さあ,いとしい人よ,さあ
ヴォルフとおれが成り行きで婚約する事になって。
はじめは男の婚約者というのに慣れなくて、拒み続けてきたけれど。
いつしかヴォルフはおれの中でかけがえの無い人になった。
そしておれの心がそうやって動いていく間、ヴォルフはというと・・・。
こんなことおれが言ったら完全に惚気だと思われるかもしれないけれど、
それはもう一途に、『ぼくの婚約者』とおれの後をついてきてくれて・・・。
あれ?
そういえば、とふと気付いた事がある。
「おれ、あいつがおれの事を『婚約者』って言うのは聞いた事あるけど、
好きだっていうところを聞いた事が一回もない!!」
その事に気付いたら、途端に不安になった。
ずっとおれの事を好きでいてくれて、側に居てくれたんだと思っていたけれど、
本当は『婚約者』の肩書きから逃れられなくて仕方なく側に居たのかな?
そう思ったら、ヴォルフの口からちゃんと「愛してる」の言葉がほしくなって。
職務を終えて当たり前のように魔王部屋へと帰って来たヴォルフを捕まえて、
おれはこう切り出した。
「なぁ、ヴォルフ。愛してるって言ってくれよ。」
いきなりのお願いに目を見開いたままのヴォルフを、真っ直ぐ見つめながら。
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