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2010年 バックカントリーの記録 タフな山
日時 : 2月21日(日) 6:05〜18:10 (12時間5分)
山域 : 吾妻連峰 中吾妻〜東吾妻
天候 : 曇り後晴れ 時折小雪が舞う
スキー : DYNASTAR LEGEND8800 168cm + Voile Switchback
ブーツ : CRISPI CXP LIGHT
移動距離 : 約23km

【動機】
吾妻連峰の中心付近に位置する中吾妻は、山頂へのアクセスの悪さから冬季においては遠い存在と言える。しかし、山スキーヤーS氏の昨年2月の山行記録(中吾妻〜東吾妻周回)を見て衝撃を受け、いずれ自分もチャレンジしたいと心の中で温めていた。雪質も楽しめる降雪後を狙って出掛けてみたのだが・・・・。

【行動記録】
自宅を4時に出発。行動開始点となる蒲谷地へと車を走らせる。5時15分に現地に到着すると、除雪車が作業の真っ最中。大倉川右岸側の橋付近に駐車したかったが、スペースは無い。左岸側の蒲谷地集落入口付近に路駐する。連日の残業と休日出勤上がりの体は疲れ、寝不足気味。早く着いたので30分程度寝ようと思ったが、気が昂ぶって眠れそうもない。除雪車も轟音と共にやって来るし。なら、スタートは早いほうが良い。出発準備。

6:05 820m
シールで行動開始。辺りは明るくなり、ヘッドランプ無しで行動可能。まずは大倉川に架かる橋を渡り、右岸から大倉川沿いをトレース、上流方向を目指す。昨日の降雪は想像以上で、早くもラッセルが始まる。右岸の斜面は岩剥き出しで切り立っており、どこから尾根に取り付くかが最初のポイントだろう。事前の予定では、橋から2km程度進んだ標高900m付近から沢形を詰めるつもりだったが、徐々に右岸の傾斜が緩くなり始めたため、予定を変更。やや手前から登りに掛かる。

ラッセルはあるものの、ベースの雪は締まっており、シールの食い付きは悪くない。ボレーのスイッチバックビンディングは、背の高いほうのクライムサポートが使える。順調に高度を上げていくが、木が立ちこんでいる箇所もあり通過に手間取る。やはりペースは遅めか。1050m付近の尾根へと上がるが、進行方向はアップダウンのある地形。シールでの下降も入り、効率の悪いルーファイだった。事前に予定していた沢形をトレースするのが最適なルートかと思う。

8:05 1150m
1210mピークの西側を巻き、コル付近で大休止。通過予定点はGPSに打ってあるが、マップを広げ現在地と予定ルートを確認。以後の小ピークが連続する行程は、西側を巻く予定。うまく処理しないと時間は容赦なく過ぎていく。まだまだ先は長い。

進行ペースは悪くないと思うが、小ピークの連続でトラバースが続き、時折下降。西斜面は所々ベースが固くシールが食い付かない箇所がある。高度は上がらない。モチベーションも下降気味。思ったよりもタフなルートで、中吾妻ピストンが限界か?と弱気になる。

9:35 1330m
うっとおしいアップダウン地形をクリアし、漸く山頂へと繋がる尾根の開始点へと辿り着く。腰を降ろして二度目の大休止。天候は回復傾向で、青空も見え出す。最低でも山頂は踏もうと、改めて気合いを入れ直す。

行動再開。正面に見える急斜面を避け、やや東側の尾根方向のルートを取る。林間は空いていて快適に登れるが、ここまでの行程で大分体力を消耗した感じ。ラッセルが続き、ペースは遅い。時間が気になる。スタート前は、11時半には山頂と考えていたが、甘くはなかった。何とか12時前には山頂に到着したい。

12:02 1931m
中吾妻山頂。晴れ間があり、西風もさほど強くない。視界良好で、遠くに東吾妻と一切経山、斜面の奥には真っ白な谷地平が確認出来る。リミットと考えていた12時を回ってしまったが、直下に広がるパウダー斜面は誘惑的で手招きする。往路戻りでも滑りは楽しめそうだが、どうするか。往路戻りもシール歩きが必要。迷っていても時間は過ぎるばかり。意を決し、東斜面へドロップすることにする。東吾妻まで登ってしまえば、蒲谷地への下降ルートは掴めているのが安心材料。問題は、大倉川の渡渉だが。シールを貼ったまま稜線上を継森方向へと移動し、滑降の準備。山頂から真下に落ちる沢形が空いていて滑降にはベストだが、時間を考えるとトラバース気味に谷地平方向を目指すしかない。滑降準備にもたつく。

12:23 1920m
雪庇の上から東斜面へとドロップ。直下は当然深いパウダーで雪質抜群。振り返り滑降斜面を写真撮影。暫く下降し、やや木々が込み合ってきた所で谷地平方向を目指してスキーを走らせる。

林間もまずまず快適に進めるが、傾斜が緩くなると板の滑りが悪くなる。下りラッセルが入る。谷地平経由を予定していたが、時間を考えるとダイレクトに東吾妻を目指せる姥沢左岸側へと大倉川を渡渉したい。夏道の渡渉点付近にスノーブリッジがあるだろう、との楽観的予測を立てる。

12:50 1520m
シールを貼り、渡渉予定ポイントを目指し移動。

段丘上から大倉川を覗き込む。何とか渡れそうなスノーブリッジを発見。慎重に川岸に降りる。結構水流がある。本当に渡れるか?ストックで突いてみると、簡単に穴ぼこが・・・・。傾斜もあるので、スキーを履いたままシールで渡ろうとするとバックしてテールから水没する可能性大・・・ですね。

と言っても、不安定なのは50cm+α程度。ツボでジャンプして渡れそう。後で行くよと、ザック、スキー、ストックを対岸に放り投げ、ジャンプ一番、楽勝クリアでした。スキーとストックを抱え、ツボのまま段丘へと這い上がる。

13:15 1470m
腰を降ろして大休止。大倉川を無事渡渉出来て、まずは一安心。GPSを確認すると、夏道の渡渉点はもう少し上流側だった。渡ったのは、やや両岸が切り立った場所で、とんだ見当違い。ともかく、これで大分気が楽になった。しかし、東吾妻山頂までは標高差500mの登り返しがあるので、まだ道半ばで安心するにはちょっと気が早い。時間は気になるが、腹が減ってはなんとやら。十分にエネルギー補給しよう。

13:25
行動再開。携帯プレーヤーでMUSICスタート。リラックスして東吾妻を目指そう。焦りは禁物、焦るとロクなことは無い。林間は新雪が降り積もり、単調なラッセルが続きつらいが、ここが踏ん張りどころ。

1780m付近の広い雪原に近づくと、シュカブラ交じりの斜面となり、ラッセルから解放される。東吾妻が大きく目の前に迫ってくる。振り返れば、吾妻の山々の稜線の眺めが美しい。このペースだと東吾妻山頂着は15時半過ぎと予想。2月下旬ともなれば、日没は17時過ぎ。日はまだ高く、暗くなる前には下山出来そうな雰囲気。

山頂直下の西斜面は灌木が濃く、通過に手間取る。時折、ウェアやザックが枝に引っ掛かる。北から巻くのが正解だったかもしれない。灌木帯を抜けた所で真っ白な一切経山方向を見渡すと、平石山から酸ケ平避難小屋方向へと落ちる斜面に複数のスキーのシュプールを確認。吾妻小舎の雪降ろし隊でしょうか?

15:45 1974m
東吾妻山頂着。西風はさほど強くない。いつのものか、スキーの通ったトレースがある。この時期に訪れる人が他にもいるらしい。時間があれば少しゆっくりしたいが、そうもいかない。写真を数枚撮って、蒲谷地へ向けての下降ルートとなる南斜面を目指す。

滑降開始点までは、シールを貼ったままでの移動。灌木とデコボコの雪面で進行に時間を費やす。目測で適当に進むとやや西に逸れる。進路を修正する。

16:00 1890m
滑降開始点。シールを剥がして滑降の準備。大体の方向をコンパスでセット。GPSには過去のログも取り込み済みでルートに不安無し。休みついでにエネルギー補給。ゴーグルは2枚レンズの間が曇ってしまっていた。サングラスで下ろう。転ぶ予定もないし。蒲谷地の集落着は17時半前後だろうか。auの携帯はアンテナ2本。帰りが遅くなりそうなので、自宅へメール。「帰りは7時過ぎになりそう」、メール送信....と。

16:20
滑降開始。基本的にGPSの過去ログに沿って下降する。傾斜が緩むと下りラッセル。1400m台地への下降でやや西に寄り過ぎ、尾根を外し進路を修正。10分近いタイムロスと体力を消耗。

17:20 1280m
日没間近。まだ視界は効くが、早めのヘッドランプ点灯。尾根伝いにスキーを走らせると下部の林道が迫る。暗くなってきているので、慎重に下る。

17:40 950m
林道に合流。ここまで来れば着いたも同然、と思ったが、傾斜の緩い林道上はモナカ雪。スキートップが突き刺さり滑らない。またしても歩きを強いられる。傾斜があれば滑るのですが。

集落の除雪終了点に合流すると、圧雪テカテカ路面となり、板の滑りは絶好調。出発地点へ向け快速で進む。傾斜が緩んでも、ストック推進と軽いスケーティングでス〜イスイ。が、途中で雪が切れ、板を脱いで歩くハメに。すっかり日が暮れた道も雪明りで結構明るい。慌てず進もう。

18:10
車の待つ出発地点に無事到着。

ルートは掴めたので、来年以降チャンスがあればまたトライしたい。

山スキーヤーS氏の山行記録があって成し遂げた今回のツアー。この場を借りて感謝です。見て貰えるかは不明ですが、BFでお会いする機会も稀なので。
朝の大倉川 上流方向
クマの仕業か? ツメ痕有り
中吾妻山頂から東吾妻と一切経山方向
東斜面エントリーポイントから継森方向 
山頂直下のパウダー斜面 最高!
大倉川の渡渉点 不安定だったスノーブリッジ
中大巓〜烏帽子山方向
1780m雪原 東吾妻も近い
 東吾妻から 前大巓〜一切経山
 東吾妻山頂

標柱にエビの尻尾
1280m 日没は近い 
 
GPSログデータ