その後、何度も彼とは向かい合うことになった。
その度に、いいところまで追い詰めては逃げられ、の繰り返しだった。
このままでは、ルパンと銭形警部・・・
出し抜かれまくり、ということか。
えらくへこむ・・・
しかし、凹んでいる場合ではない。
自分の管轄に、悪魔を一人堂々とのさばらせておくなど、許せることではないのだ。
沽券に関わる。
早く、一刀両断、快刀乱麻ですっぱりと、きれいにやってしまわなければならない。
というわけで、出没しそうな場所に向かう。
なぜか、いつも火事場に出没するのだ。
この乾燥警報が発令されそうな、秋から冬にかけて最も心配されているのは、不審火に違いない。
毎年、どこからか、放火魔という人種がやってくる。
あの悪魔がそうした人を煽っているか、自分でつけるかして、最近のここ界隈の火事を起こしているのではなかろうか。
そう、俺は推測しているのだが、なかなか尻尾をつかませない。
今一歩というところで、いつも逃げられてしまうのだ。
その原因については、認めたくないが、いつも最後の最後の詰めがどうも甘くなってしまうからだ。
・・・なんで、神の摂理から外れているというのに、あんなに無駄に美しいのか。
それが、彼らの最大の武器だということを知っているというのに、どうにもさじ加減が甘くなってしまうのは、まだまだ修行が足りない。
今日は、きっちり、すっぱり、片をつけて、枕を高くして眠るぞ、と固く心に誓った。
そうして、やはり、火の中に佇んでいる姿を発見する。
むこうもこちらの気配に気がついたのか、振り向いて、
「お前も懲りないなあ。」
と呆れ顔で、話しかけてくる。
が、悪魔と馴れ合うつもりはないのだ。問答無用で勝負を仕掛ける。
「放火魔を放置しておくわけには行かないんでね。」
といって、ためた力をだした勢いそのままに相手に向かってぶつける。
それを軽くかわしつつ、
「なにっ。お前、私が火事を起こしたと思っていたのか!!?」
えらく心外そうな声で応じてくる。
だが、状況と相手が悪魔ということもあって、自分の仮説を修正する必要を感じない。
仮に、彼が何もしていないといっても、これから何かする可能性がある以上放置しておくわけにもいかない。
俺が所属している宗派の中でも、「なるべくなら使っちゃいけないよ」ランキング上位に属する術をつむいでいく。
この前得た名前は、十分効力を発揮しており、結界を張らずとも拘束することができる。
だから、結界のほうには力を注がずに、「抹消」するほうに力を注ぐ。
「じゃ、こんどこそ、ほんとうにさよならです。坂本三四郎サン。」
ちょっと名残惜しい気がしないでもないが、そんなことを言っていたら仕事にならないのだ。
滅却の力を降り注がせようと手を上げたときに、燃える火の中から泣き声が聞こえてきた。
つづく。
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