しらふでいるときは
いきなりユーリに「愛してるって言って!」と迫られた。
一体なんなんだと問い詰めれば、テレもあるのか不自然に視線を逸らしながら
ぶつぶつとこんな事を呟く。
「だってさぁ、ヴォルフっておれのことを『婚約者』とは呼ぶけど、
おれお前がおれを『愛してる』っていったの、一度も聞いた事がないんだぜ?」
その言葉にぼくは思わず溜息をついた。
「全くお前は!これだからへなちょこだというんだ!!だれが嫌いな相手と婚約などするものか!!」
「あ!ほら、また!!」
不機嫌な漆黒の瞳にぼくが映る。
「また言った!『嫌いじゃない』って!」
「嫌いでないのなら、ぼくの気持ちも分かるだろう!?意味は一つだ!」
「分かればいいってもんじゃないの!それに意味は一つでも、伝わる心は違うだろ?
おれはお前のその口から聞きたいの!『嫌いじゃない』なんて遠まわしじゃ無くて、
もっとずっと真っ直ぐなお前の気持ちを。」
常に見たことの無いような真っ直ぐなユーリの視線に思わず怯み、
チェストに乗った酒瓶の元へと歩き、一杯だけ酒を煽る。
「あ!酒に逃げるなよ!おれ、そんな難しい事言ってるか?なぁ、ヴォルフってば!」
背中からなおも追いかけてくるユーリの声に、もう1杯酒を煽る。
「いままでだって言えなかったのに、催促されて言えるものか・・・」
ユーリには聞こえないように呟く。
「しらふでいるときになって・・・ぜったい・・・」
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