しらふでいるときは

 

いきなりユーリに「愛してるって言って!」と迫られた。

一体なんなんだと問い詰めれば、テレもあるのか不自然に視線を逸らしながら

ぶつぶつとこんな事を呟く。

「だってさぁ、ヴォルフっておれのことを『婚約者』とは呼ぶけど、

おれお前がおれを『愛してる』っていったの、一度も聞いた事がないんだぜ?」

その言葉にぼくは思わず溜息をついた。

「全くお前は!これだからへなちょこだというんだ!!だれが嫌いな相手と婚約などするものか!!」

「あ!ほら、また!!」

不機嫌な漆黒の瞳にぼくが映る。

「また言った!『嫌いじゃない』って!」

「嫌いでないのなら、ぼくの気持ちも分かるだろう!?意味は一つだ!」

「分かればいいってもんじゃないの!それに意味は一つでも、伝わる心は違うだろ?

おれはお前のその口から聞きたいの!『嫌いじゃない』なんて遠まわしじゃ無くて、

もっとずっと真っ直ぐなお前の気持ちを。」

常に見たことの無いような真っ直ぐなユーリの視線に思わず怯み、

チェストに乗った酒瓶の元へと歩き、一杯だけ酒を煽る。

「あ!酒に逃げるなよ!おれ、そんな難しい事言ってるか?なぁ、ヴォルフってば!」

背中からなおも追いかけてくるユーリの声に、もう1杯酒を煽る。

「いままでだって言えなかったのに、催促されて言えるものか・・・」

ユーリには聞こえないように呟く。

「しらふでいるときになって・・・ぜったい・・・」

 

 

******************************
2005/11/16

「好き」の一言がいえないヴォルフ。

だからこその「婚約者だろ!?」の台詞。

それは否定されるのが怖いからの逃げ道なんだと私は思っています。

好きだと言ってしまったら戻れなくなってしまう。

婚約者なら嫌々やってるんだといわんばかりの態度で、否定された時の傷から目を逸らす事が出来るから。

・・・・これはもう少し掘り下げて書きたいと思いますVv

(これは、「さぁ、いとしいひとよ。さぁ!」と繋がっています。)

 

.