平成17年
《2月》 歯周病の予防も、虫歯の予防も、同じです。
プラークコントロールが唯一の方法です。 汚れを付けないこと、「食べたら磨く」の徹底です。 歯科医としてはだらしないとは思いますが、それしかないのが残念です。
《3月》 歯の治療をしながら、思います。
「悪いところを削って穴埋めする以外むし歯治療の方法はないのだろうか。 薬を付けてむくむく盛り上がったら・・・と」 今は無理かもしれませんが、いずれは実現出来るかもしれません。 それまでは、患者さんに、むし歯を作らないよう、お願いするしかないのです。
《4月》 子供の頃思いました。
おじさんたちは、どうして食事の後爪楊枝を使うのだろう、と。 自分自身がその年になって判りました。 年を取ると歯の間に隙間が出来て、食べ物が挟まるのです。 高齢者の口の中の特徴を知ると、手入れの仕方がよく分かります。 若い人も、原則は同じです。
《5月》 揺れて痛くて噛めない歯を、抜かずに残すかどうか、いつも迷います。
抜かずに残すのが、歯科医の第一の仕事です。しかし、継続的によく噛めるようにする事が、それ以 上に重要です。 高齢になり心臓病などにより、歯を抜くことが出来なくなってから、早めに処置をしておけばと悔やむ 事もあります。
《6月》 審美、インプラント、骨移植、PMTC等最先端の言葉が乱れ飛んでいます。
それなりにすばらしい技術です。以前から歯科医師が心がけてきた技術を、言葉として主張出来るよ うになったのです。 でも、基本は、よく噛め、長く保ち、出来れば安くすむ事です。手間をかければ良いものが出来まが、 残念ながら、その分費用が嵩んでしまいます。
《7月》 審美歯科、ホワイトニングが盛んに喧伝されています。きれいになる事は、当然の欲望でしょう。
しかし、ただ白ければ綺麗といえるでしょうか。価値観の違いといえばそれまでですが、審美とは、 自然が一番と考えて診療に当たってきました。 自然な白さの範囲で、最良の治療をと、患者さんを説得していきましょう。
《8月》 歯を無くした時、補う方法を考えます。
第一に患者さんの希望を伺います。「違和感が無く、手入れが簡単で、見た目が良い。丈夫で長ち、 さらに価格が安く。」 当然のご希望ですが、全ては満たせません。可能な方法の利点欠点を説明し、どこかで妥協して頂 かなければなりません。選択は患者さんの時代なのです。 しかし、選ぶという事が、一番難しいのです。
《9月》 むし歯治療の基本は、悪い所を徹底的に削り取り、あいた空洞を埋める事です。しかしこれでは、補修
に過ぎず、元に戻した事には、なりません。 最近、細菌を薬品で駆除して、歯質の再石灰化を図る方法が、新聞紙上などでよく取り上げられていま す。そんなに良い方法があるなら、我々臨床家の間に経験的だけでなく、学問的な裏付けが、広く伝え られていれば、もっと普及するはずですが? 仲間内では、まだ誰も採用していません。
《10月》 前歯に隙間があったり、歯並びが乱れていて、綺麗にしたいと相談があります。矯正治療は時間がか
り、装置の見た目も悪く、さけたい場合があります。 短期間で見た目が回復出来るラミネートベニヤや、セラミック冠が重宝されています。 しかし、健康な歯を削り、傷つける事になり、耐久性にも限度があります。 多少の犠牲はあっても、コンプレックスを解消し、精神の安定を得る方を、選ばざるを得ないのでしょか。
《11月》 子供の虫歯予防は、ブラッシング以上に、食習慣に左右されます。
砂糖漬けの食べ物を出来るだけさけたいのですが、皆無には出来ません。食べたら磨く、だらだ食べ
続けない。食べ方の管理で相当の効果が上げられます。
親のしつけと共に、子供たちのコミュニティーの大人全てに、むやみにおやつを与えないという共通認 識がなければ、実現出来ません。
《12月》 簡便な形ですが、バリアフリーの診療室がやっと認知され、ぼつぼつ車椅子の患者さんがやってきます。
同じ車椅子の方でも原因が色々で、対応にも違いがあります。
事故で完全な下半身麻痺ですが併発症のない健康な方、お年のため腰に異常が出て、
自立歩行は出来るが時間がかかりじれてしまう方など。
渋谷区で担当している身障者診療所の重度の方は、設備と人手の貧弱な自院では無理ですが、だい たいは自信が持てるようになりました。 |