言おうとしたが、彼の姿はすでに人込みの中に消えてしまっていた。
「あ~あ、やっぱり来ちゃったか、本当に彼は一途だな~。
私に恋するなんて持ったないほどに・・・・。」
などと思っているうちに私は下宿先の玄関の前に立っていた。
そしてエリスがいつも通りに私を迎えてくれた。
「お帰りなさ~い、シズル。あれ、どうしたの?」
「えっ、ちょっとね。」
「おかえりなさ~い、ミス白河!」
「ただいま・・・・・・」
「どうしたの?そんなくらい顔して?」
「ええ、ちょっとね。」
「もしかして彼が来たの?日本から?」
「ええ」
「じゃ~なんで、好きなんでしょ?」
「はい、 そうなんですけど・・・・」
と私はクリスティーンに私と健くんのことを全て打ち明けた。
自分の妹の彼氏だったこと。
その妹の彼氏を好きになってしまったこと。
彼が自分の妹と別れて自分のもとへ来てくれたこと。
などを全て隠さずにクリスティーンに告げた。
「そうなのかい、でも好きなんだろ、彼のことが・・・」
「はい」
「ならはっきり言ってあげな、彼が好きだって・・・」
「でも・・・・」
「はい、くよくよしない。じゃ~今日はパーっとやるよ、秘蔵のワインを出してさ。
そう、こう言う時は酒でも飲んで、パーっとやるのが一番いいんだよ。
そして、明日成功したら私たちに紹介してね。シ・ズ・ル!」
「OK」
「じゃ~クリス今日はパーとやるわよ!!」
「は~い!!」
と私は深夜までクリスティーンの酒盛りに付き合わされてそのまま寝てしまった。
次の日の朝・・・・
「おはようございま~す。」
「あっ、おはよう、シズル!!」
「おはよう、静流、もう決心はついたかい? 」
「はい、もうつきました。」
「それじゃ~今夜ちゃんと連れてきてよね!今日はドンペリ開けてごちそう用意しているから!!」
「はい、わかりました。」
と話をしたあと私は学校へ向かった。
・・・そして彼との会う時間が来た。
5章 セーヌ川のほとり
昨日僕は静流から別れた後、そのままホテルに着き
早く床に就いたが、なかなか深夜まで眠ることが出来なかった。
翌朝あまり眠れずに目を覚ますと。昨日買ったクロワッサンを少しかじりホテルを後にした。 その後僕は市内各所を見物し、
そうこうしているうちに約束の時間が来た。
「健くん、話があるの、ちょっと来てくれない?」
「ああ、いいよ。」
と僕は静流さんに誘われるままにあとについていった。
そこには雄大なセーヌ川が流れていた。
僕たちはその川沿いにあるベンチに腰を下ろした。
そして、ゆっくりと話し始めた。
「静流さん、本当に昨日はすまなかった。僕がどれだけおろかだかわかったよ。
もう、これで君と会うのは最後にさせてもらう。本当にすまなかった。
・・・それじゃ~」
と言うと僕はベンチから立ち上がろうとした。
・・・すると、静流が急に僕の腕をつかんできた。
彼女は泣いていた。
「どうして、私の前からいなくなるの?
どうしてあなたは、私の前からいなくなってしまうの?
どうして私の欲しいものは、いつも私の前から逃げてしまうの?
どうして・・・・・」
と静流さんは泣き崩れた。
「おい、静流さんどうしたんだ。」
「私はあなたが好き、
どうしようもなく好き。
でも私がどんな事したか解ってる?
好きな人にあんな手紙出して
でも、この想いは捨てられない
あなたへの想いは・・・・」
泣き崩れる静流に僕は・・・
「僕も好きだよ。どうしようもないぐらいに・・・
だからこんな異国の地にまで来たんだ。
世界で一番愛しい君の元に・・・」
と言うと僕は静流の唇に僕の唇をあわせた。
時はすでに夕刻を迎えていた。
「好きだよ、静流。」
「私も、好きよ。どうしようようもないぐらいに」
とお互いに言い合うと、
僕は静流の案内で、静流の下宿先に案内された。
「お帰りなさい、シズル、あっ、これがうわさの彼ね。」
「はい、そうです。どうぞ健くん。」
「はい、じゃ~、お邪魔します。でもこの会話、英語じゃなかった?」
「ええ、そうよ、だってこの家族はイングランド出身だから。」
「そうか、どうも始めまして。伊波健と申します。」
「こちらこそ、どうも始めまして、私はクリスティーンと言います。あれは娘のクリスです。」
「お帰り~シズル、宜しくね、ケンお兄ちゃん。」
「こちらこそ、宜しくね。」
「じゃ~ケンお兄ちゃん、私と遊んで~!!」
「うん、いいよ。」
と言うと健はエリスに連れて行かれてしまった。
「よかったわね、シズル。」
「はい。」
と僕はエリスと遊んだあと、異国のもう一つの家族に大歓迎を受けたのだった・・・・。
エピローグ しばしの別れ
次の日、僕と静流はクリスティーンとエリスに連れられてパリ市内を観光した。
その夜、僕は深夜の飛行機で 日本に帰ることになっていた。
最後に僕たちは、シャルル=ド=ゴール空港にいた。
「ケンお兄ちゃん、また遊びに来てね。」
「うん、またくるよ。エリス。」
「ケンくん、シズルを大事にしなさいよ。それじゃ~また会いましょう。」
と二人は僕たちを残して家に帰っていった。
「じゃ~来年まで留学するんだね。」
「うん、でも来年の4月には帰ってくるから。」
「解った。でも正月は帰ってくるの?」
「う~ん、ちょっと解らないかな?」
「じゃ~、僕がバイトしてお金稼ぐよ。エリスちゃんも喜ぶと思うしね!」
「そうね、また連絡するわ。」
「じゃ~電話は週一回で10分、それでメールは毎日だね。」
「うん、解った。これが私のアドレスね。日本についたら連絡してね。
ちゃんと時差を考えて・・・」
「うん、解った。」
「それじゃ~、また。」
「それじゃ~。」
そして僕と静流は最後に軽く唇を合わせて、お互いの別れを惜しんだ。
でもこれは、永遠の別れではない。
ただのしばしの別れだから・・・・・
あとがき
いかがだったでしょうか?山倉のSS3作目メモオフの公式サイト応募分はこの完全版と違いあらが目立ったと思います・…
これからもSSは小説の掲載の合間に掲載していこうと思っているのでよろしくお願いします。
それではまたお会いしましょう。