■結露計算の方法

これから、具体的な結露計算の方法を解説します。ともかく計算が面倒なので、私は表計算ソフトで計算することにしました。具体的な計算結果は後で見ていただくとして、ここでは、その計算の手順を一応説明しておきます。まず全体の作業の流れは次のようになります。

  1. 壁面(または屋根面)の層構成を決定
  2. 材料の熱伝導抵抗、透湿抵抗を調査
  3. 熱貫流抵抗、湿気貫流抵抗の計算
  4. 計算条件(内部、外部の温湿度)の決定
  5. 各層の温度状態を計算
  6. 当該温度での飽和水蒸気圧を計算
  7. 各層の実在水蒸気圧を計算
  8. 飽和水蒸気圧と実在水蒸気圧を比較
□1.壁面(または屋根面)の層構成を決定

ともかく材料とその厚さ、重ねる順番を決定しないと、結露の計算はできません。順番を変えただけで、結露が発生しないものが結露が発生することもあります。順番を決める際には次の事をことをイメージしておくとよいでしょう。冬場の結露を防ぐためには、断、湿気を通しにくいものほど室内側に、湿気を通しやすいものほど外部側に配列。 断熱は極力、低温側(外部側)に。雨のことを考えたりすると、かならずしもこのようにできるとは限りませんが出来るだけそうなるように配列し、層構成を決定します。なお、「住宅に係わるエネルギー使用の合理化に関する指針」が層構成の決定に役立ちます。

□2.材料の熱伝導抵抗、透湿抵抗を調査

メーカーのカタログや各種参考資料を見ながら、出来るだけ正確に熱伝導率、 透湿比抵抗、 透湿抵抗を調べます。

厚み(m)を熱伝導率(kcal/m・h・゜C)で割ると熱伝導抵抗(u・h・゜C/kcal) が得られます。

透湿比抵抗(m・h・mmHg/g) だけがわかった場合は、厚み(m)を掛けて、透湿抵抗(u・h・mmHg/g) を求めます。透湿係数(g/u・h・mmHg)だけが分かった場合は逆数をとって透湿抵抗に直します。最近はSI単位でかかれることの方が多いので、単位を間違えない様に注意します。

均一でない材料の場合は透湿は材料の厚みごとに変わるので、できるだけ近い厚みのもので計算する方が良いようです。

SI単位で計算したい方は熱伝導率をW/m・K、熱伝導抵抗をu・K/W、透湿比抵抗をm・h・kPa/g、透湿抵抗をu・h・kPa/gとすればいいと思います。旧単位からSI単位に直すには次のようにします。 

1kcal/m・h・゜C=1.16279W/m・K
1u・h・゜C/kcal=0.86u・K/W
1m・h・mmHg/g=133.322m・h・Pa/g=0.133322m・h・kPa/g
1u・h・mmHg/g=133.322u・h・kPa/g=0.133322u・h・kPa/g

□3.熱貫流抵抗、湿気貫流抵抗の計算

次に、熱貫流抵抗、湿気貫流抵抗を求めます。

熱貫流抵抗は各材料の熱伝導抵抗の総和に、内外表面の熱伝達抵抗を加えて計算します。中空層がある場合には、さらに厚さに応じてきまる中空層の熱伝導抵抗を加えます。

湿気貫流抵抗は、単純に各材料の透湿抵抗の総和に、厚さに応じてきまる中空層の透湿抵抗を加えて求めます。内外表面の湿気伝達抵抗は無視しても構いません。

 

□4.計算条件(内部、外部の温湿度)の決定

次に、内部外部の温湿度状態を決定します。その地方の最低気温をとれば結露検討の上では安全です。

もともと北関東以南の地域を対象に考えているので、今回の検討では、計算条件は外気、−5℃、50%、内気、25℃、50%で統一しています。設定温湿度はあまり深い意味はないのですが、理科年表によると、冬日(日最低気温が0℃未満の日)が大阪、広島で約2週間、東京、横浜で、約3週間、名古屋で1.5ヶ月ですから、外気温0℃では物足りないし、過去最低気温は東京で−10℃位で、ちょっと過剰なので、中をとって−5℃としました。(東京でも八王子あたりでは、冬場はこの位まで下がります。)

ついでに設定した温湿度における飽和水蒸気圧を空気線図などで調べます。

□5.各層の温度状態を計算

次のようなモデルで、内部温度をti、外部温度をto、全体熱貫流抵抗をRt、室内側表面の熱伝達抵抗をRsi、外部側表面の熱伝達抵抗をRso、各部材の熱伝導抵抗をRiとすると、各層の温度分布は次のような式で計算できます。

内部

Rsi

R1 境界面1 R2 境界面2 R3 境界面3 R4 境界面4 R5

外部

Rso

θi   θ1   θ2   θ3   θ4   θ0

内部表面温度は   θsi=ti−(ti-to)×Rsi/Rt
境界面1温度は   θ1=ti−(ti-to)×(Rsi+R1)/Rt
境界面2温度は   θ2=ti−(ti-to)×(Rsi+R1+R2)/Rt
境界面n温度は   θn=ti−(ti-to)×(Rsi+ΣRn)/Rt

これは、内部から考えると、熱貫流抵抗に対する、各層の熱伝導抵抗の割合のに応じて、直線的に外部に向かって温度が低下していくことを意味します。

□6.当該温度での飽和水蒸気圧を調査

□5で求められた各層について、その温度における飽和水蒸気圧を空気線図で調べます。空気線図はネットでもダウンロードできると思います。

私の場合は、別途0.1℃ごとの飽和水蒸気圧の表をつくり、エクセルのvlook関数で参照するという方法を採りました(かなりマヌケな方法です。真似しないように)。Goff−Gratchの式とかいうものを使うと計算できるそうです。

 
□7.各層の実在水蒸気圧を計算

□5の温度の計算と全く同じ方法で、各層の水蒸気圧を計算することが出来ます。(湿度の場合は、表面の湿気伝達抵抗は無視して構いません。)
内部水蒸気圧をfi、外部水蒸気圧をfo、湿気貫流抵抗をRt、室内側表面の熱伝達抵抗をfsi、外部側表面の熱伝達抵抗をfso、各部材の透湿抵抗をRiとすると、各層の温度分布は次のような式で計算できます。

内部水蒸気圧は      fsi=fi−(fi-fo)×Rsi/Rt
境界面1水蒸気圧は   f1=ti−(fi-fo)×(Rsi+R1)/Rt
境界面2水蒸気圧は   f2=ti−(fi-fo)×(Rsi+R1+R2)/Rt
境界面n水蒸気圧は   fn=ti−(fi-fo)×(Rsi+ΣRn)/Rt

 

□8.飽和水蒸気圧と実在水蒸気圧を比較

最後に、□6で求めた飽和水蒸気圧と□7の実在水蒸気圧を比較します。
実在水蒸気圧/飽和水蒸気圧が1を越えれば過飽和になっている、すなわち結露が発生している事になります。

以上が結露計算の手順です。慣れてしまえば難しいことではありません。