軽い気持ち |
※黒字部分はよっしー、緑部分は小池さん執筆部分です。 カカシさんは矛盾した人だ、と俺は思う。
あんなに偉いのに、異様に俺に気を使ってくれる。
疲れた、と言えば「肩を揉みましょうか?」なんて言うし、
風邪気味で、とうっかり言えばその十分後には「これ飲んで下さい」と息を切らして
封も切られてない風邪薬を差し出したりする。
そのくせ、俺には気を使うな、と言う。
ご迷惑をお掛けして、と頭を下げると物凄く嫌そうに掌を振る。
「やめて下さい。俺、イルカ先生に頭を下げて欲しいんじゃないんです。」
困ったようにボリボリと銀色の頭を掻いて、訴える。
「・・・気、使わないで下さい。もっと軽い気持ちで俺の事考えて下さい。」
殆ど毎日のように、そう言われる。
軽い気持ちでいてくれ、いてくれ、の大連発だ。
そのくせ、俺には目茶目茶気の使い倒しだ。昨日なんか、たった五分書類の提出時間を
延長して待っただけで、今度食事を奢らせて下さいときた。
何でそこまで、気を使うんだろう。
だからある日、考えた。
確かに、俺が気を使うから、あっちも気を使うのかもしれない。
カカシさんの言うとおり、気を使わなければいいのかもしれない。
もっと軽い気持ちで考えれば、いいのかもしれない。
「俺、カカシさんの事、軽い気持ちで考える事にしました」
にっこり笑ってそう伝えた。
「それでいいんですよね。軽くいきましょう!軽く!」
ははは、と笑って鼻の頭を掻いた。軽い態度の演出のつもりだったが、
カカシさんの反応は鈍かった。
「・・・・あー、そうですね・・・うん・・・軽く・・軽く・・・・」
「カカシさん?」
「・・・・・・・・。」
「?カカシさん・・・?どうしました?」
「イルカ先生。」
ふいに、カカシさんが真面目な声を出した。
「は、はい?」
「やっぱり嫌です。」
「は?」
「軽いのは嫌です。」
「え?」
「俺の事、軽く考えないで下さい。」
「はぁ?」
銀色の睫を悲しげに瞬かせて頭を垂れる。
「お願いです・・・・軽い気持ちなんて、言わないで下さい・・・・」
まるで俺が言い出した事のように、傷ついた眼で訴えてくるカカシさんに
呆気に取られて謝った。
「は、はぁ・・・す、すいません・・・ええと・・・も、もう軽い気持ちなんていいません。」
「良かった。」
カカシ先生が安心したようにニッコリ笑う。
カカシさんは矛盾した人だと、俺は思う。
「贅沢言ってもいいですか?」 笑った顔を少し紅潮させてカカシが限りなく遠慮がちに呟いた。 高圧的にされれば反発も楽なのだが、上忍である相手にこんな風に 不自然に下手に出られたら返って戸惑ってしまう。 「なんですか?」 聞けば、俯いて。 「ナルトみたいに……付き合うのは駄目ですか?」 道端で男二人、モジモジと話し合う。 周りから見たらさぞかし怪しいことだろうとか一瞬違う事を考えてしまった。 「は?」 カカシの顔が真っ赤になる。 普段顔色の変わらない人だと思っていたのに、目の前のカカシの顔は 面白いぐらい色が変わった。そんな所は確かにちょっとナルトに似ているとか 思ったが、多分そういう意味ではないだろう。 「あ、あの。ほら、だって、ナルトと話してる時イルカ先生敬語とか使わないし それに、呼び捨てだし、それに頭とか直ぐ撫ぜるでしょ?」 つまり何か? カカシの言葉のままに取ったらこうなる。俺はカカシ先生を呼び捨てにして タメ口をきいて、そして会う度に頭を撫ぜたり、たまに怒鳴りつけて その後、一楽に連れてったり、家に呼んで飯食わしたり、一緒に風呂入ったり? カカシの真意がサッパリわからない。 カカシはそれを悟ったのか、パッと顔をあげた。 「や、やっぱり、ナルトみたいは嫌です」 その後、消え入るような声でカカシは付け足したのだが、 それはイルカには届かなかった。 「それじゃ、特別じゃ、ないですもんね」 真っ赤になって俯いたままのカカシさんに、俺は内心物凄く混乱していた。
カカシさんは普段、驚くことあるんだろうか、と思うほど飄々と落ち着いた人なのだ。
それが、この動揺ぶり。この赤面ぶり。
いったい、何がここまでこの人を動揺させてしまったんだ。
それこそ脳みそを全部絞る勢いで、うんうんと考えた。
そして突然、ハッと気付いた。
これって、カカシさんの精一杯の冗談なんじゃないか!?
そうだ。そうに決まってる。
俺の態度があんまり固いから、何とか気を解そうとしてくれたんだ。
「ナルトみたいに付き合って下さいよー。」「やだなぁ、何言ってんですかハハハハ。」
みたいな雰囲気を狙ってたに違いない。
自分の迂闊さに頭を掻き毟りたくなった。
なのに俺ときたら、糞真面目に言葉の意味を考えたりして。何てノリの悪い奴なんだ。
だから駄目なんだよ。イルカは固いって皆に言われちゃうんだよ。
自分の鈍さがまじで情けない。
こんな優しい人の心遣いを、台無しにしたりして。
そりゃ顔も赤くなるよ。ギャグが滑ったときって悲しいもんな。恥ずかしいもんな。
俺だって授業中滑ると、滅茶苦茶恥ずかしいじゃないか。顔真っ赤にして、不必要に
声でかくするじゃないか。
カカシさんは逆に声が小さくなるタイプなんだろう。こんなに細やかな人だし。
きっと、内心すごく傷ついてるに違いない。
「そ、そうですか!ナルトみたいにですか!あー、ナルトみたいにね!!」
今更ながらカカシさんの冗談に乗ろうと、大声を上げた。
「やー、カカシさん勇気ありますね!俺は生徒にゃ厳しいですよー。」
驚いたように顔を上げるカカシさんに、あはは、と豪快に笑って見せる。
そしていきなり、うんと胸を張って腰に手を当てた。
「こら!!お前いっつも七班の集合に遅刻してるそうだな!おまけに修行中もエロ本を
手放さないそうじゃないか!」 目を丸くする銀髪の上忍に、内心心臓をバクバクさせながら怒鳴りつけた。
「先生はそんな悪い子になるような教育をした覚えはないぞ!それとも、もう一遍修行
やり直すか!?」
いい終わると同時に、間近にぐいと顔を近づける。そして、にっこりと笑いかけた。
「お前がいい子になるまで、先生がつきっきりでしごいてやろうか?ん?どうする?」
・・・・や、やりすぎたか・・・?
心中びっちり冷や汗をかきながら、カカシさんの様子を伺った。
ここでナルトならゲーとか言って舌を出すんだが。だ、駄目かな。やっぱ。
「・・・・なーんて、怒鳴られちゃいますよ?はははは・・・・っ」
乾いた笑いでその場を取り繕うとした。が、目の前の上忍は一向反応しようとしない。
突然ざっと全身から血の気が引いた。
もしかして、怒らせたか・・・・!?
自分のしでかした失敗の大きさに、愕然とした。
何考えてたんだ俺。そうだよな。仮にも上忍だぞ。やっていい事と悪い事があるよな。
たとえ冗談でも、あんな風に怒鳴りつけるなんて。瞬殺もんだよ。やばすぎる。
しどろもどろに何とか言い訳をしようとした。
「・・・・そ、その・・・い、今のはちよっとした冗・・・」
「本当ですか?」
突然、カカシさんが俺の言葉を遮った。
その顔を見て、今度こそ言葉を失った。
さっきとは比較にならないくらい頬が赤い。まるで茹蛸だ。
「あ、あの・・・?」
「・・・つきっきりって・・・イルカ先生が、俺につきっきり・・・つきっきりで・・・・」
ぶつぶつ呟いたかと思うと、窒息寸前の人間みたいに苦しげに息を吸い込む。
「そんな・・・そんな夢みたいな・・あの・・ほんと?・・・ほんとに・・?」
喘ぐように何度も尋ねてくる。思いもよらない反応に、呆気に取られて立ち尽くした。
カカシさんが真っ赤になったまま、興奮に輝く瞳でこっちをチラチラと見てくる。
嬉しさを隠し切れないように、忙しなく天を仰いだり地を見下ろしたりする。
その落ち着きの無さは、まさに押さえの聞かない子供そのままだ。
突然、脳裏に直感が走った。
俺の、教師としての感だった。何でこんな風に思うか分からない。でもきっとそうだ。
大きく溜息をついて、ウキウキと浮かれる銀髪の上忍を眺めた。
カカシさんは悪い子になってしまう。
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終 | |
(管理人)メールに添付したカカイル文に、小池さんが激萌続きを書いてくれたので、思わずその続きを図々しく 書いてしまいました。小池さんのサイトでは小池さんご自身が一部変更してupしてらっしゃいます。 当然そっちの方が文章の流れとしては自然なのですが、最初に小池さんのカカイル文を 読んだ時の萌えをそのままお届けしたい、という事で私はあえてそのままup。えへへ(蕩) |
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