14  「私はお前とともにいて、お前を必ず救い出す、と主は言われる。そして主はそのみ手を私に伸ばして、私の口に触れた。さらに主は、私に仰せになった[1]」とあります。あなたはここで、エレミアとイザヤの違いご注目ください。イザヤは次のように述べております。「私は、汚れた唇を持つ者。汚れた唇を持つ民のなかに住む。しかも私はこの両目で、万軍の主なる王を見た[2]」と述べております。そして彼は、汚れた行いはしていませんが、わずかに汚れた言葉を遣ったことがあると告白しましたので[3]    実際彼は、このときまで罪人でした    、「主はご自分の手を伸ばそうとは」なさいませんでした。しかしその代わりに「セラフィムの一人が、その手で彼の両唇に触れ、『見よ、私はあなたの諸々の罪を取り除いた』といました[4]」。これに対してこのエレミアは、「母(の胎にあるとき)から[5]」聖別されていたので、彼には「火鋏」や「いけにえの祭壇から取られた炭火[6]」が送られるようなことはありませんでした。たしかに彼には、火に値するようなものは何もなかったのです。それどころか彼には、主のおん手そのものが触れたのであります。

それゆえ彼は、こう言っております。「主はそのおん手を私に伸ばして、私の口に触れた。そして主は、私に仰せになった。『見よ、私は、お前の口に私の言葉を授けた。見よ、私は今日、お前を諸々の民と諸々の王国の上に立てた。根絶やすために』」と[7]」。このように、神によって授けられたみ言葉によって、悪魔が見せた多くの国々[8]、敵対する霊的存在者の国々、諸々の罪の王国を根絶やすことができるほど幸いな人は、一体誰でありましょうか。実際、こう言われているのであります。「見よ、私は、お前の口に私の言葉を授けた。見よ、私は今日、お前を諸々の民と諸々の王国の上に立てた。<根絶やすために>」と。しかし諸々の王国が存在するのと同じように、諸々の民も存在しております。たとえば、姦淫の国があるのと同じように、姦淫を働く諸々の民もおります。それも姦淫の一つひとつが、それぞれ一つの民となっています。貪欲と盗みは同類の罪ですから、それらは一つの国となります。また、多くの罪を持つ人たちのなかには多くの国が存在そます。そこで、罪人たちの各々について、一つの王国に服属する諸々の民が何を意味するか、どうかお考えになってください。次のようになるのではないでしょうか。すなわち、ある人は、姦淫の王国に服属するたくさんの民を持っていますし、またある人は、盗みの王国に服属するたくさんの民を持っています。またある人には、中傷の王国に服属するたくさんの民が、またある人には、怒りの王国に服属するたくさんの民がいる、と。そして「諸々の民と諸々の王国[9]」とに送り出された神のみ言葉の業は、「根絶やし、絶滅させる」ことでした。では、何を根絶やしにするのでありましょうか。救い主は次のように言って、教えておられます。すなわち、「私の天のおん父が植えなかった植物はみな、根絶やされる[10]」と言っております。諸々の魂の内部には、「天のおん父が植えなかった」ものが存在するのです。たしかに「悪い考えや、殺人、姦通、<姦淫>、盗み、偽証、 [11]」などはみな、天のおん父が植えた植物ではありません。もしもあなたが、これらの(悪い)考えは一体誰の植えたものなのかをお知りになりたければ、「敵対する人間がこれを行ったのだ[12]」、「麦のなかに毒麦を[13]」まいた者がこれを行ったのだという言葉をお聞きください。ですから、一方では、神が種を持ちながらそばに立ち、また他方では、悪魔もそうしていたのです。もしも私たちが「付け入る場所を悪魔に[14]」与えるなら、「敵対する者」は、「天のおん父が植えなかった植物」(の種)をまき、いずれその植物は「根絶やされる」のです。しかしこれに対してもしも私たちが、「付け入る場所を神に」与えるなら、神は喜んでご自分の種を、私たちの主導的能力[15]の上にまいてくださるでしょう。したがって、神がエレミアを、「諸々の民と諸々の王国を根絶やすために、それらの上に立てた」とき、エレミアは何かしら嫌な賜物を神から受け取ったと、あなたはお考えになってはなりません。神は、破廉恥な言動や天の国に敵対する諸々の王国そして神の民に戦いを挑む諸々の民を根絶やすみ言葉のゆえに、慈しみ深いおん方なのであります[16]



[1] Jr.1,8-9.

[2] Is.6,5.

[3] Cf.Hom.Lv.IX,7.

[4] Cf.Is.6,6-7.

[5] Jr.1,5.

[6] Cf.Is.6,6.

[7] Jr.1,9-10.

[8] Cf.Mt.4,8.

[9] Jr.1.10.

[10] Mt.15,13.

[11] Mt.15,19.

[12] Mt.13,28.

[13] Mt.13,25.

[14] Ep.4,27.

[15] h`gemoniko,nn:ストア派の概念で理性のことである。

[16] Cf.Hom.Ez.I,12.

 

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