解離症状が認められる人でも、全員が全員、解離性同一性障害になるわけではありません。
いくつかの要因があるそうです。

リチャード・クラフトによる四因子論(1984年)


・その人間にトラウマによる解離・自己催眠傾向のような解離ができるポテンシャルがあること。

・性虐待・近親者の死・本人の病気の苦しみ等、その子供の自我の適応的な機能では対処しきれないくらいの
 圧倒的な体験にさらされること。

・文化的なもの、体験、想像上の友達などで、解離による人格状態を作り出す。

・重要な他者(たいていは親)による刺激からの保護や修復の体験が十分に与えられなかったこと。



そして、これを発展させ、解離性同一性障害(当時 多重人格障害)が認められたそうです。

コリン・ロスの四経路論(1989年)

児童虐待経路

クラフトによる四因子論を全て満たす古典的な解離性同一性障害。

10歳まで虐待を受けた場合、高い確率で解離性同一性障害を発症、さまざまな解離性障害を呈する。

解離症状はやや重く、解離体験尺度(DES)の平均値は40%前後が普通。


親や他人からの、(性的なもの肉体的なもの どちらも含める)虐待により、引き起こされる場合です。

特に 親からの虐待は、被害者が幼児期である以上 拒むこともできず ただ耐えるしかない状況を強要されるため

その場所(環境)や 加害者(親)への愛着を持たなければならないと、考えるようになります。

そういった時、子供は交代人格を作り出し その場を乗り切るために 解離して虐待を逃れるようになります。



ネグレクト経路

重要な他者がうつ病 精神分裂病 アルコール依存症 DIDその他の理由でうまく疎通できず、しっかりした愛着対象がもてなかったため、

想像の世界に引きこもって他の人格状態を作り出す。

解離は児童虐待経路のものよりやや弱く、解離体験尺度(DES)の平均値は30%前後。


他者というのは 主に母親のことです。物理的に子供の傍におらず 母が情緒的な支えになれなかった場合

子供は想像の世界に 他者を作り出し、そこに愛着を見出し 取り戻そうとします。

それこそが、交代人格誕生の瞬間となります。



虚偽性経路
   
DSM-Wにも記載されている身体的・心理的症状の意図的捏造。

治療前に解離症状はない。

過剰に演技した解離性同一性障害の印象が強く、解離体験尺度(DES)の平均値は70%と高い。


このタイプには 複雑で多種の治療歴を持っている人が多く、

自己誘発性の 感染症・貧血・身体的外傷、薬物依存からの離脱症状のふり、

受けてはいないレイプの虚の陳述、頻繁な検査歴、ドクターショッピング、

処方薬物の乱用、複数の精神医学的診断などを抱えていることがあります。



医原性経路

威圧的な説得・暗示・破壊性カルトによるもので、解離性同一性障害である間は、解離体験尺度(DES)の平均値は70%と高くなるが、

それが治まると正常値10〜20%に戻る。


こちらは威圧的な洗脳等を 治療者に行われた場合に発症する場合です。

治療前には重要慢性の解離症状は起こさず、親への愛着も特に以上な点は無く、複雑な医療受診歴もありません。

性格は依存型を示すことが多く、治療は、カルト宗教からの脱洗脳に準じる。



このコリン・ロスの四経路論は上から 多いものの順です。


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