生産者本意の住宅供給

個人住宅とは生産者にとってどういう建築なのでしょうか。その特長を整理してみましょう。

本来、家電製品の様に大量生産することができません。住まい手のニーズが多種多様で一品生産の形をとるからです。敷地の条件はいつも違います。設計するにも、建てるにも非常に時間かかり、結果的に住宅1棟で得られる利益は企業にとっては小さなものです。
つまり生産者にとって利益を追求しにくい生産性の低い商品であるのです。 ところが住宅生産を全体像としてみると、年間100万棟以上たてられるため、マーケットとしては非常に魅力があるわけで、企業はそこで色々戦略を練るわけです。

生産性を上げるため、すなわち利潤を追求するために、ハウスメーカーのような大企業がとった戦略は、次のように要約できます。

  1. 総合的利益の追求:住宅の生産より、土地の売買の方が利益率が高いため、建築条件付き宅地によって、不動産売買での利益を上げると共に、建築発注の誘導を図る。
  2. 敷地の均一化:傾斜地、変形敷地などの個別に検討が必要になる、敷地の特殊条件を極力排除する。宅地造成は、矩形で平坦であることを原則とする。
  3. 間取りの標準化:間取りはnldk型のプランとし、どのような施主に対しても受け入れやすいものを目指す。住まい手の多様なニーズには、いくつかのモデルプランの中から選択させるというイージーオーダーの形で対応する。
  4. 性能の重視:大量生産を前提としているため、性能を重視し、工務店、設計事務所等の住宅との差別化を図かる。
  5. 材料調達の合理化:材料は世界中から最も安く入手する経路を考える。
  6. 材料の規格化、標準化:材料はすべて乾式、軽量で規格化された標準品とする。
  7. 施工の合理化:現場での作業を最小限にするために、躯体のプレカット化、設備のユニット化を図る。
  8. 工期短縮:工期短縮により設計、施工にかかる経費を削減する。
  9. 丸投げ:さらなる利益追求のため、施工を一棟幾ら、一坪幾らという形で外注する。性能維持が必要な場合はフランチャイズ化による
  10. 見積書の調整:材料費、施工費は、実際の単価に一定の割合を水増しして記入し、経費や利益を生み出す。
  11. 宣伝の重視:不特定多数に自社製品をアピールするために多額の費用を使う。

このように、特殊な条件を排除し、住宅を単純化、標準化することが要点です。企業のこういった生産の工夫は、住まい手に還元されることはなく(実際ハウスメーカーの住宅は一部の例外を除き安くないのですから)、企業に大きな利益をもたらします。住まい手にとっては品質や性能以外は、ほとんど何のメリットもありません。排他的で画一的な街並みが生まれるのは、このような生産スタイルが隈無く浸透しているからなのです。

このような企業本位の生産スタイルは、いずれ改変を余儀なくされるでしょう。近年はCRM(Customer Relationship Management) ということが製造業、サービス業を中心に言われてきており 、そこでは顧客主導型の生産モデルが提唱されています。つまり、多彩な特殊条件、多様な顧客ニーズ、いわゆる「わがまま」「こだわり」にどうやって対応するかということが、今企業に問われているのです。

今の時代、住まい手は我慢する必要はありません。限られた予算のなかで自分の「わがまま」「こだわり」につきあってくれる、設計者、施工者は沢山いるのです。ハウスメーカーがすべてではありません。施工で楽することしか考えない、知り合いの大工に頼む必要もありません。自分のデザインを芸術と称して押しつける、設計の先生に頼む必要もありません。IT化によって、今までは口コミでしか営業していなかったような、建築家、設計事務所、工務店、職人の情報も得られるようになってきました。価格の透明性を重視する風潮も定着してきました。誰と一緒に家を建てるか、住まい手の判断に委ねられています。誰に頼めば最大の効果が得られるか考えてみてください。

何れにせよ、そのような選択をするなら、能動的に動く必要がでてきます。正確な判断、選択をするために、いろいろなことを知る必要がでてきます。保証や性能についての知識を得ることも必要になります。住宅の基礎知識がないと百戦錬磨の生産者には太刀打ちできないからです。