太陽の警察ミニ・ノベル6「タカさん秘密の日記帳」
9月1日
今日、俺の総計遅刻日数が、千日を超えた。
ボスは直々に捜査課の俺の机までやって来て、俺に一冊のノートを手渡した。祝ってくれるのかと礼を言おうとしたところ、「罰としてこれから一ヵ月の間、日記をつけろ!」と、ボスが言った。
何で俺がガキみたいな事をしなけりゃならんのだ?
それ、今日はこれでおしまいだぜ!
9月2日
今日は遅刻こそしなかったが、ブルーな日だったぜ。
ゆきちゃん(弓長婦警)にお茶がちょっと熱いと言っただけでケンカになっちまったもんなあ。
まあ、いつもお茶汲みばかりしているからストレスもたまってるんだな。俺はいつも歌舞伎町で発散させてるが、女は損だわな。
9月3日
今日、私はボスに言いつけられた書類の整理をしました。
水沢さんにも手伝ってもらいながらでしたが、なんとか時間内に終わりました。今度からは一人でも仕事をこなして皆さんの頼りになることが私の目標です。
9月4日
あ~、まだ頭がいて~、昨日の日記をボスに出したらいきなり殴られたぜ。
それにしても岸川は使えんヤツだ、昨日俺は外回りだったのによ。先輩をいたわることができてないぜ。
今日も他に大した事はなかった。あ、ゆきちゃんが謝ってきたな。
ひょっとして俺はもてるのかも。水沢さんからいずれ天下を取っちゃるぜ!
9月5日
うっぷ……、もう飲めねえからかんべんしてくれ。
9月6日
案の定、昨日飲み過ぎたおかげで千一回目の遅刻だ。
相変わらずのボスの説教を聞き流していたが、二日酔いに頭が割れそうで聞くふりもつらかったぜ。
しかも、こういう時に限って事件が起こる。
スーパーの強盗で、犯人はすぐに捕まえたのだが、追いかけたのはルガー。捕まえたのもルガー。事情聴取もルガーと、俺は現場に行っただけだ。
ルガーは、「タカさん、飲み過ぎですよ」と言って笑っていた。今度こいつに浴びるほど飲ませてやろうと思いつつ、結局丸一日は朦朧としているうちに終わった。
9月7日
今日は待ちに待った日曜だ。
俺は最近、ゴリさんに競馬を教わっている。
ゴリラと馬の相性はよく分からんが、金を増やせるのと競馬場に出入りする若いギャル(死語か?)が目の保養になるからだ。
俺はしょっぱなからまずまず稼いだが、メインレースでゴリさんの勧めるナリタモアリアンに賭けたら、見事に負けやがった。帰りにはその詫びで飲み屋で奢らせたからまあいいか。
9月8日
今日で日記をつけてから一週間。
ボスが「どうだ?」と言ってきた。
俺は「こんなの、俺には余裕ですよ」と答えたのがまずかった。「そうか、じゃあもう一ヵ月やってみるか?」とボスがのたまったのだ!
冗談じゃないぜ。こんな日記をつけているだけでも俺のシブいイメージに傷がつくのにもう一月やれば捜査課の笑い物だぜ。
よし、こうなったら……。
……翌日、刈山刑事は、太田捜査課長を珍しくカラオケボックスに誘った。
翌々日、太田課長は五年ぶりに遅刻し、定時に出勤した刈山刑事と何やら取引したもよう。
太陽の警察ミニ・ノベル6〔完〕
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