Lie lie lie 3



鍋に入ったままの素ラーメンを片付け、カカシを部屋の中に入れた。
「・・・・何のお話でしょうか。」
恐る恐る尋ねると、カカシはぐっと銀色の眉を顰めた。
「・・・昨日初めて気づいたんです。言ってなかったって。あなたに好きだって告白された時、俺がどう
思ったのか。」
ギクリと身体が強張った。うわ。そうきたか。別れた途端尋問開始か。切り替え早いな写輪眼のカカシ。
激しい追及と罵詈雑言を覚悟して身構える俺の前で、カカシがすっと静かに口布を外す。
深々と息を吸い、うっとりと呟く。


「夢みたいだって・・・」


引き締まった白い頬がみるみる薄桃色に染まっていく。
「ずっと嫌われてると思ってて・・・俺のこと凄い眼で睨むし、受付でも俺にだけは絶対笑ってくれな
かったし・・・」
銀色の頭をガリガリと掻き、訥々と話し出す。
「・・・中忍試験の時のアレ、ほんとはちょっとした冗談言ったつもりだったんです。・・・・けど、先生すごく
怒っちゃったでしょ?だから慌てて、そんなに心配しなくてもいい、って説明したつもりだったんですけど・・・
でも益々怒らせちゃって。・・・よく言われるんです。言い方考えろって。」
はは、と寂しげな笑顔で俯く。
「俺、ガキの頃からずっと戦場ばっかで・・・敵を挑発するのは上手いんですけど・・・普通の、自然な会話
のし方っての、分かんなくて。馬鹿にしてんのか、ってよくアスマとかにも怒られるんですよね。」
落ち込む犬のように、しゅんと銀色の眉毛を下げる。
「・・・受付でやっと先生と話すチャンスがあって、「俺の失言もこれで相殺してくださいね」って頼もう
としたら、いきなり変な女に邪魔されるわ、見たらイルカ先生は鬼みたいな形相になってるわで・・・
それで、またやっちゃったんだなって判ったんですが・・・。」
小さく苦笑して、俺の手をちらりと眺める。
「・・・あの時、イルカ先生薬打たれてましたよね。大方敵方のくの一あたりに口針刺されたんだろうって、
直ぐ判りました。手の甲が真っ赤になってたしね。ああこれ油断して正面から吹かれたなって。」
俺が隠したかった最大の秘密をあっさりと暴露し、銀髪の上忍が淡々と続ける。
「楽にしてあげましょうか、って聞いたら先生が抱きついてきて・・・・・卑怯だって分かってたけど、
それでもどうしてもイルカ先生を抱きたくて。・・・翌朝罵られるのは、覚悟してました。でも、どうせ
嫌われてるなら同じだと思ったんです。」
そうしたら、と恍惚とした声でカカシが唇を震わせる。
「そしたら、あなたが俺を好きだって・・・・」

「・・・夢見てるんじゃないかと思いました。俺、都合のいい夢見てるのかなって。罵られるどころか、
好きだった、なんて言って貰えるなんて・・・・。」
うっとり言ったかと思うと、突然、また悲しげに銀色の眉を下げてうな垂れる。
「すみませんでした。変な態度とって。また失言するのが怖かったんです。せっかく好きだって言って
貰えたのに、また嫌われたくなくて。・・・でも、そのせいで、イルカ先生が俺と別れたいとまで思い
つめてたなんて・・・・」
端正な顔を思い切ったようにパッと上げ、真摯な瞳で俺を見つめる。
「ごめんなさい。これからは自分の気持ちをちゃんと言います。とりあえず、ここから聞いて下さい。」
呆然と見詰める俺の前で、真っ赤な顔のカカシが唇を開く。


「あなたが好きです。ずっとあなたが好きでした。これからも、俺とずっと付き合ってください。」


誰かこれは夢だと言ってくれ。


切に思った。この純情な告白。このひたむきな瞳。何故だ。何故今になってそんな健気な告白を。
絶句する俺に、カカシが戸惑ったように銀色の睫を不安げに瞬かせる。
「・・・・あの・・・もう遅い・・・?もう、俺のこと嫌いですか・・・・?」
うっと喉が詰まった。良心直撃だ。罪悪感という名の鞭が、俺の良心をビシビシ打ち据える音が聞こえ
てきそうだ。
ここで「いや。俺は元々男と付き合うのなんかご免だったんです。最初から別れたかったんです。
ていうか、最初から全部嘘だったんです。」なんて正直に言ったらどうなるか。
そんな極悪非道な真似、出来るわけない。少なくとも今は駄目だ。この健気な告白の直後に、そんな
酷い事言うなんて俺には絶対出来ない。頬を引きつらせながら首を振った。

「い、いえ・・・・き、嫌いなんて・・」
「嫌いじゃないですか!?」
カカシがパッと明るい顔になる。いそいそと籠を引き寄せて、はにかんだように笑う。
「えっと・・・俺いつもご馳走になってばっかデショ?これ、良かったら使って?ほんとはもっと早く
持ってきたかったんだけど、イルカ先生台所に入られたくなかったみたいだから。余計な事しちゃ駄目
かなって。」
言われて思い出した。そうだ。俺が言ったんだ。台所に入ろうとしたカカシに、「いいから座っていて
下さい」って。だからいつもボーッと茶の間に座ってたのか。あの一言を律儀に守ってたのか。
「あ、ありがとうございます・・・」
「いーえ。どういたしまして。」
カカシが嬉しげに眼を細める。
「あー。安心したらお腹空いた。俺にも素ラーメンでいいから作って貰えますか。」
そう言ってニコニコと笑った男が、突然ハッと真顔になる。
「いや!別に嫌味じゃないです!イルカ先生が作ってくれるものなら、何でも俺にはご馳走だから!
たとえ素ラーメンでも・・・あ!違うんです。素ラーメンが嫌なんじゃなくて・・・!」
子供のように必死で訴えるカカシに、気分がずんずん落ち込んでくる。
「・・・・・大丈夫です。判ってます。気にしてません・・・・」
ははは、と何とか笑顔を作って笑いかけた。カカシが心底安心としたようにホッと息をつく。
その無邪気な仕草に、益々気分が沈みこんだ。極悪人気分満喫だ。罪もない子供をだまくらかす悪人
みたいな心境だ。
「折角だから、この野菜入れましょうか・・・・」
「はい!お願いします!」
いいお返事で素直に頷く銀髪の上忍に泣きそうになりつつ、俺は悄然と籠を漁り出した。


もうどうしたらいいか分からん。
アカデミーの机につっぷしながら思った。胃が痛い。受付に行きたくない。家に帰りたくない。
毎日が針のむしろだ。
あれから毎日毎日、カカシが俺の良心をグッサグサ刺していくのだ。

カカシは本当に「普通の会話」というのをした事がなかったのだと言う。
会話は常に、敵の隙をつく手段だった。
相手の平常心を乱し、逆上させて隙を作る。動揺と怒りを誘い、情報を漏らさせる。
五歳で忍となり、暗部に入り、常に第一線に身を置いてきた男には、それが「会話」だった。

戦地ではそれで良かった。
が、暗部を退き里に戻ると、その能力が空回りしだした。
気が付いたら相手がカンカン、という事もしばしばだったらしい。それで、やっと自分の言葉は相手を
無駄に怒らせるらしいと気付いた。が、今更どうにもならない。相手を逆上させる話し方は、既に
自分の一部となってしっかりと組み込まれている。
繰り返す言い争いに嫌気が差して、次第に無口になっていった。そんな消極的な事をするものだから、
益々会話下手になっていく。しまいには、見た目よりはるかに面倒見のいいアスマ先生や、会話の本質
しか気にしないガイ先生くらいとしか、仕事以外では話さなくなってしまったのだという。

だからイルカ先生にも中々話し掛けられなくって、とカカシが薄く頬を染める。
「ずっと、「受付にいる真面目で優しそうな中忍」が大好きで・・・付き合うなんて贅沢言わないから、
せめて仲良くなれたらって・・・でも俺、男は特に怒らせがちだったから。女はね、なんか勝手に機嫌
直してる時が多いんですけど。」
あの素顔見りゃな、と思いながら頷いた。
「そしたら、偶然ナルトを通して知り合う事が出来て。それで一回ナルトを誉めたら、先生すごく嬉し
そうに笑ってくれたじゃないですか。あれでほんと舞い上がっちゃって。俺、上手くやったなあって。
上手に会話できたなぁって。もしかしたら、これでほんとに仲良くなれるかもって。・・・気が緩んじゃ
ったんですね。つい、いつもの調子で「冗談」言ったら・・・。」
銀色の睫を切なげに伏せて、自嘲するように笑う。
「嫌われた、って判ったんだけど・・・言い訳なんかしたら、益々こじらせちゃいそうな気がして。
・・・平気な振りしてたけど、かなりキツかったです。」
黙りこくる俺の手を取って、長い指で愛しげに握り締める。
「・・でも、一人で悩んでないで話し掛ければ良かった。俺、勿体無いことしたなあ。あんなに長いこと
悩んで。馬鹿みたいだ。イルカ先生、俺が好きだったのに。」
握り締めた手を大事そうに引き寄せる。そっと、俺の肩に銀色の頭を持たせかかる。
そうやって顔を伏せたまま、恥ずかしそうな声で小さく囁く。

「・・・・ありがとう。凄く嬉しいです。俺のこと、好きになってくれて。」

・・・思い返すだけで胃が千切れそうだ。毎日良心の限界を試されてる気がする。
毎日今日こそは別れ話をしようと決意して、毎日言い出せない。
毎回別れを切り出す前に、こんな風に回想を交えた切ない恋情を訴えられてしまうのだ。
しかもその回想談がまた、全部いちいち可哀想だ。
五歳にして人殺しと罵られただの、大事な人は皆死んでしまっただの、今までは里を守るって言っても、
ほんとは慰霊碑守ってるようなもんだっただの。
それを何でも無い事のように淡々と語るのがまた、一層哀れさを掻き立てる。そして、最後に必ず
こう言うのだ。

「でも、今はイルカ先生がいるから。」

そう言って幸せそうに微笑む。なまじ繊細に整った顔なので、その笑顔は硝子細工のように儚げだ。
その度、極限まで膨れた罪悪感に窒息死しそうになる。まるで新手の拷問だ。
嘘はいかんぞ。因果応報と言って、必ず報いが自分に返ってくる、と幼い頃諭してくれた三代目の
言葉が、今くらい骨身に染みる事は無い。

あの時俺が嘘をつかなければ、こんな事にはならなかったのだ。
見栄を張らずに、正直にミスった事を白状していれば、こんな罪悪感は感じずにすんだ。
俺は男と付き合う趣味はありません。今回の事は単なる過失でした。
ちゃんとそう言えば良かったのだ。
そうすれば、この純情な男をぬか喜びさせずに済んだ。その罪悪感に、苛まれずに済んだのだ。

しかも、カカシがここまで切々と訴えてくるのは、俺が「辛い」と言ったからだ。
自分を嫌いなんだろう。だから何も言ってくれないんだろう。それが辛いから別れよう。
そんな事を俺が言ったもんだから、この男は一生懸命説明してくれてるのだ。
そんな事はない。どんなに自分があなたを好きか。どんなにあなたと話したかったか。
それを毎日毎日、精一杯説明してるのだ。会話下手なのに。
俺に辛い思いをさせまいと、必死で頑張ってくれているのだ。

こんな拷問が他にあるだろうか。
自分の吐いた嘘が、全て報いとなって俺の心臓を刺していく。このままだと、絶対胃に穴が空く。
俺も忍のはしくれだ。汚い仕事も一通りやった。しかし、ここまで最低な気分になった事は無い。
ここまで自分を最低の人間だと思った事はかつて無い。

家に帰ると、早速カカシが待ち構えてて口を開く。
「遅かったですね。あんま待たされるのも退屈だし、食いたいか食いたくないか判んないけど、一応
飯作っときましたよ。」
茶の間に蹲ったまま、聞き様によってはかなりムカツク台詞を吐いてくる。
こういう言い方が人を怒らせるんだろうなあと思った。しかも口調が淡々としてるし。正直、嫌味に
しか聞こえない。
だけど俺にはもう、この口調の背後でぶんぶん振られてる尻尾が見えてしまうのだ。
あなたが遅いから寂しかった。食べてくれたら嬉しいと思って飯を作った。でも無理しないで欲しい。
食べたくないなら、気にせず残してほしい。
多分、そう言いたいのだ。
「・・・いえ。食います。ありがとうこざいます。助かりました。」
ペコリと頭を下げて礼を言うと、カカシがぱぁーっと花のように嬉しげに微笑む。やっぱりそうか。
台所に入ると、そこにあったのは案の定「一応」なんて食事じゃなかった。
美味そうな煮魚や、野菜の煮付け。彩り良く盛られたサラダ。湯気の立つ味噌汁とご飯。
洗い場の隅にこっそり置かれた料理本(俺の母親の物だ)が、一層「頑張りました」感を盛り上げる。
「・・・わー美味そうですね・・・・。」
泣きそうになるのを堪えながら、無理やり笑顔を浮かべた。カカシが照れたように頭を掻く。
「・・・じゃ!食いましょうかイルカ先生。俺も腹ペコペコです。」

「え?カカシさん、食ってないんですか?」
驚いて尋ねた。
「はあ。」
早速飯をよそりながら、カカシが頷く。
「俺が帰るの、待ってたんですか?」
「・・・はあ。まあ。」
茫洋と返答するカカシを呆れて見やった。
何時だと思ってるんだ。こんな美味げな飯目の前にして、ずっと空きっ腹抱えてたなんて。
久々にカカシに対して怒りを覚えた。健気過ぎるのも、ここまでくると返って嫌味だ。
実は家に帰りたくなくて、必要以上に残業してた罪悪感が余計にその怒りを増大させる。強い口調で
カカシに詰め寄った。
「なんでそんな事するんですか!俺の事なんか気にせずに、先に食べてて下さいよ!」
俺の言葉に、カカシが垂れた目尻を困ったように瞬かせる。
「あ・・・いや、気にしてるって言うか・・・」
「何ですか?」
間髪いれず尋ねた。これを機に、この手の健気な真似は止めて貰おうと思った。
でなければ俺の身体が持たない。カカシが叱られた子供のように悲しげに俯く。

「・・・・飯、食う気がしなくて。・・その・・イルカ先生がいないと・・・なんか寂しくて・・・食欲が全然・・・」

・・・・もう駄目だ。俺の死因は胃潰瘍決定だ。
「・・・・・怒鳴ってすみません・・・遅れて申し訳ありませんでした。飯、早く食いましょう・・・」
「うん。」
カカシが嬉しそうに笑う。胃がギリギリと痛んだ。駄目だ。今日も別れ話は出来ない。この状態で
そんな話切り出せば、カカシじゃなくて俺が死ぬ。胃が捻じ切れる。そして地獄に一直線だ。
「・・・ごはん、美味いです・・・」
「そうですか?ならいーけど。ま、腹にはいりゃ何でも一緒ですけどね。」
誉めて貰って嬉しい。でも照れちゃうから、そんな誉めなくてもいいです。
絶対そう言いたいんだろうカカシの赤い顔をみながら、涙がちょちょ切れる思いだった。

飯を食って暫くすると、胃痛の最大の原因がやってくる。
つまりあれだ。セックスのお誘いだ。
本当にどうしたらいいか分からない。俺はもうカカシと絶対にセックスしたくないのだ。

勿論、もう男としたくない、というのもある。しかし、それだけじゃない。
一番の原因は、それがカカシへの最も手酷い裏切りだからだ。

カカシが俺を愛してないなら、いいのだ。
それならこれは、単なる自慰の延長だ。俺の協力を得て行う、生理現象の解消に過ぎない。
だけど、違うのだ。
カカシのセックスは、そういう割り切ったセックスじゃないのだ。
つがいの鳥が睦みあうような。貞淑な獣が互いにぴったり寄り添うような。
そんな深い愛情に満ちたセックスを、カカシは俺としてると信じてるのだ。
その信頼を、俺は裏切ってるのだ。

「・・・ね、今日はできそう?身体の具合、良くなりました?」
風呂から上半身裸で出てきたカカシが、背後から俺の身体をぎゅっと抱きしめる。そう。俺はずっと
「体調が悪い」を理由にセックスを断ってるのだ。
「・・・・駄目です。できません。」
「・・・・・どうして?まだ、体調悪い?」
心配そうに首を傾げたかと思うと、ちょっと不満そうな口ぶりで尋ねて来る。
「でも、今日の昼アカデミー通りかかったら、イルカ先生、元気いっぱいで子供に体術教えてたよ?
あれくらい動けるなら、もう大丈夫じゃないですか?」
「う・・・・」
口篭もる俺に、カカシが頬にチュッと軽くキスをする。
「ねえ・・・じゃ、触るだけ。ね?」
甘えた声で言うが早いが、すかさず俺の胸元に手を差し入れる。首筋をぞろりと舐め上げながら、
潰すように乳首をこねる。久しぶりの感覚に、ぶるりと身体が震えた。
「・・・・ふ・・・・」
思わず漏れた吐息に、慌てて後ろを振り返った。「駄目です」ともう一度厳しくカカシに断ろうとした。
が、その瞬間、カカシが俺の下半身に手を入れ、竿の付け根をやわらかに揉みだした。

背筋に電流のような快感が走った。
振り返った姿勢のまま、喉元がビクビクと反り返る。叱責の言葉が、甘い喘ぎ声に掻き消されていく。
「・・だめ・・・っ・・や・・・ぁ!」
目の前で頼りなく震える唇を、カカシが自分の唇で塞ぐ。そのまま深く強く舌を絡めてくる。その間も、
下を弄る手は一向止めようとしない。みるみる竿が硬く張り詰め、先端から汁まで零れ出した。
「・・・く・・・っ・・・・」
快感に霞む頭を必死に振った。駄目だ。流されるな。カカシの為を思うなら、こんな事を許すべき
じゃない。
「駄目です!こんなことしたら、だめ・・・・・!ん!!」
突然中に進入してきた指に、はっと息を飲んだ。円を描くように進む二本の指が、俺のポイントを
ゆっくりと擦る。強烈な射精感に、頭の中が白くなった。
「や・・・・やめ・・・あ・・・・ああ・・・・や・・・!」
身を捩ってカカシの首筋に顔を擦り付けた。カカシが堪らなくなったように、俺の下着を毟り取る。
「好き。入れさせて。先生のここに、入れさせて。」
熱に浮かされたように言うと共に、既に固く立ち上がったモノを俺の秘部にぴったりと押し当てる。
「お願い。ここでいかせて。ここがいい。ここじゃなきゃ嫌だ。」
聞き分けの無い子供のように強請りながら、熱く濡れる指で入り口を嬲る。同時に、先走りに濡れる
俺の竿を片方の掌で強く扱きあげる。
「や・・・・め・・・・あ・・や、・・・・やめ・・・っ・・ああああ・・・!」
快楽の涙が眼から流れる。止めたい。止めさせたい。止めさせなきゃ駄目だ。
それなのに、俺の喉から漏れるのは、まるで誘っているような喘ぎ声だ。
「あっ・・あっ・・・・・も・・・っ・・・・・・熱・・・っ」
「うん。熱いでしょ。もうドロドロだもんね。」
言うと同時に俺の腰に腕を回してぐいと高く持ち上げる。そしてずぶずぶと自分を俺の中に収めてくる。
その棒が、さっき指で嬲った一点をえぐるように刺激してくる。喉からああ、と爛れた声が洩れた。
「・・・・・好き・・・・好きです・・・・すき・・・」
激しく腰を打ちつけながら、掠れた声でカカシが繰り返す。シーツにつっぷしたまま、声も出せず
首を仰け反らせた。抜き差しされるカカシの欲望に、俺の内部が熱く絡みつく。その淫らな熱に、
銀色の男が、いい、と快感に喉を震わせて喘ぐ。その声に一層身体が煽られる。
「・・・っ・・イルカせんせ・・・っ」
「・・・ぁ・・・やっ・・・カカシさ・・・っ・・・あ・・・!!」
殆ど同時の放出だった。開放の衝撃に沈み込む俺の背に、カカシがゆっくりと落ちてくる。
お互いの呼吸が静まった頃、カカシがうっとりと耳元で囁いた。
「・・・・・初めて、イルカ先生と一緒にいけた・・・・・凄く、嬉しいです・・・・・・」


最低だ。
俺は木の葉史上最低の意志薄弱男だ。
すやすや眠るカカシを横に、布団に両手をついて自分のだらしなさを呪った。
何であそこで流されるか。ああいう時こそ、ビシッと拒否しなきゃ駄目だろうが。
それをイチャパラの淫乱女みたいに喘ぎまくって。カカシを喜ばせて。究極の馬鹿だろ俺。

本気で良くない。
このままでは、別れた時のカカシのショックを深くするいっぽうだ。そして俺も胃潰瘍で死ぬ。
心を鬼にして、明日絶対に別れを告げるべきだ。それがお互いの為だ。
これ以上、カカシを騙すのはもう耐えられない。




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