オヤジ達の渓遊び
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4月23日の天気予報は『上空には−30℃の寒気が南下、真冬並みの寒さとなり、土・日にかけては山間部では雪が降るでしょう・・・』と告げていた。
おまけにKiyochは仕事の都合で不参加を余儀なくされ、結局坂下との二人旅になってしまったのだ。

24日午前9時過ぎに東京から坂下が日光に着いた。
「ヨォー、久しぶり!Kiyochはこらんね〜んだってよ〜、二人で行くよ〜だぜ」
ここで御願いがある。会話部分は各センテンス毎に軽く音程を跳ね上げて読んで欲しい。そうでないと
栃木弁の正しいニュアンスが伝わらないのだ。例えば、マギー司郎の語り口を思い出していただければ良いのではないか・・・。それとガッツ石松つぶやきシローなんてのもいたな。とりあえずあの雰囲気で読んで欲しいのです。

「どこにすっぺ?」
「どこにスッペって言ったって、ワカンネ〜から行きながら考えっぺ」
しかし、この時期選択肢などないに等しい。福島の檜枝岐や只見はまだ雪の中である。近場で人跡をそれほど感じさせない渓といえば「あそこ」しかない。「あそこ」に行こう。

国道121号線から川俣方面に左折し土呂部(どろぶ)に車を向ける。
土呂部では水芭蕉の見物をして、馬坂沢林道〜無砂谷林道を進む。しかし、無砂谷林道の入って間もなく道路の崩落箇所が出現、ここからは歩くしかない。眼下には無砂谷の流れが陽光を浴び一条の輝きとなって流れている。まだ春遠い風景の中に河原柳のほんのりと淡い緑が霞んでいた。


2004年4月24日〜25日
 細谷・坂下

土呂部の水芭蕉(細谷)

画像は全てSony Cyber Shot U60

「タラッペ(タラノメ)には程遠いなぁ」

約20分ほどで入渓点の第2無砂谷橋に着いた。

「サァ〜行くぞ!」
いよいよ遡行開始である。
沢は雪シロが入り、思った以上に流れは強く、冷たく重かったが、しばらく忘れかけていた何ともいえない感触を全身が楽しんでいた。

2ヶ所ほど渡渉に難儀したが入渓点より50分で、この沢唯一の難所「通ラズ」に着く。青空は出ているものの、気温は低く、水量も多い。
いつもなら「巻くべ〜」とか「帰っぺ〜」とか腰が引けてしまうのだが、今日は違った!
果敢に挑戦したのである。

途中の溜りで良型の岩魚を確認してしまった事実がそうさせてしまったのかも知れない。
ドボンすれば「全身ズブヌレ=低体温症」に陥るきわどいヘツリもなんとか腰までの渡渉で済んだ。

午後2時40分広河原に着く。
早速、待望の焚火と定番のコンビニおにぎり&カップラーメンのランチタイムである。
オッと今回は以前ショッピングセンターの酒コーナーの量り売りで入手し今日のために確保しておいた65度モルトウィスキーのお湯割り付きなのだ。

(坂下)

(坂下)

(坂下)

(細谷)

(細谷)

時々青い空を横切るように薄い雪雲が風花を散らしてゆく。
「天気もいいしなぁ〜、どうせ沢を詰めてもワサビもタラッペも出てね〜から、薪いっぱいあるしここテン場にすっぺ」
「そうだな、そうすんべ」
一度はテン場泊をあきらめていたオジキ達だったが現場にくれば後先のことなどそっちのけ、今シーズン初めての渓泊まりを決めこんだのだが、65度モルトの力もあったのかも知れない。

こうなりゃあとは岩魚ちゃんと遊ぶしかない。
テン場のすぐ前で第一投。
ツンツン、モゾモゾ・・・「ン?ン?キター!来た〜!!」
本当に一発で、8寸ほどが来てしまったのである。
「記念写真、記念写真撮んなくちゃ・・」とCyber Shotのスイッチを入れる。
「あれ、砂が着いてる、洗わなきゃ・・」彼女(・・だと思う)を労るように、そっと流れに浸し洗おうとした瞬間、スルリとオジキの手を振りほどき流れに帰って行ったのである。
せっかくのシーズン最初の岩魚ちゃんを情けなくも捕(撮)りにがしてしまったのだ。
しかし、再度挑戦すると寛大な山の神様は餌1匹に岩魚1匹のペースでプレゼントをしてくれた。

ちなみに、この駄文の惹句(キャッチフレーズ)は「軟弱コンビの釣り誇示記(コジキ)」である。
誰に向かって釣果を誇示しているかというと大変申し訳ないとは思うのだが、たけぱんサンへぼつり師サンなのだ。このお二人まだネットでのお知り合いに過ぎないのだが、今季はまだ満足のいく釣果が得られないらしい(その後、ゴールデンウィークになってからいい釣りをしたそうだが・・)。
たけぱんサンとの掲示板でのやりとりで「コジキ」というフレーズを使わなければならなくなったし、あまりナマな表現では「放送禁止用語」の規定にも抵触する(大袈裟な)ということで少しゴリ押しと言うか、コジツケめいているが、この「誇示記」になった次第である。

さて、坂下はというと「離せば分かる」眼の持ち主なので仕掛け作りに手間取ったり、木の枝を釣ったりと難渋していたが、今回の大物(9寸)を大きなタルミから引き出したのだった。

(細谷)
(細谷)
(細谷)
(細谷)

平五郎沢を過ぎた辺りに来ると、もちらつき始め、風も強くなってきたので
「シャミ〜(寒い)、帰っペ〜」
「そうすんべ」と噛み合わなくなってきた唇で会話を交わし、テン場に戻ることにする。
約1時間余りの釣りだったが、オツリがくるほど楽しませていただきました。

テン場に戻ったオジキ達、濡れて冷え切った体に鞭打ち、ゾロアスター教の教えに従いまずは焚火を、次に着替えを済ませると、即、宴会モードに突入である。
本日のメニューは坂下の釣った9寸岩魚と、フキノトウ、ヨモギのテンプラ、少々の乾き物でいつもより質素ではあったが
「やっぱり厳冬には熱燗に限るぜ」と坂下。
「モルトのお湯割りサイコ〜だな」と私。
酔いが回るにつれ
「あいつ、寒波の予報でビビッたんじゃね〜の」と来られなかったKiyochまで勝手にツマミにしては盛り上がって行ったのだ。
焚火の炎に映し出された赤い顔と渓に木霊する笑い声。
スリムな月の輝きと宝石箱をひっくり返したような無数の星たち。
酔いが回った脳裏に「放射冷却」という四文字が浮かんだような浮かばなかったような・・・。

(細谷)

(坂下)

しかし、寒さに対する備えが無かったわけではない。
寝る前にオンパックスとホカロンを私は計7枚、坂下は8枚全身に貼り付け来るべき寒さに臨んだのだ。

夜中、ふと目覚めて小キジを撃ちにツェルトを出ると、ナンと外は雪景色である。
「厳冬だあ〜!」

朝6時過ぎ、ぬくもりのあるシュラフから未練たっぷりで抜け出すと、外はやっぱり雪景色である。

朝食はチョコレートケーキとコーヒー。
テン場を片付け早めに帰途につく。

歩き出して間もなく例の通ラズ。
「どうする?」
「このまま行くべ、だってその方が近いべ」
ヤル気満々のオジキ達だったのだが、流れを確認
した途端
「サミ〜から高巻くべ〜」と、即、退散。
軟弱コンビの復活である。

「綺麗だな〜!」
高巻きの途中、うっすらと積もった雪の上に薄紫の
花を覗かせているショウジョウバカマを見て
「やっぱり高巻きが正解だったんべ」
と、言い訳を無理に正当化してみる。
でも、本当に綺麗だったんだよ、この花。

(坂下)

(坂下)

(細谷)
(細谷)
(細谷)

最後に一つトンマなエピソードを・・・。

高巻きも無事終わり沢通しに下りて行くと、遠くに光る物が?
近づいてみると、実は、昨日遡行中に坂下がザックから落としたアルミマットである。
写真で確認してみると、

雪が降り積もったマット。(細谷)

この時点では、マットはあるが、今にも落ち
かかっている。(細谷)

マットはもう無い。(細谷)

というわけである。

こんなドタバタを繰り返しながらの初釣行だったが、岩魚も釣れたし焚火も盛大だったし、今年も愉しめそうだぜ、渓遊び。

細谷記

軟弱コンビの釣り誇示記(コジキ)
(細谷)