2012年の初めに              2012.1.12−31

                                  木下秀人

 世界にも、日本にも、めまぐるしい1年だった。ここ数年の課題が急に解決を求めて動き出し、民主主義や資本主義の是非を論じる文章まで登場する始末。

日本はデフレ脱出どころか、与野党が政策論議を放置して政局論に明け暮れるうちに大震災を迎えてしまった。震災における日本人の態度は世界から賞賛されたが、日本の政治=民主主義の効率は評価できるだろうか。世界で若者たちが政治改革に声を上げているのに、日本が“シルバー民主主義”で停滞するのを若者たちは許すのだろうか。

鳩山政権が沖縄問題で行き詰まって菅政権となり、菅氏は総裁選で脱小沢を唱えて小沢氏を破ったが、日をおかず迎えた参議院選挙で大敗し、野党からも小沢グループからも責任を問われ、野党時代反対してきた消費税と社会保障の一体改革を政策の目玉とし、自民党で責任者だった与謝野氏を引き抜いて担当としたのが自民党の反感を買い、国会は民主党のマニュフェスト違反追求と解散要求、小沢資金問題に明け暮れ、大連立も空振り、普天間問題も膠着したまま大災害を迎えた。菅氏が引き伸ばした退陣は8月末、9月の民主党代表選では小沢派の推す海江田氏を破って野田首相が誕生した。

ねじれ国会の苦労はオバマ政権にもあり、オバマ政権は公約の健康保険法こそ成立させたが、共和党保守のティパーティによって中間選挙で大敗し下院の主導権を奪われ、富裕層増税による雇用促進法案を通すことが出来ず、失業率高止まりの苦境。脱出にイラク・アフガンからの撤退などの軍事費削減と大統領再選を賭けるが、野田政権は岡田克也氏を副総理に迎えて、懸案の増税と福祉の一体改革で、「明日はわが身」と迫る国債価格暴落の悪夢から逃れねばならない。突然悪化したEUの金融危機を、政治的停滞に悩む野田政権と日本の追い風としたいものである。

日本の地震・津波・放射能災害については、昨年の論述以上の進展はない。地震と津波は千年の災害だったが、原発の放射能事故は、予備電源が機能し炉心冷却が出来れば防げたのにと、事前に危険性の指摘がありその防止技術があっただけに悔やまれる。政府にも学者にも東電にも原発反対訴訟を裁いた司法にも責任があることがは明らかになろうとしている。

今年掲げるのは、次の4編である。

1 米国不況・EU債務危機と日本の債務危機再論

    2 アラブの春・トルコ・イスラエル・米国

    3 丸山真男と和辻哲郎

    4 村田聖明氏の大戦下米国留学記とわが米国観 

    5 終戦前後の中学1年生    

 

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