誰が為に鐘が鳴る

 

 

そして窓問い用の衣装が出来て、窓問いの日取りが決まった。

 

式の始まりは、まずは衣装のお披露目。

ユーリは黒で刺繍の入ったタキシード。

ぼくは白でユーリと同じ刺繍が入っているタキシード。

そして母上がグレタにスカイブルーのドレスを贈ってくれたので、

ぼくらは三人でバルコニーに立った。

いつもは降りている前髪を整え、上にあげたユーリは、

いつもよりほんの少し大人びて見える。

「なんだか・・いつもと違うな。」

「それはお互い様。ヴォルフすげー大人っぽくて、ビックリした。」

「どっちもカッコいいよ!だってグレタのお父様たちだもん!!」

可愛い娘の言葉に喜びもひとしおだ。

そのあとはお互いの家族と顔見せ・・だが、こちらにユーリの両親はいないので、

結局普段の晩餐と何一つ変わらない顔ぶれでの食事。

ただほんのちょっと違うのは、今日という日に望んだぼくらの緊張がピークだという事くらい。

そう・・・このあとが問題の、『窓問い』だからだ。

「あ〜・・この日の為に鍛えてきたつもりだったけど、おれちゃんと登れるかなぁ〜?」

「登ってくれないと話しにならないが・・・落ちて怪我をされても困るぞ?」

登るのも歌うのも代わってやる、とは言えなかった。

『歌を歌うのは、必ずユーリにやらせる事。』

それは兄上との約束でもあったから。

なんとなく二人で、ぼそぼそと話を続けながらその時を待つ。

_______もうぼくらは戻れないところに、来てるんだ。

 

 

 

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