あれほど恐ろしい罠はそう短くも無い忍としての生の中ででも会った事は無かった。
思い出すだけでも背筋に何か走るのを感じるのだから、相当なものだ。
一番初めの罠はあまりにも自然で、罠である等と恐らく誰一人身を固めたりはしないだろう。
だが、俺の研ぎ澄まされた感覚はそれを見逃しはしなかった。
丁度、七班を受け持つ事になったその時。彼はまるで獲物を待つ蜘蛛のような
執拗さと何気なさでそこにいた。そして、俺は見る事になる。里のリサークルウェポンと言われる
あの、無邪気と言ってもいいような、天使の笑顔を……。
「カカシ先生ですね、あいつ等の事よろしくお願いします」
礼儀正しく下げられた頭に、俺は返事すら出来なかった。
あれが一つ目の罠だった……。


二つ目の罠、それは精神攻撃。
あの人は熊と親しく談笑するだけでなく、あの、木の葉一の有ガイと言われる男と
この上なく楽しそうに、そして意気投合して話していたのだ……。
障害が大きければ大きいほどいい事をあの人は知っていたに違いない。
いまだかつて、誰一人そんな手段を思いつく者はいなかったが、その作戦は確かに
ぴたりとあたった。俺はあの人が気になってしょうがなくなった。


そして、三つ目……。
俺がこのままでは駄目だと事態を打開する為に用いた手段を逆手に取られた。
一緒に飲みに行きましょうと、限りないさり気なさと、気のない風を装って乾く喉からなんとか
声を絞り出した。
だが、あの人は来なかった……
日が哀しいまでに白んで来ても、あの人は現れなかった。
あの時に気付くべきだったのだ、全ては罠だったと。
俺はあの時気が動転していた。
顔を見たその瞬間、彼に問質さずにはいられなかった。
「どうして来てくれなかったんですか」
語気を荒げないようにどれだけ俺が気を使ったか。
だが、あの人は悪びれもせずに答えるのだ。
「だって俺みたいな奴、とてもじゃないですけど……きっと、ただの気紛れなんだろうって
思いますよ、普通」
気紛れなんかじゃ……。
そこまで思ってハッとする。
自分は真剣だったのか、と。


「何言ってるんですか、イルカ先生は……素ばらしい好敵手なんです。
あなたほどの策略を練る人を俺は今まで知らないんです!」


これじゃまるでガイだ!
そうは思ったが出てしまった言葉は戻らない。


「カカシ先生……もしかして、ナルトたちの事で何かあったんですか?
俺、いきなり歓楽街のイチャイチャホテルで待ち合わせなんて言われたからちょっとありえないとは
思ったんですけど、勘ぐってしまって……」
イルカは鼻の頭を照れたように掻いた。
それは完全にカカシを落とすに十分な愛らしさだった。





管理人)カカシ先生・・・イルカ先生がガイ先生やアスマ先生と仲良くお話してるのが、
すっごく羨ましかったんだね・・・そんな可愛い(しかも自覚ナシ)カカシ先生が激ツボ。うっとり。
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