夏恋


滅多に音を立てる事なんてない郵便受に一通の手紙が入っていた。
それが、全ての始まり。


白い殺風景なこれといった特徴のない、それこそ何処にでもある縦長の封筒。
表書きはボールペン。几帳面な字ではあるが、別段綺麗と言う程でもなかった。
でも、どこかで見た事がある、そんな気がする字なのだが思い出せはしなかった。


封筒の中身には白い便箋が二枚。
一枚は白紙の紙で、もう一枚にびっしりと表書きと同じ几帳面な字が並ぶ。
読んで見ようと思ったのは多分気紛れ。
読む間にその字の持ち主を思い出すかもしれないと思ったのかも知れない。


手紙はその字に似合い、拝啓から始まる。
季節の挨拶も月並みのもの。
そして、そこには自分に対する憧れや崇拝めいた言葉が並んでいた。
普段なら気にも止めなかったかもしれない。
普段ならきっと、そのままゴミ箱だろう。
それでも、その日はちょっと気分が良かった。


自分の部下の元教師という男が、自分を見た目。
偽りの駆け引きなんて苦手そうな凡庸とした男が、尊敬の眼差しを真っ直ぐに自分に
向けた。なんでそんな目をされたのか全く見当も付かなかったのに、その目は
妙に気に入った。
こんな目で見られるのは、悪く無い。
そんな風に思った。


だから、その手紙の主がどんな思惑でその手紙を送ったとしても
今日は気分がいいから、見逃してやろう。
そして、あの尊敬の眼差しを失わない為にも、自分がする事は? と考えれば
ありえない答えが頭に浮かぶ。


人間関係を大切にしそうな男。
なにを言われても騙されそうな男。
好意をただの好意として受け取りそうな男。


返事を書いてやろう、それは気紛れだった。


そんな事をしてあの男にそれが伝わるわけで無し。
あの男の評価が今よりも上がる訳で無し。


一番近いのは、いい人の真似事をして少しでも、本当のいい人に近付こう。
せめて、いい人の振りぐらいさまになる程度には。
あの、目を失わない為に。


俺は滅多に持たないペンで返事を書いた。






気紛れに書いた手紙。
内容は受け取った手紙と違わず陳腐だった。
それを封筒に入れた所で手が止まる。
受け取った手紙には、差出人も無ければ、リターンアドレスも無かったのだ。
差出人を無理やり探し出す事は出来るだろ。
確かに不可能じゃない。
とはいっても、わざわざ探し出してまで返事を出してやる程、お人よしでもない。
そこまで思い当たって、書きあがった手紙をそのままゴミ箱へ投げ入れた。
それで話はおしまい。
そうして分ったのは、自分がしみじみ尊敬に価しない人間だ、と言う事だけ。
あの、クリクリと良く動く黒い目もそれに直ぐに気がつくだろう。
そして、自分が勝手に思い描いた理想像とかけ離れていたといって、失望するのだ。
「くだらない……」
バカみたいに尊敬なんて似合いもしない物を手に入れてみたくなった自分も。
勝手に理想を押し付けるあの人も。
それに、こうやって勝手に自分を引っ掻き回して、自分は名前すら名乗らない相手も。
ごろりと横になれば、埃っぽい匂いがした。
 
 
いつもと変わらず受付をくぐれば、一番に目が行くのはやはり見知った顔。
あまり顔を覚える方ではない自分にとって、さほど多くも無い会話しか繋がりを
持たない相手を個別認識している事は快挙だ。
「これ、お願いします。イルカ先生」
ナルトが繰り返す、イルカ先生。
朝も、昼も、晩も。
くだらない会話に終始ひょっこり顔を出すイルカ先生。
おかげでよく知りもしないのに、妙に良く知っているような気にさせられた。
「あ、はい。お疲れ様でした」
誰にでも向けられるであろう、真っ直ぐな眼差しに労う言葉。そして、無事を
喜ぶ笑顔。
いつだったかナルトが言った事がある。「イルカ先生が笑ってるから平和なんだってばよ」
それをサクラが一蹴した。「平和だから笑ってんでしょ」
そしてサスケの無関心。
卵から鶏か、鶏から卵か……。
「どーも」
書類に不備が無いかチェックに走る目。
不器用なぐらい仕事熱心な男だ。忍の指に不似合いなペンダコを作っても誰も褒めては
くれないだろうに。
「はい、確認しました。ご苦労様でした」
深々と頭を下げる。
大概ここで今日はどうでした? とか、また、ナルトの奴が何か言いませんでしたか? 
とか聞いてくるのだが、この日は無かった。受け取った書類にポンと受領の判を
押し、隣に置かれたカゴに放り込む。実に慣れた動作で、正に受付中忍の名に恥じない仕事ぶり。
俺が中々動かないのを見て取って、またあの誰にでも向ける笑顔で俺の顔を見上げた。
「どうかされましたか?」
「え?」
「何が御用があるならお伺いしますが?」
不思議そうに尋ねる男に、自分が恥かしくなる。
自分が手紙を返さなかったから、自分は彼の関心を失ったのかなんて思った事が。
知るわけが無いのだ。
それに自分は書いたのだ。
ただ、返信する先が分らなかっただけで、ちゃんと。
いい訳じみた自分の考えは、後ろの気配が動いた事に霧散した。
「あ」
「隣が先に、空いたみたいですね」
何でもない事のようにそんな言葉を彼は投げた。
公私混同はしない正に受付中忍の鏡なのだ、目の前にいる人は。
誰だって俺の気を普通なら引きたがる。
誰だって俺とどんなくだらない会話でも糸口を見つけようとする。
誰だって俺が関心を持つのを期待している。
目の前の受付中忍は俺よりも受付の職務を優先する。





なんでも、と開きかけた口を一度引き締める。
これはチャンスだ、と。
「イルカ先生、良かったら一緒に飲みに行きませんか?」
気紛れに女には何度か言った事がある。
自分の内を知らず知らずに占める相手の事を、よくよく考えれば何も知らない。
例えば酒は何が好きかとかそんな下らない事も、家は何処かも、どんな風な
話をするのかも。


知っていると思っているのはナルトの口から出た話ばかり。
イルカの失敗に始まって、ナルトの悪戯にどんな風に彼が怒るのかとか。
どれだけ彼が良い人物なのか、をナルトはその口から思いつく限りの言葉
を使って話す。三人の共通の話題は少ない。それはナルトの腹の獣のせいであり、
サスケの人を寄せ付けない性格と、そのキッカケのあの出来事。
サクラはその察しの良過ぎる所が距離を縮められない原因。
それでも、イルカの話だけは空気が変わる。
それがカカシの中のイルカだった。


空気の変化のような、そんな漠然とした。


「飲みに……ですか?」
言葉を詰まらせる相手に、心臓が跳ねる。
「もしかして、お酒はやらないんですか?」
そんな事はないと知っている。ナルトが彼の家に行くと必ず食事時に酒を呑むと
言う話を聞いた事がある。
しばらくの逡巡。
そして彼は答えた。
「実はお恥かしながら、下戸なんですよ」
知らなければ、うそだなんて思えない程、彼の顔は自然で。
知らなければ、その嘘の裏なんて考える必要も無いのに。
「そう、ですか……」
じゃぁ、飯を……と続けられない。
だって、彼は下戸じゃない。
断ったのは酒じゃない。
断ったのは、俺の誘い。








何も無い部屋。
ごろりと転がれば天井が目に入る。
天井についたシミに目をやりながら、気が付けば耳はある音を追っている。
小さな何でも無い音。
カタリと鉄の上に封筒が落とされる、郵便受けが鳴る音。
もし自分の家の郵便受けが鳴ればそれは十中八九、あの手紙だ。

音を立てる事が無かった郵便受けが音を立てて以来、気が付けばそれを待っていた。

それを自分が待っているという事に気がついたのは偶然だった。
それまでそれほど気にも留めていないと思っていた。あらゆる音に耳を澄ませるのは
いわば忍の習性。実は自分がそのうちの唯一つの音を待ち焦がれているなどと思いもしなかった。
家に帰れば気が付けば郵便受けの蓋を開けるようになっていた自分。
当然目の前には空っぽの郵便受け。
それが当たり前だというのに、その行為を止めない自分。

イルカを誘ったあの日。
断られた、あの日。

祈るような気持ちで郵便受けを開け、空のそれに酷い落胆を感じたあの時、気付いた。

俺はあの手紙を待っているのだと。

あの手紙は既に処分してもう今更、差出人を探し出そうとしても出来るものでもな
く、例え出来たとしても本当にするかといわれれば答えはNOなのだが、それでも確かに
自分はあの手紙を待っていた。
下らない陳腐な褒め言葉の並ぶあの手紙を。

夏の初めに貰った手紙。

誰もが認める車輪眼のカカシがたった一通の差出人も分からない手紙に振り回されて、
空の郵便受けが音を立てるのをただ待っている。
あの手紙とあの人の間に何の関係もないのに、それでも切り離せない、割り切れない。

カカシは何も無い部屋に寝転がり自分の手をじっと見た。
ペンダコの出来たあの人の手と、人をそれこそ絞め殺す事が出来そうな自分の手。

「イルカ先生」「イルカ先生」と繰り返す彼を知る子供を見る度に、その声を聞く度
に、色々な彼を知る度に、まるで自分がそこにいたみたいに思った。彼を慕う教え子たちの
言葉や尊敬や、愛慕の眼差しは自分のものになっていた。
そんな経験の無い自分が、ただ突然与えられた疑似体験に浮かれているだけだと思いながら
それでもあの人の姿を見ると胸が高鳴った。あの人が笑いかけると幸せな気
持ちになれた。「イルカ先生が笑ってるから平和」だといったナルトの気持ちが嫌と言うほど分かった。
あの笑顔を守る事が出来ればこれ以上の幸せは自分には無いように思えた。

それでも、結局。
本当に自分が得られたものといえば、拒絶だけ。

自分向けられてる気がした尊敬の眼差しもただの気のせい。
本当は自分を軽蔑さえしているのかもしれない。
そう、だったらいい。
それなら無理にいい人ぶる必要も無い。
尊敬に値しない自分を懸命に隠す必要も、変える必要も無い。

そう、だったら。






賑やかな居酒屋の一角。
程よい酔いに身を任せてそれぞれに、それぞれの時間を過ごす。
酒を続けるもの、つまみを摘むもの、同僚に愚痴を零すものそれぞれだ。

そんな一団の少し離れた所にイルカは座り、ほろ酔いの心地よさに鼻歌を歌いながら
手紙を書いていた。

「お、またか。マメだね」
イルカのそれに気付いた同僚が覗き込めば、イルカがへらりと笑った。
「いい人なんだ」
「ヘイヘイ。今度は誰だぁ〜?」
「見るなよ」
ヘラヘラと笑いながら機嫌よくイルカは同僚のそれを阻もうとするが、うまく行かな
い。
「拝啓」
同僚がそれを声に出して読むと、また始まったと一団が男に注目した。

イルカは酔うと手紙を書く。
時には同僚だったり、火影だったり。一番多いのは今の所、下忍担当官で上忍のガイだった。

「カカシ……先生」
声を出して呼んでいた男もそこでとまるが、聞いていた回りも止まった。
「か、カカシってあの車輪眼の??」
「確か、あのガキを受け持ったって……」
「でも、なんか……」

一同の空気の変化に気付かずにイルカが不思議そうに聞いた。
「読まねぇの? 誤字とか言葉遣いとかいつもみたいにみてくれると結構助かるんだけど」
「誤字っていうかお前、こんなん持ってっても叩き返されるのが落ちだぞ?」
イルカはへらりとまた笑った。
「まさか。お前ら知らないだけで、カカシ先生は生徒思いのいい人なんだって。中忍
とかそんな区別なく付き合ってくれるし、この間な、酒呑みに行こうって言ってくれ
てさ、あれは結構嬉しかったな」


気持ちの整理が付かないままの状態では会いたくなかったのに、世の中はうまく行か
ない。
「カカシ先生」
向こうはこちらの誘いを断ったとはいえ、表面上は変わりなく接する事は目に見えて
いた。今となっては返ってそれが辛って……。
「イルカ先生なんでここに? ここ、俺んちなんですけど」
イルカはといえばカカシのその当然の疑問には答えず曖昧に笑って、あのペンダコの
ある手をカカシの手に重ねてきた。
「イ、イルカ先生?」
その手が妙に柔らかくて、まるで女のそれだ。
「この間のあれ……悪く思わないで下さい。俺、実は……」
イルカの柔らかい手がカカシの手を自分の胸元へ導く。
そこにはフォルダーの上からでも分かる、柔らかな感触があった。
「え?」
困ったような曖昧な微笑み。
「言い出せなくて」
手にあるその感触はかなり大きくて、良く今まで騙せたなと感心すらするほど豊か
で。自分の手の中にあるそれが信じられないというようにベストを乱暴に開ければ、
黒いアンダーの膨らみは彼が明らかに女である事を主張していた。
男のものではありえないその指を押し返す弾力に箍が外れたのだと言い訳をして、アンダーの
上からそれを揉みあげれば、イルカはその顔を染め、艶めいた声を漏らす。
突然、知り合いの男が実は女だったと言われたとしても行き成りセックスなんて普通
に考えれば冗談じゃない。
にもかかわらず、愛撫も同意の言葉も無いままにその細い足を開く……。

 カタン。

後、一歩という所でカカシの意識をそれは無理やり夢から現実へ引き上げた。
忙しなく肩で息をしている呼吸、うるさい心臓の鼓動、ジッと滲む汗。
カカシはダルイ体を無理やり引きずるようにして玄関へ向かう。
カラカラに渇いた喉が気持ち悪かった。
ぼうっとしたままの頭はいまだにハッキリしない。
ドアを開ければ満月の明るい光が照らしていて、句も無く辺りを見ることが出来た。
そして、カカシは見た。
月明かりの中に、揺れる高く頂点で結われた髪が揺れているあの、影を。
夢に見た……、今しがた、その腕の中で足を広げていた、その人物を。

「イルカ先生!」

影は振り返り、へへっと色気無く笑った。

「待って、待ってって! なんで」
「カカシ先生にお手紙を書きました」
嬉しそうに悪戯をした子供のような笑顔をイルカは浮かべた。
相手が酔っていることはすぐに知れた。
まともな会話など出来ないのかもしれないと思いながら、それでもカカシは答えた。
ただ、会話を閉ざしたくなかった。
「それは知ってます」
目が柔らかく笑う。
あのカカシを見る尊敬の目だ。
「俺、カカシ先生の事好きですから」
言われた瞬間、妙にリアルに手の中にあの柔らかい感触が甦ってくる。
「……ちょっと、あがって行きませんか」
乾いた喉のせいばかりでなく、声が掠れた。
イルカは少し首を傾げて不思議そうにカカシを見た。
「いえ、もう遅いですし」
「でもそんなに酔ってたら」
危ないのは自分の方だ。
月明かりに浮かび上がる男を相手になにを考えてる?
「やっぱりカカシ先生は優しいです」
くるりとイルカが向きを変えてカカシの方へ歩いてくる。
一歩、一歩。
「優しくなんか、無いですよ」
「優しいですよ」
手の届くような距離でイルカが笑っていた。
自分の事を心底、認めているそんな笑い方だ。
「あの手紙、イルカ先生だったんですね……俺、全然気付きませんでした。すいません」
イルカは大きく手を顔の前で振る。
「いいんですよ! 別に。俺からなんて分からなくても。でもどうしてもなんか、言いたいって思って」
酔いが程よくまわっているが、カカシが思っているほど酔っている訳でもないらしく
イルカはカカシの問いにしっかりとした受け答えをした。
「でも、どうして俺の誘い断ったんですか?」
もう、呑めないとは答えられまい。
「俺、酔うとベラベラ余計な事喋るんで、呆れられたら嫌だなって……それで。すいません」
申し訳なさそうにペコリと下がる頭に胸につかえていたものが取れた気がした。
片手で扉をあけイルカに入るように促せば軽く頭を下げてカカシの前を通り抜ける。
イルカがすぐ傍を通るとアルコールの匂いがした。
「俺、すごいショックだったんですよ」
冗談に紛れさせて口を尖らせればイルカは慌てたらしく言葉を捜してまごつく。
「え? そ、いや、だって」
後ろ手に戸を締めて、鍵をかける。
夜中で、男同士。
警戒しろという方が無理かもしれない。
「イルカ先生、酔ってます?」
「へ?」
脈絡の無い問いにイルカはおかしな声を上げる。
「酔った勢いで、俺にキスでもしてくれたらチャラにしてあげます」
「は?」
何言ってんだ。
何考えてんだ。
常の自分なら言いそうもないそんな馬鹿げた取引を持ち出して。
「カカシ先生……俺が酔っ払ってると思ってからかってるんですか? 本気でしたら
どうするんですか」
イルカのその顔は教師がお説教をする顔だ。
下らない冗談は止めろと馬鹿な生徒を諭す顔。
「いいじゃないですか、減るもんじゃなし」
「俺がしないと思ってるでしょ」
思ってるけど、ちょっと違う。
しないと思ってるから煽ってるんじゃない。
したいと思ってるから挑発してる。
ちょっと足にきているらしくて、たまにふらふらする。
この人ほんとに忍かなとか本人が聞いたら泣きそうな事を思ってた。
カカシの後ろの壁にイルカが腕をつく。
少しだけ目線が低い。
俺からキスをするのに丁度いい高さ。
イルカ先生からはしにくい高さ。
カカシは背を壁に預けてずるずると目線を落とし、挑発するように見上げた。
そしてイルカはまるでカカシを睨むように見たまま、固まる。
「ほら、出来ない」
喉の奥で笑ってやれば、顎に手がかかった。
ペンダコのあの手だが、それは女のもののような柔らかさは無く、それに嫌悪感を煽
られでもすれば気も済んだものを……。

心臓がバクバクうるさい。

戸惑いがちに近付いた顔。
思い切って触れる唇と唇。
当然気の利かないイルカ先生は口布を下ろしてなんてくれないから、布越し。
色っぽさの欠片も無い、どこか罰ゲームみたいなそれに苦笑いが洩れる。

布越しの柔らかくて、酒臭い感触。

体中が熱い。
足が震える。
ヤバイ。

「ごーかく」
ニンマリ笑ってやればバカにされたと顔を赤くする。

頭をガシガシ掻いて、照れてるのを懸命にやり過ごそうとしてる。
離れていった体。
いつもと変わらぬ筈のうなじが妙にいやらしい。

カカシはイルカの手首を掴んで、引き寄せる。
その勢いのまま、先ほどのカカシと丁度逆の体勢。
イルカを壁に押し当てて、逃げないように己の体を押し当て自由を奪う。
口布を下ろせば、大概の者が示すそれと変わらぬ反応。
自分の立場も忘れて、始めてみるカカシの素顔に目を奪われる。

軽い音とともに触れるだけのキス。
唇をいやらしく舐め上げれば、その目に動揺が現れ、体を硬くする。
唇を啄ばむように甘噛みしても応えそうに無いその唇。
無理やり顎を開かせる事は容易いが手荒な真似は出来ればしたくない。
悪戯っぽい微笑を目にだけ浮かべて、フェイントにイルカの額宛を取り去り、その鼻を摘んだ。
「隙あり」
「ンッ!」
くぐもった鼻にかかる声。
何が起こったのか分からず、目が彷徨うが、その目に息苦しさの為に涙が浮かぶ。
その顔をゆっくりと堪能して、再び、唇を重ね、自分にそれが開かれるときを待つ。
イルカもここに来て自分の立場を把握したらしく、やっと体を押しのけようと腕を
突っ張るが今更遅い。
抵抗すればするだけ聞き分けの無い唇を攻める。
苦しそうにイルカの爪が背中にささる。
思いの他頑張るイルカに、カカシは押し付けていた体をずらし、その股の間を腿で押
しつけるようにすりあげる。
急所ともいえるそこへの攻撃。
逃げるように体が後ずさるが後ろの壁に阻まれうまく行く筈も無い。
嫌だとイルカがいくら自制しようとしても生まれた快感はそうやり過ごせるものでも
なく、イルカのうちに戸惑いや息苦しさ以外の感情が浮かぶ。
「ん、ッふゥ」
鼻にかかった甘い声。
首が仰け反る。
自分の前に晒されたそれにカカシは唇を押し当て、そこを容赦なく吸い上げた。
「ハッぁ、痛ッぅ!」
カカシを締め出していた扉は開いた。
鼻を摘んで気道を奪っていたそれを、顎に軽く宛がい、カカシは、開放された口内に
舌を差し入れた。
敏感な口内を舌で刺激してやればイルカの体は震え、既に酒に溶けた舌はカカシの執
拗な攻めをぎこちなく逃げるが、それはカカシを煽るという効果しか生んでいない。
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