解説

 

ここに訳出した『エレミア書講話』は、現存するオリゲネスの講話としてはその大半がギリシア語原文で伝わ、オリゲネスの唯一の作品である。その点で本講話は、ギリシア語を母国語とする説教者オリゲネスの真実の姿を、幾多のラテン語訳の講話にもまして、もっとも忠実に表している。この講話の内、二十個の講話がほぼ完全な形でギリシア語原文で残されている。またヒエロニムスのラテン語訳によってしか伝わっていない二つの講話、四世紀のナジアンゾスのグレゴリオスとカイサリアのバシレイオスが編集したオリゲネスの作品からの抜粋選集フィロカリアに二つのギリシア語断片が伝えられている。  

ヒエロニムスのラテン語訳は、あまり忠実なものであるとはいえないが、ギリシア語原文の概要を知る上で有益である。また原文に非常に忠実なフィロカリアに収録された二つの断片の内の一つは、「エレミア書についての第三十九講話の中で・・・[1]」と言うタイトルを冠しており、これによってオリゲネスの講話が少なくとも三十九個あったことが知られる。ヒエロニムスの訳とフィロカリアの断片は、相互の前後関係の綿密な比較、および注解されている聖書箇所の順番に基づいて、次のように配列される。第一講和〜第二十講和・フィロカリア断片T(無表題)・ヒエロニムスの二つの訳・フィロカリア断片U(第三十九講和)



[1] 本訳に断片Uとして収録。Cf.J.A.Robinson, The Philocalia of Origene, Cambridge, 1893, p.58; Klostermann, GCS 6, p.196, 16-18.

 

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