1999年6月18日〜20日

細谷・坂下・小平

18日の深夜、大石ダムに着き仮眠をとる。
19日午前5時30分頃大石ダムを出発。
小雨混じりでレインコート着用である。
最初はダム湖畔の舗装された道路を進むが、滝倉橋という
赤い橋を渡ると登山道になる。
西俣川の左岸に刻まれたこの登山道を延々4時間の歩きを
強いられることになるのだが、約1時間30分でイズタチ沢。
イズタチ沢の上流対岸には中ノ俣川が合流するが、その出
合付近のブナ林の中にブルーシートが張ってある。おそらく
中ノ俣沢を釣っているのだろう。

幾つかの支沢を越えながら進み、登山道が左岸から右岸に
移るとようやく大熊小屋である。

ただ、この4時間にも及ぶ長丁場で、細谷がバテてしまった。
朝から食事をしていないのでシャリバテだったのだろう。細谷は少し休んでいくと言うことなので、一足先に小屋に一人で向かう。(坂下は細谷に付き添う)
大熊小屋到着はちょうど10時頃。荷物を小屋に置き、細谷を迎えに行くと、ちょうど小屋の手前にある丸太橋を渡るところだった。
三人揃って小屋に着き、早速、冷麦を茹でて朝食兼昼食にする。それにしても、小屋の前の水場の水の清冽さは素晴らしい。手が切れるほどの冷たさである。

細谷は少し休んでいるということで、私と坂下で大熊沢に入ることにする。
小屋から登山道を少し登ると大熊沢である。丸太橋を渡って左岸側から沢に降りるが、私が仕掛け作りでもたもたしてる間に坂下が25〜6cm位の良型を釣り上げる。
これには坂下は勿論、私だってイレグイ間違いなしと確信したのだ。
ところが、なのである。ところがその後は一向に釣れて来ないのだ。私などは2,3回当たりがあっただけで放流サイズも釣り上げることが出来ない。それでは、折目ノ沢はどうだろう、ということで一度下流に戻り合流点から折目ノ沢に入ってみる。しかし、ここでも不発。
小屋に残してきた細谷のことも心配だしこの不漁では面白くない。坂下にも最初の魚以来、当たりらしいあたりもないということで、いったん小屋に引き上げることにする。


小屋に帰ってみると寝ているはずの細谷がいない。
どこでスレ違ったか、見当もつかない。
実は、大熊沢の丸太橋のワイヤーに書置きを貼り付けておいたし、上流に入渓したとは考えにくい。それでは小屋の下流にでも入ったのかもしれないということになった。

仕方が無いので、夕飯の支度でもしようということになり、米を研ぎ、玉ねぎ・ベーコンを刻んでおく。
しかし、細谷はなかなか帰ってこない。
6時頃になって、いよいよ心配になり様子を見に行こうということになった。
それにしても、一度脱いで濡れた渓流シューズをもう一度履くというのは気色が悪いものだ。

後ろは大石ダム

ヒメサユリ

この丸太橋を渡ると大熊小屋はもうすぐ。

大熊沢の丸太橋

ようやく準備をして、万一のために30mザイルまで用意して坂下と登山道を歩き出した。ホイッスルを吹きながら登山道を歩き始めて間もなく、細谷があっけらかんとした表情で戻って来たのだ。
それも良型のイワナを3本もぶらさげて・・・・。
結局、細谷はあの「書置き」には気づかず、橋の上流に入渓したのだ。私と坂下もそっちにいると思ったそうだ。
そして、私達が引き返したところより上流でいい釣りをしたのだ。

まあ、細谷が無事だったから良しとしなければならないが、小屋でヤキモキしていた我々はいったい何だったのだろうと割り切れぬ思いもあるよなあ、坂下君。

それでも三人が揃えば早速酒盛りの準備ということになる。
細谷と坂下はイワナの刺身とナメロウとテンプラの製作に取り掛かり、私は登山道で採取したナラ茸を使ってイワナ汁を拵える。
料理が出来上がれば、まずは小屋の前の水場で冷やしたビールで乾杯である。

結局、この日の小屋は我々の貸切。
他人に気遣うことなく、一晩を過ごせる。
料理もそれぞれにまずまずの出来で酒が進む。
私は念の為ロウソクを持っていったのだが、これが
思いのほかに大正解。食卓を照らすぐらいなら充分
である。

外は雨である。
屋根があり壁があるというのは、こんなにもありが
たいものかと痛感させられた。
この日、私は熟睡。

20日、4時半に起床。
朝の定番「ニンニク雑炊」を作り、それをかき込む。
荷物を整理して、空身で大熊沢に向かう。
丸太橋から入渓し、昨日私と坂下が引き返した場所までは
竿を出さずに遡行する。
3m位の滝があり、そこを越えたところから竿を出す。
細谷は昨日このあたりからいい釣りをしたのだという。
小雨混じりの天気で水はササ濁り。餌はキヂである。
絶好の条件に思えたのだが、結果は8寸が1匹である。
そのうちにササ濁りの水が、カフェオーレに変化し始めた。
増水し始めたのだ。
坂下と細谷にホイッスルで合図をし、納竿することにする。

小屋に戻り、本格的に荷物をパックする。
小屋の掃除をし、ゴミも撤去せねばならぬ。釣り関係の雑誌には、この大熊小屋について「管理の行き届いた清潔な小屋」と書いてあるものが多いが、まったくその通りでせめて元通りにして立ち去らなければなるまい。
8時40分、大熊小屋を出発。



今回の釣行、細谷はともかく、私と坂下は釣りの方は
不振であった。
しかし、妙に印象に残る釣行であったことも否めない。
それは、多分、大熊小屋で一夜を過ごしたということ
があったからだと思う。
女性はいざしらず、男には「隠れ家願望」がある。
「カクレガ」と聞いただけでいささか気分が高揚し、ワク
ワクしてしまう何かがある。
偶然今回は我々だけの独占であったから、「カクレガ」
気分を味わうことが出来たのだろうが、それにしても
タープの下とは一味も二味も違う楽しさであった。



虚しく小屋に引き上げる。

細谷の釣果。

小屋の中での団欒

雨で足元が濡れていたので念のためお助けロープを使う。

お世話になった大熊小屋

こういうブナ林は歩いていても気持がいい。

このトンネルを抜けると娑婆である。

大石川支流大熊沢

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