小林歯科診療所


思いつくままに(その4)

8020を目指して
[高齢者のための歯の手入れ]

 「8020」(80歳まで、自分の噛める歯を20本残す運動)を達成する秘訣は、高齢者にあり
がちな口腔疾患と、加齢による口腔内の変化を十分理解すれば、実現出来ます。
(年を取るとさけられない、口の中の老化の状態を知る事が重要です)
 歯をなくす原因は、虫歯(う食)、歯周病(歯槽膿漏)と外傷(けが)です。

1.むし歯、特に老人性むし歯の特徴は、根面う食といわれる症状です。
  高齢者の根面う食はなぜ起きやすいかは、骨の年齢的変化によります。
  図で示すと以下のようになります。(下線項目をクリックすると図・写真が見られます)

前歯の年齢的変化
A.若くて健康な状態
B.骨の吸収が始まり歯間に空隙が出来始める
C.骨が大きく吸収し、根面が露出する。
D.根の周り 特に歯間に(根の側面)むし歯を作る
露出した根面にう食を作りやすいのは、根の形=歯間部の根の凹みによります。

前歯の形・根の形(断面)
A.露出した前歯の付け根(露出した根)部分で切り取り、断面を上から見てみましょう。
B.根の横側は、くびれています。
C.そのくびれにプラーク(汚れ)が付着しやすいのです。

2.歯周病:老化によって誰でも持っている病気です。歯に付いた汚れにばい菌が群がり、歯
肉が腫れたり出血したりします。やがて歯を支えている骨が溶けて少なくなり、無くなってしまい
ます。歯が揺れたり、噛めなくなって、ついに抜かざるを得なくなります。

歯周病の進行
初期、中期、末期の断面図とX線画像

3.歯を抜かずにすます工夫
1)むし歯にしない
2)歯周病を進めない
3)けがをしない
 虫歯の予防も歯周病の予防も同じです。すなわちプラークコントロール=汚れを付けない。
付けたらどうする。丁寧に取る。どうやって取る?とにかく取る、そして付けない。
 プラークを取るためには、ブラッシングする事の必要性は、どなたも判っています。ただ中々
うまくいかないのです。
 前述の高齢者の口腔内の特徴、骨吸収と根面の露出、その根面の形態の特徴を理解して、
清掃道具と使い方を覚えれば、ある程度良い結果が得られます。

刷掃道具
歯ブラシ・ピック(爪楊枝)・デンタルフロス・ラバーチップ・歯間ブラシなどがあります。
それぞれの道具により、歯間部の刷掃効果に違いがあります。

歯ブラシが届きません
前歯の形の年齢的変化を垂直断面で見てみます。(縦方向に割って横から見てみます)
ブラシの届かないことが判ります。
A.若い時・骨はまだ吸収していません。ブラシはよく届きます。
B.老齢化によって骨は吸収して歯根が露出しています。先の方までブラシは届きません。
4.清掃道具の特徴と選択
前歯の形・根の形(断面)を十分理解して、歯の手入れの時の注意事項を述べてみます。

高齢者の注意すべき事項
1)骨が吸収して
2)歯根側面が露出し
3)凹みがある
4)唾液量も少なく
5)汚れが付きやすい
6)むし歯も歯周病も、プラークが原因となる。

歯間部の清掃
A.歯ブラシは奥の方までは 届かないことが多い
B.フロスは、根の側面のくぼみには届かない
C.歯間ブラシは、奥の方まで入り 根の凹みにも届く
全体を刷掃するには、歯ブラシでブラッシングが重要です。その後、歯ブラシでは磨ききれな
い歯間部の空隙を、歯間ブラシで清掃すると、効果的です。

自分の歯で、できるだけ長く噛めるためには
・特効薬はありません
・そんなに一生懸命になることもありません
・それでも努力は必要です
・老年期の特徴を理解して
・ちょっとだけ丁寧に ちょっとだけ注意深く
・手入れをするだけです

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