いま鉄 OVERSEAS 2
12月の青空
2002.12.26〜31
旅は、会津若松の居酒屋から始まった。10月、C11を撮りに一緒に出かけた友人が急用で先に日程を切り上げ、一人残ってカウンターでほろ酔いビールの午後9時、奥の座敷から聞こえてきたのは、そちらもほろ酔い気分の、ご同業の会話だった。酒が入ってるせいか、話が早い(笑)。S,A両氏との楽しい合流のあと、1時間もしないうちに、両氏との年末の中国行きが、ほぼ決定事項へ向けて、歩き出していた。

12月、上司にとぼけた文句を言われながら、早めの年末休みに入り、航空券の関係で、両氏より1日早く出発。例年になく寒かったり、暖かかったりが不順な師走の東京から、JL781便は、澄みきった青空に煙が上がる、中国の素晴らしい12月へ、連れて行ってくれた。
12.27 大灰廠
北京空港から直接、二七車両工廠へ向かう。夕暮れの弱い光を浴びながら2輌の上遊が入換に精を出す。検査明けの解放がまだ帰っていなかったのは少し残念!  12.26
少し前に北京に降った大雪のおかげで、大灰廠のC2も、雪景色の中を行く。東京さながらの渋滞を走って1時間で、こんなのが走ってるんだから、いやほんと、中国は広い…。  12.27
北京南駅から夜行列車で赤峰へ。発車前のスナップ。いい鉄道情景だ。 12.27
12.30 上店
赤峰から、予定を変更して元宝山へ向かう。建設の活躍する炭鉱線だが、機務段のある元宝山西に着くと、いきなり素晴らしい夜明け前の光景に迎えられた。耳デフの建設が照明灯に照らされるその横を、長い混合列車が発車していく。 12.28 元宝山西
「中国の門デフ」!?といわれる通称「耳デフ」。この1枚だけで、来た甲斐があった!とは何と大袈裟な…。   12.28(5枚共)
風水溝への路線は、朝夕計2往復の混合が走る。朝一番の列車は、客車8輌の前に長い貨車が付く。
元宝山西−風水溝
その混合列車が、終点の風水溝に到着。朝日を浴びる混合編成の横で、ついで単機で荷を取りに来た建設の入換が始まった。
残念ながら、折り返しはすべてバック運転となる。
  風水溝
3人ともすっかり惚れ込んだ、耳デフ8246号機を追って、国鉄線への連絡駅、元宝山へ。これが客レを牽いてきたら最高なのだが…とボヤきつつも、みんな嬉々として入換シーンを撮影。昔の門デフと同じ!?で、後姿がまた美しい。
12.28 元宝山
朝の活気とはまた違う、炭鉱町独特の風情に包まれる、午前10時過ぎの元宝山西駅。3方に広がる支線に、カマも貨車も出払った、長閑な時間だ。
12.28 元宝山西
混合に貨車が付かない場合、それは結構なことに、建設の牽く8輌編成の客車列車となる! 風水溝へ向かう途中の鉄橋が、どうも一番のポイントのようだ。
12.28 元宝山西−風水溝
帰りがけに、夕日を浴びた短編成の貨物をキャッチ。朝のバルブから、最後までトクした気分!
12.28 馬家湾−元宝山西
翌日はいよいよ熱水! 二つのホテルは日本人鉄の行きかう、「ここはどこ〜」的雰囲気で、いくつものグループ、何人もの知人に出くわす。朝の経棚側から熱水名物、山登り。朝日が抜群のタイミングで射してくれた! 
12.29 経棚−下抗子
上店の手前の踏切でこのカットを捉え、一日が終了。午前中に山登りをこなし、午後は比較的線路の近くで。そう若くない(笑)、年齢の近いメンバーだと、体力的にも無理がなく、正直言って助かります。
12.29 下抗子−上店
上左の次のカットがこの写真。ここで、煙が手前に巻かないのはきわめて珍しい。朝日のタイミングとともに、ラッキー!
12.29 経棚−下抗子
やはり熱水は、前日の元宝山より格段に寒い。こんなに澄みきった青空の下がこんなに寒いとは、ここへ来ないと実感できない経験だ。この日は経棚側から登る東行きの列車が多かったため、終日、峠の西側で行ったり来たり。カメラはなんとか動いてくれたが、シャッターの音は弱々しく、ワインダーの動きも頼りない。デジカメが最も役立たずだったのも、今年の新発見だった。
12.29 下抗子−上店(4枚共)
今回は、踏切以外に、山の上からのエンピツ写真ではない、こうしたカットも撮りたかった。サイドギラリや、前進重連どうしの交換シーンに、なかなか満足した。
12.29 
(左)下抗子−上店
(右)経棚
そして夜、別グループと合流しての楽しい宴会が待っていた。熱水を訪れる鉄にお馴染みの「金泉美食城」。壁には前進の写真が飾られ、テーブルには素朴な料理が並ぶ。ちょっと塩辛い味付けだが、酒が進むとともに気にならなくなる!?
12.29
翌朝、まだ明けやらぬ鉄橋を見上げる。ここも、なかなか煙がまっすぐあがってくれないのだが…。
12.30 下抗子−上店
朝の経棚駅で、スチームと朝日に包まれる前進6998号機先頭の重連。「振興集通」のゴールドスローガンボードが、凛々しい雰囲気だ。
12.30 経棚
その「振興集通」ガマを追うように、大板へ向かう。峠とはちがった、集通鉄路の冬の表情に出会えた。前進たちも、力闘が嘘のように、軽やかな足どりを見せる。
12.30
前進6998号が、大板機務段に帰ってきた。生き生きとした雰囲気に圧倒されるのはいいが、煙やスチーム、その影、そしてひっきりなしに声をかけてくる物売りのおかげで、撮影には苦労する。
12.30 大板機務段
大板の駅周辺は、集通鉄路の開通とともに開発された新しい町のようだ。車が大板に近づくと、原野を隔てて、いきなり機務段が見えたのにいちばん驚き、感動した。
12.30 大板機務段(5枚共)
本線からやや離れたところでは、物売りも少なく(笑)、落ち着いて撮影できた。少しイライラしたが、ボイラに金帯を巻いた美しいカマもいて、ふと見上げた青空に、ほっとする。
公園のようなスペースに、「MADE IN ENGLAND 4335」なる保存機が。鉄道のなかった大板に、いったいどこから来たのだろう?
12.30 承徳
12.31 承徳
大板から、最後の目的地、承徳へその日のうちに移動。ガイドの孔さんと、ドライバー氏の協力には本当に頭が下がる。承徳に着いたのは夜9時を回っていたが、さすが世界遺産の観光地、この餃子館の料理が今回、いちばん美味しかった! 旅の間おなじみだった「トマたま」(トマトと卵の炒め物)とも、またしばらくお別れだ。

大晦日、服装を「半・東京仕様」にしてホテルを出る。お二方は再訪だが、私は3台運転の消えた承徳専用線に、遅れてやってきた感じ…。期待はしたものの、朝の1時間半の間にやってきたのは上遊の重連単機1本のみ。「オッ。重連!」「何だ、貨車付いてない…」と喜怒哀楽に忙しかったが、朝日にたなびく白煙は、これはこれで、旅の最後にふさわしかったのかも。新線、ナロー、まだまだ中国は広く、奥は深い。出会った人々と、12月の青空に感謝しながら、再見!
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