新法僕が学部に入学したのは1998年度。いわゆる「旧法適用者」です。教育学部の「教職に関する科目」19単位をすべて履修して、教育実習も終えて卒業しました。……がっ、理工学部配当の「教科に関する科目」でドハマリ科目に遭い、40単位のうち8単位を残して卒業と相成りました。もちろん、教員免許なんか来ませんでした。あのやろ〜。。。
法の抜け穴2000年度以降入学者がいわゆる「新法適用者」です。「旧法」「新法」とは、「教育職員免許法」の改正前・改正後のもののことで、教員免許に必要な単位数がだいぶ違うのです。
旧法 新法 教職に関する科目 19 23 教科に関する科目 40 20 教科または教職に関する科目 0 16 合計 59 59 僕が散々苦労した「教科に関する科目」が大幅に軽減された一方、「教職に関する科目」が若干増えています。
1998年度に入学して、2002年度以降も引き続き大学院に在学中の僕が一度でも学籍を途切らせると、強制的に「新法」適用です。「新法」で出そうとすると、数字の上でも「教職に関する科目」が足りなくなります。「単位修得証明書」をもらってみるとなぜか「新法」用のが発行されたのですが……
・教職の意義等に関する科目
・生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目(4単位必修のうち2単位分)
・総合演習が足りません。これは面倒なことです……。それに、早稲田大学教育学部発行『各種資格取得の手引き』も
「卒業後いったん学籍が空いてしまうと新法適用となってしまいますから、できる限り現学部在学中に必要なすべての単位を取得するようにしたほうが賢明でしょう」と言っています。どうやら旧法適用のまま取ったほうがよさそうだ、とずっと思っていました。
(2001年度版230ページ)
どちらでの申請が有利かという言い方もおかしいのですが、県の教育委員会に話を聞いてみたら、「免許法5条別表第1の備考9」というのを教えてもらえました。教育職員免許法の該当箇所を見てみると…
9.中学校教諭の音楽及び美術の各教料についての免許状並びに高等学校教諭の数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、農業、工業、商業、水産及び商船の各教料についての免許状については、当分の間、この表の中学校教諭の項及び高等学校教諭の項中教職に関する科目の欄に定める単位数(専修免許状に係る単位数については、前号の規定を適用した後の単位数)のうちその半数までの単位は、当該免許状に係る教料に関する科目について修得することができる。僕が取りたいのは「高校理科一種」です。この場合、「教職に関する科目」の「半数まで」を「教科に関する科目」で置き換えてよい、というルールなのです。同じ理科でも、中学ではダメです。つまり、23単位の半数、11単位までは、「教職に関する科目」ではなく「教科に関する科目」で代用してよい、というわけです。旧法下で必死こいて「教科に関する科目」40単位をめざしていた人には大変ありがたい規定です。
この軽減措置を受ける人の必修科目・単位は、「教育職員免許法施行規則」第6条のカッコ書きの数でよく、、
教職の意義等に関する科目 教育の基礎理論に関する科目 教育課程及び指導法に関する科目 生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目 総合演習 教育実習 規則 2 6(4) 6(4) 4(2) 2 3(2) 取得済み 0 6 8 2 0 3 (かなり簡略化しています。詳しくは本物をご覧下さい)上で足りないと嘆いた
・教職の意義等に関する科目
・生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目(4単位必修のうち2単位分)
・総合演習は取らなくてよいことが分かりました。
どう補うかだとすると、話が変わってきます。新法と旧法、どちらで申請するのが有利か、検討する価値がありそうです。
旧法で申請
必要数 取得済み 教職に関する科目 19 19 教科に関する科目 物理学(必修) 4 8 化学(必修) 4 4 生物学(必修) 4 2 地学(必修) 4 0 実験(必修) 4 5 関連科目(選択) 13 小計 40 32 合計 59 51 その他の科目 日本国憲法 2 4 体育 2 8 →59-51=8=生物学2単位+地学4単位+何か2単位、合計8単位が不足。
新法で申請
必要数 取得済み 教職に関する科目 教職に関する科目 12 19 「教科に〜」から振り替え 4 小計 23 23 教科に関する科目 物理学 ※ 18 化学 ※ 9 生物学 ※ 2 地学 ※ 2 実験 ※ 8 「教職に〜」へ振り替え -4 小計 20 35 教科または教職に関する科目
(=教科・教職の余剰も含む)16 15 合計 59 58 その他の科目 日本国憲法 2 4 体育 2 8 外国語コミュニケーション 2 4 情報機器の操作 2 3 ※…最低一科目以上を履修→59-58=1=教職または教科に関する科目が1単位だけ不足。
一目瞭然で、新法で申請するほうが有利です。
旧法下では「教科に関する科目」が32単位しか取れていないのに対し、新法では教職へ振り替えた分も含めて39単位も取れていることになっているのは、法改正に合わせて早稲田大学理工学部機械工学科が文部科学省から「課程認定」を受けなおしたからのようです。旧法下では認められなかった科目が新法下では認められていたり、逆にせっかく取ったのに新法下では認められなくなった科目もあります。
(……工業化学実験Iなんて、わざわざ他学科聴講までして取ったのに。。。)
認められた科目 認められなくなった科目 ・物理学A
・化学A
・バイオエンジニアリング
・理工学基礎実験2A
・理工学基礎実験1B
・生物学実験
・生産プロセス工学
・エンジニアリング・クリエーション1
・物理化学実験(化学科)
・工業化学実験I
・有機化学実験
・無機分析化学実験
太字は、僕に該当する科目実験科目の負担がかなり軽減されています。旧法下では、他学科で3年生以上配当の実験を履修しなければならなかったのが、新法下では、機械科1〜2年の必修科目で大半がまかなえるようになっています。これから免許を取る人には朗報でしょう。……せっかく取ったのが認められないのはつらいところです。。。
夜間の大学…さて、来年の3月には卒業・就職です。社会人をやりながら不足する1単位を取らなくてはなりません。
一般的に思いつくのは、通信制の大学に通うことです。玉川大学などがやっており、玉川大学の場合はレポートを提出して試験を受ければ単位がもらえます。しかも、試験は年8回あり、受かるまで何度でも受けてよいのです。……早稲田の「生物学A」や「地球科学」の試験一発勝負に何度も泣かされた立場から見ると、単位を取ってくれといわんばかりの制度です。
ここで注意すべきなのは「教職に関する科目」はもちろん「教科に関する科目」も、文部科学省から「課程認定」を受けた大学の単位でなければ新規に教員免許を申請するのに使えません。放送大学はダメなのです。(放送大学の単位は、すでに何かしらの教員免許を持っている人が別の免許を取るための「検定」用にであれば使うことができます)
ざっと調べてみたところ、通信制の大学で、高校理科一種を取るための課程認定を受けている大学が、なんと一つもないのです。えええ〜〜〜っ、、、という感じです。私立大学通信教育協会のウェブサイトを見たときはショックでしたが、ここには加盟大学の情報しか出ていないので、もっと本気で探せば出てくるのかもしれません……もしご存知の方がいらっしゃいましたらご一報ください。
それとも、「教職に関する科目」で補うなら、早稲田大学ではこれらの科目は教育学部に設置されていてどの教科を取る学生にも共通ですから、公民などで課程認定を受けている通信制大学のものでもよいのかもしれません。もう一度教育委員会に確認してみる必要がありそうです。
因みに、「その他の科目」は課程認定の有無に関わらずどの大学のものでもよいのです。
ほかの手段は?社会人でも通える大学というと、一般的には夜間の大学です。高校理科一種の課程認定を受けているところでは、東京理科大学の理学部第二部あたりが思い浮かびますが、単位が取れればよいのですから、授業料の安い国公立大学が望ましいのは当たり前です。正規に入学するのではなく科目等履修生なので、入るのは比較的容易でしょう。
気になる授業料は、私立の例として早稲田大学理工学部は1単位あたり42100円、国立は全国共通のはずですが千葉大学では1単位あたり14400円(ともに2003年度)です。……早稲田の場合、大学院在学中は学部の科目等履修生の授業料が免除なので実は数科目登録しておいたのですが、何度も落としている科目ですし、修論のさなかに勉強するのは負担です。。。ただ、僕の就職先は鉄道会社で、入社後数年は現場です。つまり、勤務は昼だけとは限らず、さらに、週のうち特定の曜日が休みという勤務形態ではないのです。しかも、配属が決まるのは入社後で、東日本のどこへ転勤するか分からないという事情もあります。
……そうはいっても、不規則な勤務とはいえ、一度も出席できないということはないでしょう。それに、休日に勤務がある代わりに平日の休みがありますし、夜勤明けの日は昼の授業に出られます。つまり、昼の大学でもよいともいえます。
大学や学部によっては、科目等履修生は後期から入学できるところもあります。入社後に配属が決まってからゆっくり探せばよいのでしょう。新法で申請なら、あせる必要もないわけです。
中学の免許を取るなら?実は、ほかの手段も考えられます。ざっと思いつくだけでも
1.通信課程でほかの科目の免許を取ってしまう(公民とか)
2.教員資格認定試験を受ける
3.検定を受けるでしょうか。何らかの手段で何かしらの教員免許を手にすれば、同じ学校のほかの科目の免許を取ることは比較的容易(放送大学での履修も認められる)です。
(ただし、高校の免許を元に中学の免許を取ったり、その逆をするには、教員としての実務経験が必要です)学部で複合領域研究室にいた僕にとっては、公民など身近な科目ですが、公民は「教職に関する科目」の軽減措置がありません。ただし、書道・美術・工芸は、軽減措置があって、かつ、通信課程でも取得できる免許ですが、芸術分野はちょっとなぁ……といったところです。書道なんて勉強してみるのも面白そうですけどね。ただ、モタモタしているとまた法律が変わってしまいそうです。
教員資格認定試験というのもありますが、試験を受けるには当然試験対策が必要なわけで、あと1単位を大学で取得するのと比べると、負担が大きいと考えたほうがよいでしょう。
検定は資格認定試験とは別物で、書類審査と面談です。「第1級陸上無線技術士(通称「一陸」)」「3級海技士」の資格を持って一定の実務経験があればいれば、必要な書類をそろえて持って行くと教員免許が出ます。が、放送局の技術社員になるとか、海運会社に就職するのでもなければ、無縁じゃないかなぁと思います。鉄道会社でも無線は扱うのですけど、鉄道会社で使う資格は「第1級陸上特殊無線技士」ですし、連絡船も自社管内にはもうありません……。資格をもっていても、実務経験がないと臨時免許状しか出ません。
臨時免許と1種免許は大違いです。臨時免許はその名のとおり、期限は3年で、しかも免許を受けた都道府県内でしか使えません。
高校には2種免許がありませんが、2種免許は免許法第9条の2で「相当の1種免許状の授与を受けるように努めなければならない」と決まっているだけで、教員として出世を目指さなければ効力は1種免許と変わらないのです。
関連リンク中学の免許を新法で取るのはかなり難しいようです。まず、上に挙げた「教職に関する科目」を「教科に関する科目」で代替することが、中学理科では認められません。(中学は美術と音楽だけ)
次に、中学の美術と音楽のうち、通信課程で取得できるのは美術ですが、1998年度入学者から中学の免許を取るのに必要になった「介護等体験」が若干変わり、新法下では「介護等体験」のほかに「介護体験実習講義」(←早稲田大学での科目名)が必修になっています。旧法適用の私が体験した2000年度は単に「介護等体験オリエンテーション」だったはずの4月の集中講義などが、新法適用者が3年生になった2002年度から正式な科目になったようです。
中学の免許を取るなら、引き続き旧法で履修したほうがよいようです。が、社会人になってしまうので、通信課程で取れない以上は不可能に近いでしょう。上に書いたように、資格を取って臨時免許か、実務経験もして2種免許を取るという方法もあります。
・教育職員免許法 (「法庫」サイト内)
・教育職員免許法施行法(抄) (「法庫」サイト内)
・教育職員免許法施行規則 (「島根の教育研究会」サイト内)
・私立大学通信教育協会
・FLICENSE 特選素材 教員免許取得の裏技