15 ピタゴラス派のヌメニオスは[1]、ケルソスよりどれほど優れていることか。彼は多くの言葉で自分が極めて注目に値するものであることを示し、また多くの教えを検討して、それらの教えの中から真実であると思われるものを集めていた。彼は『善について』の第一巻で、神を非物体的なものと見なす考えを取る諸民族について語り、ユダヤ人をその諸民族の中に位置づけ、自分の著作の中に預言者の言葉をためらうことなく引用し、それらを象徴的に解釈することさえいとわない。またヘルミッポスも[2]、『立法者について』の第一巻で、ピタゴラスが自分の哲学をユダヤ人たちのもとからギリシア人たちのもとに導いたと書いたと言われている。さらに、歴史家ヘカタイオスに[3]『ユダヤ人について』という本が帰されているが、その書の中ではこの民族がはなはだしく知恵ある民族とたたえられていて、その結果、ヘレンニオス・フィロンなどは[4]、『ユダヤ人について』という著作の中で、先ずその『ユダヤ人について』という著作が本当にこの歴史家のものであるかどうかで戸惑い、次にもしそれがこの歴史家のものであるとすれば、彼はユダヤ人たちの説得力に捕われて、彼らの教えに同意したに違いないと言っているのである。



[1] Noumh,niojは、2世紀後半のシリアの哲学者で、ロゴスによって世界全体に真理の種子が蒔かれた、したがって神に関する真理は人間の思想において部分的に明らかにされているという点で、古代ユダヤ・キリスト教護教家と多くの共通点を持っている。なお、「プラトンは、アッティカ語を話すモーセ」であるという有名な言葉が彼に帰されている。

[2] {Hrmippojは、紀元前3~4のスミルナ出身のアリストテレス主義者。

[3] `Ekatai,ojは、アブデラまたはテオスの出身で、アレクサンドロス大王と同時代の人、ユダヤ人に対して好意的であった。

[4] `Ere,nnioj Fi,lwnは、フェニキアのビュブロス出身で、紀元後50~100頃生きた歴史家だが、詳細は不明。

 

次へ