Lie lie lie 1 |
こいつにだけは、馬鹿にされたくない。 誰にだって、そう思う相手がいるだろう。 こいつにだけは、弱みを見せたくない。無様な自分を晒したくない、と思う相手が。 俺にとって、それはあの男だ。 はたけカカシ。通称「写輪眼のカカシ」。千の技を持つと言われる、木の葉きっての凄腕。 きっかけは、中忍試験だった。 ナルトが下忍になってわずか三ヶ月。七班担当のカカシ先生はナルト達を中忍試験に推薦した。 それを知った時は、ひっくり返りそうになった。 ナルトはアカデミー卒業時、チャクラのコントロールすら満足に出来なかったのだ。 そんなあいつが、どうして死者まで出かねない厳しい試験を乗り越えられるか。自殺行為だ。 まだ早過ぎます、と必死でカカシ上忍に詰め寄った。 そんな俺に、銀髪の上忍が吐いた一言は信じられないものだった。 「潰してみるのも一興」 聞いた瞬間、怒りで我を忘れた。相手が誰かということも忘れて食ってかかった。 が、結果は惨めなものだった。 俺は公衆の面前で激しく叱責された。もうナルトは俺の生徒では無い、自分の部下だと大喝された。 そう言われてしまえば、返す言葉も無い。引き下がるしかなかった。 そもそも上忍に対して中忍が意見する事など、常識では考えられない程の不敬なのだ。 これ以上進言すれば、首を吹っ飛ばされてもおかしくない。 言いたい事を言い終えたカカシが、何事も無かった様に平然と去っていく。 その後姿を睨みつけながら、血が滲むほど強く唇を噛み締めた。 当然ながら、俺ははたけカカシが大嫌いになった。 それまでは、むしろ好意を抱いていた。腹に九尾を封じた子供を快く引き受けてくれたカカシ先生を、 なんて懐の深い人だろうと思ってた。そんな人と、ナルトを通じて知り合いになれて嬉しかった。 まあ、知り合いと言っても、一介の中忍がそうそう気軽に話し掛けられるような相手じゃなかったし、 あっちも誰彼構わず話し掛けるタイプの男じゃ無かった。 実際に言葉を交わしたのは、ほんの数回しかない。 それでも、その僅かな会話に胸を弾ませていた。自分達は同じくナルトの成長を願う者なのだと、 勝手に連帯感を抱いていた。 しかし、それは馬鹿な思い込みだった。 あの男はそんな男じゃなかった。ナルトの命を一時の余興扱いにするような、冷酷な男だった。 それからはカカシとすれ違うたびに、怒気も露にギリギリと睨み付けた。そんな俺を、銀髪の上忍が ちらりと興味無さげに一瞥して通り過ぎる。俺の怒りなど、どこ吹く風、という風情だった。 その余裕に満ちた態度が、悔しくて堪らなかった。 こんな雑魚、まともに相手する必要無いね。 そう呟く声が聞こえてきそうだった。それが事実なだけに、いっそう悔しかった。 確かに、あの男が本気になれば、俺なんか瞬殺されて終わりだろう。あの憎らしい余裕っぷりは、 このかけ離れた実力差から来ているのだ。そう思うと、自分の力不足が心底情けなかった。 だから、決意した。 あいつと、対等になってやる。 何もかも、俺の力不足が原因なのだ。 俺がカカシと同じくらい力があったら。いや、せめてあの男と同じ上忍だったら。 そうしたら、あんなふざけた暴言は許さずにすんだ。あの場で思い切りぶん殴ってやれた。 いや、むしろ俺がナルト達の上官になれた。あんな酷い男の下につかせずに済んだ。 闘志に身震いしながら思った。 頑張ろう。頑張って、あの男と対等になろう。そして、ナルト達を助けよう。 カカシの手から、ナルト達を救い出してやろう。それが、これからの俺の目標だ。 見てろよ!はたけカカシ! 燃えるような情熱と共に、俺は決意の拳を固く握り締めた。 そんな俺の決意を一層固くしたのが、周囲の反応だった。 あの一件は、あっと言う間に忍達の間に広まった。 厳然とした階級社会に生きる忍にとって、上下関係は重要なものだ。それを丸きり無視した俺に、 他の上忍達の目が温かい訳がなかった。頻繁に呼び出されては悪し様に罵られ、根性を叩き直してやる、 と意味もなく殴られたりした。以前と態度が変わらなかったのは、ガイ先生やアスマ先生らの、ほんの 一部の上忍だけだった。 特に、くの一上忍達の反応は強烈だった。 どうやら、「写輪眼のカカシ」は物凄く女にもてる男のようだった。 俺はたちまち、格好の点数稼ぎの対象となった。銀髪の上忍が受付所に現れると、すかさず女達が 寄っていって、甘ったるい声で声高に尋ねる。 「ねーえ?あれ?中忍のくせに、カカシに食って掛かったのってー?」 馬鹿な奴ねえ、と氷のような冷たい視線を俺に投げつけたかと思うと、媚まくった笑顔でうっとりと カカシを見上げる。 その姿を見る度に、腸が煮え繰り返った。 いい気なもんだ。こっちは野郎に殴られてるってのに、こいつは女に囲まれてちやほやされてる。 まだジンジンと痛む頬を摩りながら、改めて決意した。 畜生。こんな逆境に負けてたまるか。絶対に、いつかこいつらを見返してやる。 今日もそんな女達を押しのけて、カカシが飄々とした足取りで前に進み出る。 何時も通り、中忍風情の怒りなど歯牙にもかけない、とでも言いたげな平然とした態度だった。 「・・・結構です。ご苦労様でした。はい次の方どうぞ!」 俺の方も何時も通り、目も合わせずに書類を箱に投げ入れる。と、突然、カカシが「あ」と呟いた。 「名前、書き忘れてた。」 ひょいと報告書を取り返して、ごそごそと署名し始める。思わず顔が赤くなった。 しまった。見過ごしてた。この男を早く追い払いたい一心で、きちんと確認してなかった。 「・・・・申し訳ありませんでした。」 仕方なく、ペコリと頭を下げて謝った。するとカカシがふぅ、と小さな溜息をついた。 「・・・・しっかりして下さいよイルカ先生。やっつけ仕事じゃ、困りますよ?」 !!!!この野郎――――――――――――――!!! 机の下でぶるぶると拳を握り締めた。 やっつけ仕事!やっつけ仕事ときたか!!お前が俺にソレを言うか!! 部下を面白半分に死地に追いやるような真似してるくせに!そのくせ自分は遅刻ばっかのくせに!! 俺はナルトに聞いて知ってんだぞ寝坊野郎!てめぇの方がよっぽどやっつけ仕事だろが!! 「・・・逆切れしてる暇があったら、ちゃんと仕事して下さいよ。俺の書類だからって手ぇ抜かないで。」 俺の心を見透かしたようにカカシが言い放つ。血管がぶち切れそうになった。 ち、ちくしょう。こいつ、実は俺の態度に相当むかついてやがったな。ここぞとばかりに嫌味言い やがって。何て陰険な奴だ。 「・・・・・大変失礼しました。以後気をつけます。」 何とか自分を律し、深く頭を下げて謝罪した。カカシが嵩にかかって、更に何か喋ろうとする。 その時、くの一の一人が聞こえよがしに割り込んできた。 「そうそう。仕事も出来ない中忍が、上忍に大きな口叩くなんて百年早いんじゃなーい?」 言い終ると同時に、ねぇカカシぃ、とまたべったり擦り寄っていく。周囲の上忍達が満足そうに頷く。 机をぶん廻して、全員一気に薙ぎ倒してやりたくなった。 悔しさのあまり憤死しそうになりながら、心中深く頷いた。 そうか。よく分かった。こいつの前で失敗すると、こうなるんだな。 ギリギリと奥歯を噛み締めつつ、強く決意した。 もう絶対に、この男に弱みを見せまい。決して、こいつの前で失敗はすまい。 それなのに。 重苦しい沈黙の中、全身だらだら冷や汗を流しながら目の前の男を眺めた。 何か言おうにも、言葉が全く思いつかない。 青ざめた顔で唇をパクパクと震わせる俺に、男が溜息をついて立ち上がる。 「・・・・とりあえず風呂借して下さい。話はまた後で。」 一息に言い捨てて、さっさと部屋を出て行く。その姿が見えなくなった途端、どっと布団の上に 倒れ込んだ。頭を滅茶苦茶に掻き毟って、無意味に天井を見上げる。 どうしよう。一体、どうしたらいいんだ。どうして、こんな事をしてしまったんだ。 はたけカカシと、セックスしてしまうなんて。 初歩的なミスだった。 夜の闇の中で行われた戦闘。息絶えた敵方のくの一。状態を確認しようと、一歩前に踏み出した。 その瞬間、紫色の唇から俺の眼球目掛けて銀色の針が飛び出してきた。 しまった、と思った時はもう遅かった。咄嗟に目元を覆った掌に、鋭い痛みが走る。握り締めた小刀で 完全に息の根を止めながら、自分の迂闊さに舌打ちをした。 死体に正面から近づくなんて、下忍並の凡ミスだ。うっかりするにも程がある。 抜いた針から微かに漂う濃密な花の匂いに、溜息をついて顔を顰めた。 なるほど。いかにもくの一らしい。 ギリ、と奥歯を強く噛んで身体を翻した。早く里に戻らねば。 この身が、幻覚に完全に踊らされる前に。 男と比して体力に劣るくの一が、最も得手とする術。それが幻術だ。 大半は性の欲望を掻き立てるものだ。男の身体に熱と渇望を与えて誘い込み、首を掻き切る。 あの銀の針には、その為の薬剤がたっぷりと含まれていたに違いない。 一時もすれば淫らな幻覚が身体を蝕み、堰きとめられた欲望の為にのたうち回る事になるだろう。 飛ぶように木々の間を駆けながら、今更ながら自分の間抜さを呪った。 里に着いた時には、既に薬が回り初めていた。 絶えず何かに撫で回されてるような、淫靡な刺激が身体中を這う。じんじんと下半身を苛む激しい熱に、 無意識に手が下腹部に伸びる。寸前でハッとその手を止めた。 ・・・くそ・・・! 悪態を付きながら、壁に片手をついて寄りかかった。膝に力が入らない。容赦なく霞んでいく脳に、 僅かに残された理性が歯軋りする。 畜生。きっと、今度はこの手を止められない。狂ったように自慰に耽る姿を、街中で晒してしまう。 そうなれば俺の人生はもうお終いだ。今まで築き上げた、何もかもを失ってしまう。 教職を解かれ、忍社会から追放され、世間から白い目で見られ・・・。 その時突然、大きな手が俺の腕をぐいと掴んだ。 「どうしたんです?気分でも悪いんですか?」 銀色の髪が、歪む視界にキラキラと広がる。 「・・・・顔、真っ赤ですよ。酔ってるんですか?立てる?」 カカシが低い声で問い掛けてくる。返事も返さず、ただ荒い呼吸を繰り返した。 実際、口が利けるような状態じゃなかった。そんな俺に、カカシが一瞬沈黙する。そして、僅かに 躊躇いの混じる声で囁いてきた。 「・・・・・家まで、送ろうか?」 その時の安堵感は、口では言い表せない。 震える顎で何度も頷き、支える腕に縋り付いた。長い腕ががっちりと俺を抱きとめる。 力強い足取りが、迷いなく前方に進んでいく。必死に保っていた緊張の糸が、ふつりと切れた。 そこから家に着くまでは、一切の記憶がない。 気が付くと、乱雑に敷かれた布団で裸で絡み合っていた。 助けて、と息も絶え絶えに繰り返し訴える俺を、逞しい腕がきつく抱きしめる。薄い唇で首筋を 強く吸い上げられる度に、薬に溺れた身体は過敏な反応を示した。 「・・・・あ・・・っああ・・・・や・・!」 張り詰めた先端から、ひっきりなしに汁が零れる。ぬらぬらと滑る先端が、カカシの滑らかな腹に 擦り付く度に、あられもない喘ぎ声が喉から漏れた。堪らず全身で抱きついて腰を揺らした。 「・っ・・ん・・・・・あぁ・・・っ」 根元まで濡れそぼる竿に、カカシが手を伸ばす。二つの袋をねっとりと淫猥に弄びながら、 長い指で俺の中に進入を繰り返す。その指がある一点を掠める度、頭の中が真っ白になった。 考えられない場所で得る快感に、脳がどろどろに溶かされていくような気がした。 「・・・!や・・・そこ・・・や・・・!!あ・・・!!だめ・・ああっ!!」 白い液体がまた飛び散る。背中をしならせて強く仰け反った。その途端、熱く濡れる舌が胸の突起を ねぶるように舐め上げていく。悲鳴のような喘ぎ声が喉から洩れた。その声を吸い取るように、 深いキスが目茶目茶に俺の口腔を犯していく。 「!あ・・・あ・・・!!んんっ・・・ぁ!!!」 熱く疼く下腹部に、カカシのモノがずぶずぶと埋まっていく。さっきの一点を、引っ掻くように 抜き差しされる。あまりの快感に涙がボロボロと零れた。 「!!は・・・っ・・・あ・・・!も・・・っと・・!や・・もっと・・奥・・・あ!!」 淫乱な女のように、啜り泣いて強請った。それに応えるように、カカシが強く腰を打ち付ける。 その眼の眩むような快感に、ただひたすらに溺れていった。 |
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