ホームイギリス留学あれこれ > 「英国生活」編

イギリス生活あれこれ「英国生活」編

2004年

東洋大学 経済学部 助教授(執筆当時) 上村敏之

「上村敏之の研究室」ホーム

このページの情報は2004年8月時点です。左にフレームが出ない場合はこちらをクリック

 英国生活が始まりました。「渡英準備」編から進んで、「英国生活」編に突入します。なお、このページの内容はまだ未完全であることをお断りしておきます。今後、実際の生活を続けてゆく中で、徐々に更新してゆくことになります。それにしても、異国で生活を始めるということは大変なことです。日本ですぐできることが、言語と習慣の壁で2倍以上の時間がかかったりします。気づいたことを箇条書きでまとめてゆくことにします。

●時差ボケ(Jet Lag)

 英国に来て、最初に頭を悩まされるのが、時差ボケです。日本との時差は8時間(サマータイム)か9時間です。日本の方が時間が早いため、英国が夜の20時だと、日本は昼の12時もしくは11時ということになります。

 日本から英国まで、直行便で12時間ぐらいですから、昼の11時発の便で出発した場合、日本時間の23時(=11+12)に英国に到着することになります。ところが、英国ではまだ15時(=23−8)もしくは14時(=23−9)です。体はくたくたで、体内時計も夜なので、すぐに寝たいところですが、現地時間は夕方前という状況です。

 来てから数日間、ひどいときは数週間は時差ボケに悩まされることになります。夜の早い時間に眠くなって就寝するため、深夜2時とか3時に目が覚めることになります。それでも大人は時差調整が早いのですが、子供の調整は非常に遅いです。私は子供の時差ボケにつきあわなければならなかったので、自分自身の時差ボケがなかなか直りませんでした。

●サマータイム(Summer Time)

 英国は緯度が高い国なので、冬は日が短く、夏は日が長いです。国土が南北に長いこともあり、サマータイムを設けて、春夏は時計を1時間早く進めることになっています。英国のサマータイムは基本的に3月の最終日曜の午前2時から10月の最終日曜の午前2時までとなっています。3月の最終日曜日の朝になれば、1時間だけ時計を進める、10月の最終日曜日の朝になれば、1時間時計を戻すことになります。

 私はサマータイムになる前の週に到着したため、時計を1時間進めることになります。まだ時差ボケに苦しんでいますが、時計を進めるということは、時差の調整が少し改善されることになります。それまで朝3時に起きていたのが、時計が1時間進んだことで、朝4時になりました。まだまだ時差ボケの解消にはほど遠いですが。


●テレビ・ライセンス(Television Licence)

 イギリスでは、テレビ番組を見る場合、テレビの所有者はテレビ・ライセンスを購入しなければなりません。詳しくはTV Licensingを参照していただければよいですが、1年間のカラーテレビのライセンスは121£もかかります(2004年4月現在)。1£=200円として換算すると24,200円、1ヶ月では2000円ぐらいです。日本で言えば、NHKの受信料金のようなものですが、一度に払うと高いと思ってしまいます。

 それでも払わなければ、多額のペナルティがあるので、しぶしぶ支払うことにしました。なんでも、支払っていない家には見回りが来るそうです。郵便局で申込用紙を手に入れて記入し、窓口に向かうと、ディビット・カードから現金のどちらかでしか支払えない、クレジット・カードは使えないということでした。まだ銀行口座も開設していませんし、現金の持ち合わせもなかったので、出直して支払うことになりました。

 後でわかったのですが、1年間のライセンスの期間の計算が、きっちり1年間ではない、ということです。たとえば、3月26日にライセンスを購入した場合、有効期限は来年の2月末まで、ということになります。これでは実際は11ヶ月しかライセンスがないことになります。したがって、ライセンスを1年間きっちりもちたい場合は、月初に購入すればよいことになります。

 それにしても、ライセンスという名称がついていますが、実態は税金のようなものです。一体何に使っているのでしょうか。また時間があるときに調べたいと思っています。


●テレテキスト(Teletext)

 テレビ番組はもちろん英語だけですが、ノンネイティブにとっては、テレテキストという便利なものがあります。テレテキストは文字情報システムで、これによって字幕(サブタイトル)がほとんどの番組につきます。これには感心しました。ただ、テレテキスト付きのテレビを買わないといけません。リモコンにあるテレテキストのボタンを押せば、「TELETEXT」と書かれた文字ばかりの画面になります。その後、「888」とボタンを押せば、テレビ番組にサブタイトルがつきます。

 録画番組は、これから話すことがサブタイトルで前もってみることができます。しかし、ニュース番組のように、生放送番組はアナウンサーなどが話したことを文字が後追いします。たぶん、同時に打ち込んでいる人がいるのでしょう。後追いで文字を見るのは疲れますが、前もって文字が見れる場合は、非常に勉強になります。


●車の所有権の移転

 中古車を買ったので、所有権の移転をすることになりました。日本と違って本当に簡単です。日本だと、実印を押したりすると思うのですけど、こちらは前のオーナーのサインと日付、新しいオーナーのサインと日付を所定の用紙に記入して、郵送するだけです。こんなのでいいの?という感じですけど、書類を読む限り、大丈夫なようです。

 車関係の書類を郵送してわかったことなのですが、宛先の住所に「FREE POST」とあれば、切手は不要です。封筒に宛先を書いて、郵便局で切手を買おうとしたら、「FREE POSTだからタダだ」といわれ、なるほどと思いました。日本でも切手不要で印刷済みの封筒やはがきがありますが、宛先を直筆で書いて無料になるとは思いませんでした。

●ラウンドアバウト(Roundabout)

 英国と日本は、双方とも左側通行なので、車の運転に大きな障害はありません。一度、ハワイ島でレンタカーを走らせ、交差点を曲がったときに、右側通行なのを忘れて左側に寄ってしまい、怖い思いをしました。英国では少なくともそのようなことはありません。ただし、交差点が日本とは異なります。日本の交差点は十字路になっていますが、英国の交差点の多くはラウンドアバウトという円形のサークルをぐるりと回りながら、放射線状に伸びた進行方向に向かい、サークルから離れるという形式になっています。十字路の交差点もあるのですが、圧倒的にラウンド・アバウトが多いです。日本の多くの交差点には信号がついていますが、多くのラウンドアバウトには信号がありません。ラウンドアバウトの運転方法に慣れなければ、英国でのドライブはできないでしょう。

 ラウンドアバウトは必ず右回りです。右回りにぐるりと回りながら、自分の行きたい方向の道路へ進行方向をとり、ラウンドアバウトから離れることになります。ラウンドアバウトに入るときには、右側から車が来ないことを確認します。右から車が来なければ、ラウンドアバウトにはいることができます。口で言えば簡単ですが、これは慣れなければ結構難しいです。なぜなら、ラウンドアバウトに入るときは、左折することになりますが、日本での運転では、左折するときに右からの車を意識することはないからです。最初は、右から車が来ないかどうか、かなり意識する必要があります。

 ラウンドアバウトにはいる前に車線が複数になる場合、進行方向が左なら左側に寄り、右なら右側に寄っておきます。他の車がいるときに、左側に寄ってしまって、あとで進行方向を右にすることは非常に難しいです。進行方向が定まっていない場合、とりあえず右側に寄っておいて、ラウンドアバウトをぐるりと一周し、進行方向の指示を探すということもできます。つまり、間違ってもやり直しができるのです。この点は、ラウンドアバウトの利点のひとつだと思います。

 しかしながら、単純なラウンドアバウトではなく、複雑な場合はドライバーにはやっかいです。たとえば、ダブル・ラウンドアバウトというラウンドアバウトが2つ連なったものや、信号がついているものも頻繁に登場します。ぐるぐる回っているうちに、どの方向に行くべきなのか、わからなくなります。そのため、方向指示版をよく見てラウンド・アバウトに入る必要があります。また、ハイウェイとラウンドアバウトが組合わさっているときには注意しなければなりません。一度、間違ったハイウェイに入ってしまうと、かなりの距離を走らなければ、次のラウンドアバウトでUターンをすることができません。

 ところで、日本の交差点と英国のラウンドアバウトのどちらが良いのでしょう。深夜に車を走らせる場合は、日本の交差点の方が、いちいち回らずにまっすぐ進めます。でも、その分、スピードが出て、交通事故が起こるのかもしれません。英国のラウンドアバウトでは、しばしば中央のサークル部分や円形の外側に、花壇があって、きれいな花を咲かせているのを見かけます。そういえば、信号も日本のように真上ではなく、真横に目立たないようについています。賛否両論がありますが、英国人は景観というものを大事にする国民性なのではないかと思った次第です。

●医者にかかる

 こちらに来て1週間と経たないのに、体の調子を悪くして医者にかかってしまいました。おかげさまで体は回復しましたが、早速、英国での医療を実体験することができました。まず、居住地に近い病院でNHS(National Health Service)に登録しなければなりません。病院に申込書がおいてあるので、そちらに記入します。1年以上、居住する外国人なら登録することができます。記入内容は、氏名、生年月日、誕生した場所、住所、電話番号、英国に来た日付、サインなどです。これを提出するだけで診察を受けることができ、NHSカードが後で自宅に送られてきます。

 病院に行ってもすぐに診てもらえることは稀なようです。ほとんどの場合、予約をとることになります。日本だと、待たされてもその日のうちに診てもらえますけど、英国だと別の日にまた訪れなければなりません。もちろん、緊急を要する場合はその限りではありません。でも、風邪などは数日経てばかなり症状が変わってくると思うのですけど。予約の時間は厳守です。遅れるな、という注意書きがいたるところに貼ってありました。

 医療費は無料です。私のような外国人に対しても無料というのはすごいと思います。ただ、無料ということが、医者にかかりたい人の数を過剰にして、予約が一杯になるという状況と、NHSの財政難を生んでいると思われます。ですから、日本で支払う自己負担は、過剰な医療への抑制という側面での意味はあるのでしょう。診察を終えたら、処方箋を受け取って支払をせずに病院を出ます。処方箋は近くの薬局にもってゆき、薬を購入します。さすがに薬は無料ではありません。薬を買うときに、処方箋の裏に住所と氏名を記入します。

 ところで、英国では、まずはじめに近くの病院でかかりつけ医の診察を受けることになります。このかかりつけ医をGP(General Practitioner)といいます。GPが手に負えないと判断した場合、大きな病院に紹介状を書いてもらうことになります。移民が多いせいか、外国人への対応はかなり慣れているようです。また、医学用語は普段使わないので、辞書をもってゆくことをお勧めします。体に関わることなので、聞き流したり、意味をとれなかったりすると、大変なことになるからです。


●歯医者にかかる

 ある朝、朝食を食べていたとき、口の中で嫌な感触がしました。そうです。昔に歯に詰めた冠が、とれてしまったのです。英国に来る前に、歯医者に行って、異常がないかチェックしていただけに、ショックでした。まさか、英国で歯医者にかかることになるとは・・・。

 英国ではほとんどの医者はNHSではなく、プライベートになります。そのため、無料ではありません。早速、家の近くの歯医者を検索し、行ってみました。当然のごとく、アポイントが必要でした。アポを取って、翌日診療を受けました。とれた冠をもっていくと、簡単に消毒をして、接着剤のようなものをつけ、冠をかぶせて、終わりです。え、これで終わり、という感じでしたが、終わりでした。

 日本だとどれぐらいの値段になるのでしょう。たぶん、これぐらいだと安くすむと思います。しかし、ここは英国です。これだけの治療で、なんと40ポンド弱もとられました。1ポンド=200円として、8,000円ぐらいです。高いですね。ただ、私は日本に帰ってから、医療保険に申請すれば、日本の診療方式にもとづいて、一部が返金されます。そのため、英国のは医者には英語で治療についてのレポートを書いてもらいました。


●銀行口座を開く

 家賃を支払うために、銀行口座を開かなければなりません。英国内の銀行口座をもっていれば、ディビット・カードと小切手を利用できます。スーパーマーケットでの買い物にも使えますし、電気やガスといった公共料金、カウンシル税の支払いが楽になります。私はHSBCにしましたが、他にもBarclays、LloydsTSB、NatWestが有名です。

 私のような外国人の滞在者が口座を開設するためには、(1)英国の受け入れ先の大学からの紹介状(氏名と所属、英国と日本の住所が記載されたもの)と(2)パスポートは最低限必要でしょう。英国では外国人が口座を開設することは楽ではなく、(1)のような受け入れ先機関からの紹介状がなければ難しいです。パスポートは写真とビザの部分のコピーをとられます。

 さらに、(3)収入証明書(英文)があればなおよいです。私の場合、大学からの給料証明ということになりますが、ビザをとったときに使った証明書を一応携えておけばよいでしょう。英国では銀行口座を開設することはある種のステータスになっており、口座を開設できて一人前になるような感覚があります。日本では誰でもできるのですけど。口座を開設する際に、わざわざ支店のマネージャーの部屋に招かれ、なぜイギリスに来たんだ、イギリスの生活はどうか、などと談笑をしながら手続きをしました。そのため、私の場合は1時間ぐらいかかりました。日本でそんなに時間をかけて対応していれば、他の業務ができないと思いますが、都心の支店ではないので、そのような対応なのかもしれません。

 口座開設にあたり、マネージャーに聞かれることは次のようなものでした。第一に、なぜ口座開設が必要なのか。これについては、家賃やカウンシル税の支払いが目的だと告げます。第二に、ディビット・カードや小切手は使うのか。主にカウンシル税の支払いに使いたいと答えます。第三に、いつまで英国にいるのか。1年間だと答えます。あとは、氏名、出生地、電話番号、住所、勤め先(受入機関)の住所と電話番号などをコンピュータに入力していくことで、手続きが完了します。最後に書類にサインを求められますが、だいたい5カ所ぐらいにサインをしました。手続きが完了すると、インターネット・バンキングとテレフォン・バンキングのアクセス方法を教えてもらい、口座がちゃんと開設できたかを確認することができました。

 手続きに時間がかかり、説明の際に専門的な金融用語を使われるため、医者の場合と同様に辞書はもっていったほうがよさそうです。私の場合、overdraft(当座貸越高)という言葉が分からず、その場で辞書を引きました。また、暗証番号やMemorable Name(記憶すべき重要な名前)をコンピュータにインプットするとき、思わず手元を隠したのですけど、画面にはちゃっかり英数字が映っていました。Memorable Nameはインターネット・バンキングなどで必要な暗号で、母親の名前などに設定する人が多いようです。画面を通してマネージャーには暗証番号などが筒抜けになっているわけですけど、日本ではこんなことはないでしょう。それだけマネージャーは信用があり、責任があるということのようです。

 あと、いきなり銀行に行っても、口座開設ができるとは限らないようです。マネージャーのスケジュールもあるので、アポイントメントをとることになります。医者もそうですが、この国は何かとアポをとらせます。逆にアポをとらないと、ちゃんと会ってくれません。最終的に再び銀行に行ってカードと小切手を受け取れるのは1週間後です。また、日本だと口座開設時に1円でも預金の口座に入れることになりますが、マネージャーにその必要がないのかと聞いたら、必要ないということでした。そのため、私の口座は1週間ばかり£ゼロでした。最後にマネージャーと握手をして、口座開設を終えました。

 口座開設後、自宅に銀行から多くの郵便物が届きます。ディビット・カードの説明だ、暗証番号だ、クレジット・カードの案内だ、別の暗証番号だ・・・。ひとつにまとめたらよいのに、と思ったりしましたが、まあ、仕方がないでしょう。ところで、郵便物ですが、表に宛先を書くのは当然ですけど、裏に自分の住所を書く習慣は一般人にはないようです。企業や地方団体の郵便物は、裏に「If undelivered please return to」の後に住所が書かれていますけど、個人から届く郵便物は誰からのものか開けないと判別できません。なんでも、宛先不明で行き場のない郵便物が大量に眠っているそうです。

●カウンシル税

 カウンシル税はイギリスの地方税です。日本の住民税のように、所得に課税されるのではなく、住居のグレードに課税されます。日本でいえば、固定資産税に近い存在ですが、固定資産税は住居のオーナーが支払い、賃貸料に転嫁されているのに対し、カウンシル税は家賃を支払っている賃貸人でも支払う必要があります。ただし、扶養家族がいれば控除があったり、学生は免除されたり、住民税の所得控除のような制度があります。支払いは、ディビット・カードによる自動引き落とし、もしくは郵便局で小切手を切って行います。

 私にもカウンシル税を支払えという通知が地方団体から来ました。3月末から来ていますので、ちゃっかり3月分も日割りで支払え、と当然ながらなっています。問題は、郵便物が届いたその日のうちに、3月分と4月分を支払え、という無理難題が書かれていたことです。このとき、私はまだ銀行でディビット・カードや小切手帳をもらっていなかったため、すぐに支払いができなかったのです。というか、郵便物が届いたのは、イースターに入る直前で、そもそも銀行は休みでした。

 途方に暮れ、私は地方団体に、何日間か支払いを待ってくれ、というメールを出しましたが、案の定、返事はありません。後日、ディビット・カードを受け取って、銀行口座からの自動引き落としの申請書類を地方団体に郵送しました。ところが、その後、4月分の税金を3日以内に支払え、さもなくば1年分の税金を徴収するぞ、という脅しに近い赤い紙が送られてきました。

 びっくりしたので、すぐに地元の地方団体の支所を訪れて、自動引き落としにしたのに、どうしてこんな紙が来るんだ、と文句を言いました。少し待ってくれと言われ、コンピュータで調べてもらったところ、行き違いがあったようで、自動引き落としになるから大丈夫、ということでした。なんでも、私が申請書類を送付した前に、例の赤い紙を送ったということでした。しかし、どう考えても、時期的に合わないのですが、まあいいか、という気持ちになりました。それにしても、4月分の催促が来て、どうして3月分の催促が来なかったのでしょうか。しっかりしているのか、ぬけているのか、よくわかりません。


「上村敏之の研究室」ホーム