出会いは火事場。
燃え盛る火の中に一人佇む人影は、
どう考えても、犯人や下手人。
もちろん看過できないわけで。
徒手空拳と知りつつも、立ち向かう。
対面した、炎に焼かれるようにして紅く染め上げられた双眸の烈しさに、見惚れる。
そのまま、目を奪われている隙を突かれてブラックアウト。→紅く染まっていたから、レッドアウトか?
そんな彼が人ではないことは、一目でわかった。
敵対する側、ということもすぐにわかったのだ。

















LOVE KNOT













その後、彼とは何度か邂逅を果たしている。

彼とは、坂本三四郎という、件の家事現場で出くわした人物のことである。

初めてあったときに一撃で昏倒させられた(・・・屈辱だ。)。

次に会ったときに、彼は、こちらを見下したように眺めやりながら、

「ほう。懲りずに、まだ向かってくるのか。無駄だからやめとけ。この、坂本三四郎様に向かってくる度胸は認めてやらんでもないが、命の無駄だ。」

と、自ら名乗ってきた。



正直、アホか・・・

と思った。

どこの世界に、自分から名乗る悪魔がいるのか・・・

まあ、こちらとしては非常にやりやすくなったが。

逃げられないように、結界を張り巡らせながら、

「あんた、自分の名前、名乗ってもいいんですか?」

と聞いてみる。

あれだけ堂々と名乗るのだから、真名ではないのかもしれない。

名前が大事なのは、どこの世界でも変わりがない。

名前を知られることは、自分を支配されることと、同等の意味を持つからだ。

だから、確認する意味で重ねて聞いてみたのだ。

最後の大詰めで、叫んだ名前が間違っていたら、しゃれにならないからな。(しかも、なんか恥ずかしい。)

すると、

「え・・・!? 」

と、えらく驚いた顔をしている。

「坂本三四郎って、自分でいってましたよ。」 

「なにぃ、自分で名乗ってしまったのか、私は!!!」

すごい形相でにらみつけてくる。

世界が終わったのかのような顔色だ。

確かに、俺のような職業の人間に名前を知られてしまったら、命に終止符を打たれることは自明の理だから、まあ、大げさなことではない。

彼が呆然としているうちに、どんどん結界を完成させていく。

ほぼ完成し、あとは、強制的に元いた場所に戻ってもらうだけだ。

さすがに、結界が完成していることと、今後の結果がわかるらしい。呆然としている状態から、回復し、結界の壁に体当たりしている。

えらく無茶だが、結界を作っている側の力と破ろうとしている側の力に大きく差が生じている場合は、その行為もまったく無駄というわけでもない。

自分の張った結界に自信がないわけではなかったが、過信は過ちを呼び込みやすいため、早く決着をつけようと、

「じゃあ、まあ、恨まないでくださいよ。元いた場所でがんばってください。坂本三四郎サン。」

といって、ゲートを強制的に開く。

いつも不思議なのだが、ゲートを開いたときに、ゲートの向こう側からひたすら強い白い光が発せられるのだが、ゲートの向こう側はこちらよりも、光り輝く世界なのだろうか。それとも、ゲートを開くという行為が光を発するのか。

どちらにせよ、この光は美しく、強制送還されようとする人物を美しく照らし出している。

きっと、送り出される側は自分がこんなに美しくライトアップされている、などということは思案の外に違いない。

もうあと数瞬で、消えてしまうだろう、この光景にしばしうっとりみやる。

いつでもこの瞬間は、どんなに神の摂理からはずれてしまったものでも美しく浄化されるのだ。

そうして感慨深げに光を見つめていると、

「ばかめ、こんなもので、この坂本三四郎様を縛った気になっているとはな!!!」

という笑い声と共に、力技で結界が破られた。





そうして、また逃げられた上に、飛んできた破片で怪我をするし、開いたゲートからむやみに出てくる小物達を掃除したりしなくてはならなくなり、事後処理にえらく時間と手間を要した。

しかも、あの悪魔・坂本三四郎の行方も見失うしで、散々な結果となった。

ようは、黒星2つに増えたというわけである。

汚名を雪ぐため、打倒・坂本三四郎を心に固く誓ったのである。





つづく。



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