誰が為に鐘が鳴る

 

 

「皆に発表するのは、晩餐の席にするから。」

身支度を整えながら真っ赤な顔で呟くユーリに、ぼくは頷きを返す。

異論は無い。

任じては居ないが実質摂政である兄上に、上王である母上、神にも等しい猊下に、王佐・・・。

ぼくらの関係者は国の主要な位置を占めている。

個人的な・・とはいっても、国主のことなのでかまわないのかもしれないが、

それでも国の事に支障が出るのは、望ましく無いと思うから。

「・・・晩餐までに母上がお戻りになられるといいのだが。」

ぽつりと呟いたぼくに、躊躇いがちにユーリが声を掛けてくる。

「そ、それでさ、ヴォルフ?」

「何だ?」

「その、発表するのは、おれがやっていい?」

「??かまわないぞ。」

ユーリの言葉に真意が飲み込めず、小首を傾げてそう答える。

「じゃぁ、何があっても____・・・」

ばたんっ!と激しい音がして、ドアを開け放って人が飛び込んできた。

「へいかぁ〜、ヴォルフ〜!」

「うわっ!?ツェリさま!!?」

「母上!」

ユーリの言葉の続きは、飛び込んできた母上にかき消されてしまった。

 

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