解離性同一性障害Dissociative Identity Disorder)


まず 障害の説明の前に ちょっとだけ 耳を傾けて欲しい事があります。

そしてこの頁にダイレクトに検索などから飛んで来た方は
どうかここに書かれている事を「自己診断」や「他者の診断」に安易にしようしないで下さいね。

詳しくは コチラのTOPページから私のサイトに飛んで下されば判ると思います。



◆ 私は 今まで、自分から解離性同一性障害(以下DID)について 積極的に調べることが 困難な状態にありました。

前に一度 テレビで放送されたDIDの番組を見て (恐怖や混乱の)発作を起こし、

自殺未遂を起こしてしまったからです(別人格がパニックになりしてしまったのですが)

それ以来、なるべくDID関連の書物 メディア報道などに触れないように 努力をしてきました。

インターネットもまた、その対象であり  そのために、最低限の認識だけを持つ 無知な状態が続いてきたのです。

しかし時間をかけながらでも この障害と向き合おうと思えたので 私自身の勉強も含め、この場所の作成を試みました。


◆ けれど、ホームページにこういった場所を設ける際に、相談をした方から 驚く話を色々と聞かせていただいたので

最初に 障害を患うものの口で  このDIDという障害を説明しておこうと思います。


◆ 決して 漫画やドラマの題材になっているような「多重人格」を想像しないでもらいたいのです。

全てが間違っているわけではないのでしょうけれども、それらは あまりにも面白おかしく脚色されていて

私も実際に症状を自分で認識し、困難を抱えるまでは 「多重人格」という障害を 誤解していました。


個人の「多面性」と「解離性同一性障害」は まったく違います。

親の前と 友達の前では 全然違う態度をとってしまう。 というのは、個人の人格で行っていることですよね。

具体的に どんな部分が違っているのか、DIDが障害である以上 どんな症状やどんな悩みに直面するのか、

上手く伝わること それからほんの少しでも理解がいただけることを願ってます。


DIDについて・はじめに

*解離性同一性障害 というのは 精神病ではなく、 神経症です*

その違いは…

精神病 →妄想や幻覚などの知覚の異常、脳障害がある。自分が病気であるという 自覚がない。遺伝的素因。

神経症→現実性・思考過程・感覚事象の知覚に関する乱れはない、脳障害はない。症状を苦痛に思うという点で、
自分が病気であるという自覚がある。遺伝ではない。

トラウマの後遺症と言う点では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の仲間と言えます。



*トラウマと心的外傷後ストレス障害*


 「トラウマ は、近年、認知度の高い用語になってきています。

 いわゆる「ココロの傷」であり、専門的には 心的外傷と言われるものです。

 精神は、体験によってさまざまな反応を起こす。

 有益な刺激、体験は心をなごませ、生きる喜びを与え、希望を抱かせ、快感を覚える。


 一方で、有害な刺激、体験は心身の障害をもたらし、ストレスの原因となる。

 そして、過去の異常に強烈な有害体験が精神に外傷、すなわちトラウマを与えるように働き、

 その結果、比較的重度の精神障害を発生させていることがある。
 これを心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ぶ。

 トラウマを受ける例として、

 大震災や航空機事故などの災害や事故、戦争。

 強姦や誘拐などの犯罪被害や虐待などが挙げられる。

 これらにより心に深い傷を受け、事件を連想させる不快な場所や人間関係を避けるようになり、

 日常生活に支障をきたしたり、解離性障害のような症状を示す。



どんな症状が出る?

定義は後述 させていただきます。まずは分かりやすいように

私が実際に体験した DIDに関連する症状を説明したいと思います。



* 解離症状 *
普段 何気なく ボーっとすることは誰にでも経験あることですよね。 
解離というのは [意識、記憶、同一性、又は環境の知覚といった通常は統合されている機能の破綻] という定義があります。
しかし すべての解離が 病的な性質をもっているわけではなく、
簡単に言うと 「ある意識状態」から「別の意識状態」に、無意識に移行して、普段の自分と違う心理・意識状態になること です。

*病的な部分を含まない解離の例*

・空をみつめて時間の経過も気付かない。
・テレビや映画に没頭しすぎて周囲に気付かない。
・ぼーっとしていて時間の経過に気付かない。
・考え事をしていて話しかけられても気付かない。

*病的である解離の例*

・行動した形跡があるのに記憶が無い。
・まるで自分に起きていることが夢のようでとても現実だとは思えない。
・気付けば知らない場所にいるが、どうやってここまで来たのか記憶が無い。
・(自傷行為を含み)身体的な痛みを感じない。(痛覚における解離)
・自分の身に起こっている事が他人事のようにしか感じられない。(離人感)


解離は日常的で非病的な現象から、

重症で病的な現象までの連続体であると考えられています。



実際に主治医から言われたのですが 障害の治療というのは「日常生活に支障が出るかどうか」が 重要みたいです。
全ての解離(症状)が 障害というわけでは、ありません。

テレビに夢中になっていて 名前を呼ばれたのに気がつかなかった(解離した)からといって 生活に支障はでないですよね。

しかし 解離性同一性障害において 重度に生活に支障を与える点も、また 「解離による記憶の健忘」といった部分なのです。



▼私が日常で感じる解離症状は…

・映画やテレビなどに没頭しすぎて 時間の経過や周りに目が向かない。終わったあとも意識が朦朧としている。
・人と話をしていたりする時に 自分が会話しているという認識がなくなる。自分が自分でないように思える。
・自分の体を傷つけてしまう時など 追い詰められた瞬間に痛みを感じなくなるときがある。
*頭の中の声や姿を 聞いたり見たりする時がある。(人格からの話しかけに 気がつく瞬間というのは解離状態)
・空想の世界に入り込んで 現実との区別がつかなくなる。
*人格交代。無理矢理の交代だと ひどい頭痛と 高い山に登った時に感じるような眩暈などが起きます。


▼解離後の現象として
・記憶していることが 夢なのか現実に起きたことなのか 区別が全然つかなくなる。
*移動したり会話したりしていた形跡があっても それをまったく覚えていない。人生の重要な出来事すら覚えていない。
*自分の知らない人が 自分を別の名前として呼んで 話しかけてくる。
*自分に買った覚えのない品物を見つける。値札付きのまま 鞄の中に素で入っていた時もあった。
*ある場所にいて 自分がどうやってそこへ来たのか まったく覚えていない。


*印はDIDと関係の深い解離症状です。


私や他人格のタイミング、相性などによって  稀に 記憶の共有をできる時があります。
実際に表に出ている人は一人ですが その人と「手をつなぐ」ことによって(私たち独自の呼び方になってしまいますが)
その人の視線での景色や 外の音などを感じることができます。
けれど それが どんな時に可能なのか分からないし コントロールもできないので 私にとっては本当に稀な出来事です。
人格によっては 自分の意思でできる人などもいるそうです。




DIDの特徴

DID含み 解離性障害の診断には 当然ながら解離症状に本人や医師が気がつくことが大事です。

解離性体験尺度(DES;Dissociation Experience Scale)を受けるのが非常に有効。
JAVAスクリプトなどで配布されている場合も多いですが
きちんとした医師あるいはカウンセラーの元で受けるのが一番かと私は思うので
ここには あえてスクリプトは置いておきません。
自己診断だけは絶対にやめてください 無意味に暗示をかけるような行為を他者にすることも。

*解離性同一性障害者の特徴(疑われる徴候)*


・性的虐待、または身体的虐待の経験がある。
・女性。(男性よりも女性のほうが多い)
・年齢は、10代後半〜40代。
・記憶に欠落がある。(人生の重要な出来事を覚えていないなど)
・頭の中で声がする、あるいはシュナイダ-の一級症状。
・DSM-V-Rの境界性人格障害の診断基準を充たす、あるいはほとんど充たす。
・過去の治療が成功していない。
・自己破壊的行為を繰り返す。
・思考障害は無い。
・頭痛を訴えることが多い。



* シュナイダー一級症状とは*

思考化声(考えが声になる)
対話(問答)性幻聴(幻聴の相手と頭の中で対話する、あるいは2、3人が自分の噂をしあっているのが聞こえる)
自分の行為に対してコメントするような幻聴(たとえば顔を洗っていると「顔を洗っている」と聞こえる)
身体への影響体験(たとえば「電気をかけられる」)
身体への影響体験(たとえば「電気をかけられる」)
させられ感情・させられ思考・させられ行為
思考奪取(考えをとられる)
思考伝播(考えが他人に伝わっていくという、妄想にとらわれてしまうこと)
妄想知覚(それ自体は正しい知覚だが、意味合いの中には妄想部分が含まれる)

これは統合失調症(旧障害名:精神分裂病)の診断基準となるものです。

解離性同一性障害が 間違われやすい障害には、精神分裂病や境界性人格性障害(併病の場合あり)があります。

精神分裂病は「情動・思考と行為の統合の破綻 が特徴的で、
妄想(歪んでいるか現実性のない信念、たいてい被害妄想)や幻覚(知覚異常)が頻繁に現れて、
現実と非現実の区別があいまいになる」病気なんだそうです。

解離性同一性障害者もこのシュナイダー一級症状を高い確率で示すことから
精神分裂病への誤診が起こってしまいます。

違いとしては…

・分裂病においての患者の行動を操り、患者に考えを吹き込み、患者に批判の声を聞かせるのは 妄想的な他者である。

・解離性同一性障害の患者において、ホスト人格に様々な影響をおぼよすのは 交代人格である。

と言う部分が、一番の特徴であり 二つの障害の違いだと思います。



●交代人格・主人格ってなぁに?●


主人格(Host Parsonality)とは、交代人格の中で

「その時期 一番意識の所有時間の長い人格」のことで

基本人格(Original Pasonality)とは違う意味を持ちます。

ですから、基本人格=主人格というわけでは無い場合も多くあります。

(私の場合は基本人格=主人格=私 で今の所は落ち着いていますが)

●人格とは●

知覚、思考、感情、意思が能動的に自身から発する物として体験され、

外界から独立した存在であり、自己は単一であり、

時間軸において同一であると言う自我意識。
という意味があります。

解離性同一性障害では 複数の自己同一性を持ち、

すなわち複数の「私」 が全体として一つの人格システムを構成しています。

この一つ一つを交代人格 と呼びます。



交代人格のほとんどは 自分の名前や自分史(誕生するきっかけになった出来事など)を

各々が持っています。

それぞれ 得意なこと、対応できる出来事が違っており、

それが各人格の特徴となるので、一つの身体に複数の人間がいるように見えます。



解離性同一性障害の存在を否定する研究者の声には、

「誰でも複数の人格を持っている」

「誰でも状況に応じて別の行動をとる」

と言いますが、この場合の人格は正確には 交代人格と呼ぶ事が出来ない物です。

人間の持つ「多面性」では説明がつかない能力や力を発揮するのは

解離の及ぼしている部分でもありますし。

●交代人格は各々、特定の機能や優位感情を持っています●

人格が変わるということは、そのとき、
患者の体を支配しているある交代人格が別の交代人格へ切り替わることです。

患者の口調、しぐさ、感情は、
そのとき どの交代人格が体を支配しているかによって決まります。

以下、解離性同一性障害者の中にみられる 交代人格の主な役割。


・子供人格
(過去の体験を抱えて苦しむ子供や、天真爛漫な子供がいます。)
・異性人格
(女性の場合、異性人格は男性。守る/保護する等 同性愛者の可能性もあるようです。)

・迫害者人格
(自分に危害を加えた人がそのまま人格となって患者の中に現れる事も珍しくありません)
・自殺者人格
(辛い記憶を所持しているからでしょうか。自暴自棄なことを繰り返します。)
・記録人格=トレイス
(記憶を管理をする、特異的な点が多い人格)
・自閉的人格
(自閉症のように見える人格。)
・保護者人格
(内部の保護者。外側に対する保護者(攻撃的な場合が多い)など。
 基本人格より年上の場合もあります)
・性的放縦者人格
(性依存などを抱える人格 性奔放 価値観がやや可笑しい所も見られる)
・身体障害のある人格
(盲人格が多く報告されるようです。)
・内なる救済人格=ISH
(自己を助ける内部の救済者。治療の段階が進むにつれて現れることもあるようです。)
・薬物乱用者人格
(薬物を乱用する人格です。類としてアルコール依存をもつ人格も見られます)


以上のような類似化した言葉での説明では伝わりづらいかもしれませんが、
漫画や映画に出てくるような おもしろいもの・ミステリアスなもの では決してありません。

それぞれの人格が 同一性を築きあげるには 
人生をバラバラにする段階が組み込まれているのです。
それを忘れないでください。



2005年7月29日...追記。Sea-la.

 私達だけなのかもしれないですけど 以上のようないわゆる「カテゴリ」に
交代人格を定める事はほとんど無いです(。・ω・。)
例えば 私を見て、貴方は「●●人格」だと言えますか?(基本人格ではあるけど…)
これらの言葉は多分 DID発覚の段階に『治療側』が発見した患者の例と
その治療を円滑に進める為のものだったんじゃないかな…と思います。

 だからこそ、上にあるような言葉で一生懸命『人格の自己紹介』をする人を見ると
何だかなぁ。という気持ちになるのかもしれません。

 確かに私達は統合を主な目的にしていない。という点と
治療期間が1999年から。という理由もあって 付き合いが長い分
他の交代人格との交流なども進んできたから そこに違和感を感じるのかもしれませんが。

 誰かに「お前は迫害者人格」とか言われると 悲しくないのかなぁと不思議。
人格の名前・容姿から そう判断せざるを得ない事は多々あると思うし
私達にも そういった人格は存在してます。
でも 『それだけ』で人格というものが 本当に人格なのかどうか。
人間をカテゴリに入れるというのと同じ意味。

 ふと過去の自分の纏めた文章を見ていて思いました。

●交代人格の数●

最初に言っておくことは 解離性同一性障害において重要なのは

「人格の数が多い」ことではなく「まともな(治療続行可能な)人格が存在しない」ことです。

平均した交代人格の数は男性患者の場合9人に対して

女性患者の場合は15人前後と言われています。



私の場合●


▼私が解離症状や他人格の存在を知った時の簡単な経緯です▼
(参考ですので 読み飛ばしは もちろん可能)

私は最初自分の記憶に残らないリストカット (腕を自ら切る自傷行為)の痕跡を見つけ、不審に思ったので近く(電車で二駅)の

ちいさな個人クリニックに 親に内緒で通うようになりました。そこでは10分ほどの診察と、薬の処方を行っていたのですが

ある日、カウンセリングを受けたいか、と聞かれ、「もう少し長く話を聞いてもらえるなら…」と思い、ハイと答えました。

しかし結局、相手側(カウンセラー)にお電話した所、カウンセリングは現在していませんと言われ、その話はなくなりました。

後日、クリニックの先生が書いてくださった 依頼書のようなものを、返せとも言われなかったので開封して見てみたところ、

そこには 疑われる障害1 境界性人格性障害 2 多重人格障害 と書かれていたのを覚えています。



その頃 高校の保健の先生から紹介してもらった別のクリニックを一件尋ねてみたりしましたが 親がいないなら話にならない、

ということと 「記憶に無いなんていうのは多分(無意識であろうとも)嘘。貴方は自分でやってるのよ」と言われたのがショックで、

一度目の初診以来 とても行けそうにはありませんでした。

今思えば 治療途中で安易に別のお医者さんにもかかるなんていうことをしてしまって、最初のクリニックの先生に

とっても失礼なことをしてしまったな、と反省しています。信頼関係なしで 治療なんてできるわけもないですよね。



しかし その頃は高校生活 対人関係 バイト 日常生活と、心身共にヘトヘトだった時期で、周りの人の心配もよそに

どんどん自虐的な考えを巡らしていた毎日でもありました。自殺願望を行動に移してしまうことも数回。

意識の無い自傷に、救われてると感じた日もありました。

(私には怖くて自傷行為はできなかったけれど 自己嫌悪からか、自分の体が傷つくということが不快ではなかったのです)

2000年の8月、部活の夏合宿で対人関係や 自分自身に耐えられなくなり、合宿から帰ってきた翌日に 自殺を図りました。

処方されてはいたものの 飲まずに溜めてしまった 抗鬱剤・睡眠剤・安定剤等を30錠ほど服薬し、意識消失。

仕事から帰った親に発見され 意識の無いまま胃洗浄などの処置をもらい、2日ほど爆睡の後に目を覚ましました。

この時運ばれた病院が 現在も通っている大学付属病院です。(主治医は今と当時では違う人ですが)



多分 その日がきっかけ、というか 境目だったのですが、 頭の中からの声(呼びかけ)が聴こえるようになりました。

それは 現在でこそ人に言うことができるのですが、当時はとうとう狂ってしまったのだろうか、と悩みました。

声だけでなく 姿形まで見えるようになったのはその直後です。最初に出会ったのは 眼鏡をかけた男の人と 

私と近い年に見える女子高生風の女の子と ちいさな(小学生ぐらいの)髪の長い女の子で、

記憶が無い間に 腕が切れている、といった訴えも 彼らにしたら当然の出来事のようで驚きもしないで聞いてくれました。



実を言うと 実際に目や耳で 彼らを認識した日の後も、ずっとこれは夢か幻覚だろう。と考えていたものでした。

多重人格障害を自分の独学で勉強してみても、とても自分に当てはまる障害には思えなかったからです。

私には 幼児期の虐待の記憶は無いに等しいです。実父とは5歳前後に離れて暮らしており それ以前の記憶は

ほぼ無いのです。(現在 他人格から虐待があったとの訴えがあり 私自身が忘れたままなのかもしれません)

当初は医学的な知識までは とても独学で学ぶ力も気力もなく うやむやなまま、過ごしていました。



日を追うごとに増えていく 記憶の欠落や その間に起こしてしまう行動により 学校側から入院したらどうだろうか?と言われ

私は「卒業させてくれるなら」と言い 都内の大学付属病院(通院治療していた場所)に入院しました。



無事 高校を卒業したものの 決まっていた就職を蹴ってしまったことなど 辛いこともありました。

バイトも 長くて4ヶ月、すべては私本人の体調管理不足の問題ですが、現在もバイトを探して 四苦八苦です。

治療のこともあるので 焦りたくはないのですが、働かざるを得ない状況でもあります。

それでも充分に甘えきった生活をしているんですけれどね(^−^;)



解離性同一性障害の定義


医学的な定義は、こちらです。

・2つまたはそれ以上の、はっきりと他と区別される同一性または人格状態の存在。
(その各々は、環境および自己について知覚し、かかわり、思考する比較的持続する独自の様式を持っている)

・これらの同一性または人格状態の少なくとも2つが、反復的に患者の行動を統制する。

・重要な個人情報の想起が不能であり、ふつうの物忘れで説明できないほど強い。

・この障害は、物質(例:アルコール中独自のブラックアウトまたは混乱した行動)または 他の一般身体疾患(例:複雑部分発作)の
直接的な生理学的作用によるものではない。

※子供の場合、その症状が、想像上の遊び仲間または他の空想的遊びに由来するものではない。

〜アメリカ精神医学界『DSM-W 精神疾患の分類と診断の手引き』・ 医学書院・1995〜 よりの引用。



解離症状が認められる人でも、全員が全員、解離性同一性障害になるわけではありません。
いくつかの要因があるそうです。

リチャード・クラフトによる四因子論(1984年)


・その人間にトラウマによる解離・自己催眠傾向のような解離ができるポテンシャルがあること。

・性虐待・近親者の死・本人の病気の苦しみ等、その子供の自我の適応的な機能では対処しきれないくらいの
 圧倒的な体験にさらされること。

・文化的なもの、体験、想像上の友達などで、解離による人格状態を作り出す。

・重要な他者(たいていは親)による刺激からの保護や修復の体験が十分に与えられなかったこと。


そして、これを発展させ、解離性同一性障害(当時 多重人格障害)が認められたそうです。

コリン・ロスの四経路論(1989年)


児童虐待経路

クラフトによる四因子論を全て満たす古典的な解離性同一性障害。

10歳まで虐待を受けた場合、高い確率で解離性同一性障害を発症、さまざまな解離性障害を呈する。

解離症状はやや重く、解離体験尺度(DES)の平均値は40%前後が普通。


親や他人からの、(性的なもの肉体的なもの どちらも含める)虐待により、引き起こされる場合です。

特に 親からの虐待は、被害者が幼児期である以上 拒むこともできず ただ耐えるしかない状況を強要されるため

その場所(環境)や 加害者(親)への愛着を持たなければならないと、考えるようになります。

そういった時、子供は交代人格を作り出し その場を乗り切るために 解離して虐待を逃れるようになります。



ネグレクト経路

重要な他者がうつ病 精神分裂病 アルコール依存症 DIDその他の理由でうまく疎通できず、しっかりした愛着対象がもてなかったため、

想像の世界に引きこもって他の人格状態を作り出す。

解離は児童虐待経路のものよりやや弱く、解離体験尺度(DES)の平均値は30%前後。


他者というのは 主に母親のことです。物理的に子供の傍におらず 母が情緒的な支えになれなかった場合

子供は想像の世界に 他者を作り出し、そこに愛着を見出し 取り戻そうとします。

それこそが、交代人格誕生の瞬間となります。



虚偽性経路
   
DSM-Wにも記載されている身体的・心理的症状の意図的捏造。

治療前に解離症状はない。

過剰に演技した解離性同一性障害の印象が強く、解離体験尺度(DES)の平均値は70%と高い。


このタイプには 複雑で多種の治療歴を持っている人が多く、

自己誘発性の 感染症・貧血・身体的外傷、薬物依存からの離脱症状のふり、

受けてはいないレイプの虚の陳述、頻繁な検査歴、ドクターショッピング、

処方薬物の乱用、複数の精神医学的診断などを抱えていることがあります。



医原性経路

威圧的な説得・暗示・破壊性カルトによるもので、解離性同一性障害である間は、解離体験尺度(DES)の平均値は70%と高くなるが、

それが治まると正常値10〜20%に戻る。


こちらは威圧的な洗脳等を 治療者に行われた場合に発症する場合です。

治療前には重要慢性の解離症状は起こさず、親への愛着も特に以上な点は無く、複雑な医療受診歴もありません。

性格は依存型を示すことが多く、治療は、カルト宗教からの脱洗脳に準じる。


このコリン・ロスの四経路論は上から 多いものの順です。



...最後に...

DIDと闘病する事は、患者本人にも、周りの人にも、とても辛いものであると思います。

しかし、それでも前を向き、障害と向き合うならば、きっと望むべく未来が見えてくるはずです。

援助者のないDID患者は、そのほとんどがドロップアウトしてしまうという話を耳にしたことがありますから、

どうか患者と、周りの人の手が繋がることを。

そして、過去に作られた傷が、癒されていくことを、心より願います。

20020401・及ばずながらの手伝い役、ヒダカ アオイ



まだまだ勉強不足な点が沢山ありますが これからもゆっくり勉強と治療を続けていきたいです。

すべての虐待サバイバーと心の病みに悩みながら生きる人に、花束を…。

Last update 2002年4月2日→2005年7月29日・Sea-la&協力者Hidaka


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