シラノ・ド・ベルジュラック

2007.8.29~9.9
 青山円形劇場
2007.9.14
 兵庫県立芸術文化センター

<CAST>

市川右近
 シラノ
安寿ミラ
 ロクサアヌなど
加納幸和
 ド・ギッシュ伯爵など
坂部文昭
 ル・ブレ 僧侶など
たかお鷹
 リニエール・カルボンなど
桂憲一
 クリスチャンなど
市川猿弥
 ラグノオ・モンフルウリイなど
ヴァイオリン
 廣川抄子
アコーディオン
 大田智子

<STAFF>

 エドモン・ロスタン
翻訳
 辰野隆・鈴木信太郎
演出
 栗田芳宏
音楽
 宮川彬良
美術
 朝倉摂
照明
 山口暁(あかり組)
衣装
 友好まり子
ヘアメイク
 武井優子
舞台監督
 矢島健
企画・台本
 笹部博司
振付
 ANJU

観劇記

兵庫県立芸術文化ホール編

たった一日では本当にもったいない!
舞台上に観客がいるという円形劇場での演出の再現
たった7人でシラノを演じきろう!という
創り手、演じ手、舞台裏を支える人たちの心意気
どの舞台でもそうだと思いますが
直にその熱い思いが伝わってくる
しかも芸に熟達なすった役者さんたちが
とっかえひっかえ早変わりして
楽しげに止まることなくリズミカルに進んでいく
プロフェッショナルな舞台

と、最初からまとめちゃあいけませんぜ

昼の部は客席から、しかもかなーり後方から
夜の部は舞台上の客席だったもので
一日でまったく違う視点
どんな観劇記になるのか自分でも予測不能

あらすじ追った観劇記はシラノ1で書いたので
2は思いつくまま気の向くまま

それでは行ってみよお!

なんて素晴らしいホールなんでしょう!

兵庫県立芸術劇場!我らが兵庫!

舞台上の客席は
両サイドに2列、正面3列(もちろん段上がりになってます)

役者さんたちの出入りは

舞台前方に左へ右へはける階段2段上がった廊下
舞台奥の左右それぞれの隅に斜めに向かってのびる階段3段上がった廊下から
もちろん中央には2段のデコレーションケーキのような舞台

まずは拍子木が鳴り

ロビンフッドみたいな帽子かぶった人の
帽子の羽根がなくなり、髪は銀髪に変わってた

「時は1640年!」

一段とよく響く猿弥さんのお声で始まり始まり〜〜〜〜

でもなあ、ちょっと舞台が暗いかも

遠くから見るとまるで定式幕に囲われたブラックホール

そこに魂ごと飛び込めない人にはちょっとキツイんじゃあるまいか
などとイラヌ心配したりして

私は飛び込めるんです!

恋しいお方の舞台ですもの!

思えば私が見た栗田さん演出の舞台って
どこかみんなブラックホール的魅力にあふれてた気がする

舞台から発散してくるというより
吸い込まれるような引力を感じる

言葉にからめとられて気がつくと
自分の頭の中にもうひとつの劇場が出来ている

それが目の前で展開している舞台の
簡素な装置も何もない舞台に

賑やかなごみごみした劇場や
やきたてパンのおいしそうなにおい漂う菓子屋や
ロクサアヌの窓辺
その下の木陰やベンチ
汗粋れでむんむんした兵舎
砂埃にまみれる戦場
静謐な尼僧院、プラタナスの森などが見えてくるような気がする

いや、見ていたと思う

演劇ってある種の錯覚よね

目の前に見えてるものだけが全てだけれど全てじゃない

知らず知らず自分の中にある風景や
事柄、人生、思い
そんなものを付加して見ている

感想を言葉にしようとするとなおさらそれを実感する

舞台が簡素であればあるほど
もうひとつの自分だけの劇場は自由な世界になる
無限だ

そして私はミーハーだ!

ミーハーも無限だ!

ヤンさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん

ヤンさんと共に堕ちる栗田式ブラックホール
ヤンさんと共に吸い込まれるメジャーリーグ特製ブラックホール

きゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

以下、観劇記というよりは
またもや
ラブレター^^;

ヤンさんのロクサアヌは美しい〜〜〜

ロクサアヌに恋する男たちが3人も居るし〜

その男たちの前に

猿弥さん!
裏の早変わりを是非見てみたかったなあ〜〜
ふっくらした感じが大好き
尼さんのあの声!最高におもしろかったです
最後のモリエールのくだりと嘆きにも涙をしぼられてしまいました。

坂部さん
あの落ち着いた雰囲気
いったい何役してらしたのやら
メインはル・ブレだけれど、結婚式の僧侶役や
最後の尼さんも印象的でした

たかおさん
こんなおかしな方がいらしたなんて〜〜〜
今まで知らなかったのが悔やまれるくらい
たかおさんのお芝居にはまりました

リイズ役の加納さん
年増女がなんてお似合いなんでしょう
歩き方といい全ての身のこなしが年増女のそれ!

でもでも兵庫の舞台
メインの客席に見えないからと言って
裏で笑かさないでください(笑)
たかおさん、顔から火を吹きながら
リイズの胸をモミモミしないで下さい(笑)
リイズさんもそれ大喜びしないで下さい(笑)
おかしすぎて
抱腹絶倒、面白絶句でした

男前クリスチャン!桂憲一さん
近くで見ると絶対ナインティナインの矢部さんだ!
緑の羽根飾りが派手でしたっけねえ
本名はクリスチャン・ド・ヌーヴィレット男爵

ぼんぼんだよね〜
でも可愛いと思うなあ〜〜
死んじゃう所なんて泣いちゃったもん

死んじゃう、と言えば
クリスチャンの「死んじゃう〜!!」はツボにはまりましたねえ
客席で隣りの友人とふたりして吹きまくりでした

今でもあの「死んじゃう〜!」を思い出しては
クスクス笑ってしまいます

ヤンさんとなんべんも抱擁を交わされて
いいなあ〜〜〜〜

気障でイヤミなド・ギッシュ伯爵
出世して公爵、加納幸和さん!

この方、可哀想なくらいロクサアヌに嫌われちゃってるのに
それでも愛することをやめないのね
ロクサアヌの辛辣さを一身に引き受けてそれでもまだ
大切に思っている
なんて純情な一途な人なんでしょう

終幕、尼僧院でロクサアヌに
「たいした夢想家でいらっしゃるのね」と言われて答える
「ありがとう」
この加納さんの「ありがとう」がたまらなく好きでした!

シラノが死んでしまってロクサアヌはどうなるのか

ド・ギッシュ公爵が影で全ての援助をするに決まってる
ロクサアヌの愛を得たいという気持ちはあるけれども
良き友としてロクサアヌを守り続けて下さると思う

シラノ・ド・ベルジュラック
市川右近さん!

右近さんと共演なさるって聞いただけで嬉しかった!
それがシラノとロクサアヌだなんて
嬉しくて嬉しくてしかたなかった

早く一日も早くその舞台を見たかった

そして夢は叶った!

右近さんのシラノは威勢が良くて
顔の中央にそびえる異形の鼻が良く似合われ(あれ?)

それになんといっても
緩急自在のセリフ術
たった一言でギュギュっと観客の心をつかみ
涙を振り絞らせる

クリスチャンの亡がらを抱いて言う
「あの人が愛していたのは貴様だぞ」(多分^^;)
たった一言で万感の思いが伝わってきました

同じ女性を愛した男への友情
その愛が叶わなかった男の無念に涙し
その愛を借りて自分の思いのたけを書き綴ってきたことの後悔

シラノの生き様だけでなく
クリスチャンやロクサアヌの生き様有り様までも
くっきりと浮かび上がらせる
素晴らしい見事なセリフに
心の中で拍手喝采を送ってしまいました

それと沈黙のうまさにも感歎!
一瞬舞台を無(む)にして空気を凝縮ひとつにしてしまわれる
あの沈黙の間(ま)に惚れました

シラノか右近さんか、右近さんかシラノか

映画のシラノも見ましたが
江戸前のシラノがピッタリで
心意気だけで生きてるんですから、やっぱり江戸っ子でしょう

ラストのシラノはもう素晴らしかった!

頭の包帯がこれまたよくお似合いで
痛々しくも壮絶で美しい!

ヤンさんもこんな素敵で頼りがいがあって
ロマンに満ちたシラノさんで
きっときっとお幸せだったに違いない!なんて思ってしまいました。

こんな3人の男性に心から愛され尊敬されるのが
マグドレエヌ・ロバン
ロクサアヌなのでございます!!

ヤンさんいつも絶世の美女!
わーい
ギリシャ悲劇グリークスでも絶世の美女ヘレネ!!
LOOT薔薇と棺桶では絶世の美悪女フェイ

どうしても美女を避けて通れないヤンさんであります!!

男が勝手に惚れちゃって
それで事件や悲劇が起こっちゃう

美女ぶりにもさらに磨きがかかり
しかも
コメディもナイス!な我らがヤンさん!!

今までのイメージを覆す
画期的なロクサアヌ像を
ヤンさんは創り上げられたのでございます!

思えば元タカラジェンヌ
清く正しく美しく
まっさにそんな感じ
誰にも穢す事の出来ぬ気高さと
迷いのない率直さ
まっすぐに正面を見据える強いまなざし
微笑めばどの男も虜にする

わがまま?自分勝手?
その通りかも
でもそれがたまらなく可愛いし潔い

右近さんの情熱的で緩急自在の言葉と
ヤンさんのよく通りハッキリと聞き取れる可愛い言葉が
舞台の上でダンスしてるみたいだった

美しくしかもコメディセンス抜群のヤンさん
淡いオレンジ色のドレスのヤンさんが登場されると
舞台がぱあ〜〜っと明るくなる

イヤな男にはとことん辛辣で
好きな男には一途に突っ走る
シラノの秘めた思いにも気付く事なく

それでも何故か憎めない
むしろそんな所が限りなく愛おしいのです

ラストシーンには泣かされました〜

「母は私を醜い子だと思っていた」

シラノにすがりついて泣くロクサアヌの背中を
まるで赤児をあやすように
よしよしとなでてやるシラノの手

ああ、思い出しただけでも泣けてきちゃう

「あなたがいられたからこそ、少なくとも、女の友達を一人持つ事が出来たのです」

「面白くもない私の生涯に、過ぎ行く女性の衣擦れの音を聞いたのも
まったくあなたのおかげです」

シラノ、最後の花道は
ロクサアヌへの愛と感謝の言葉で飾られる

死出の旅路に持ち行くもの

それは?

「私の心意気(羽根飾)だ」

ロクサアヌの胸に抱かれて息をひきとるシラノ

死の沈黙の中
(この沈黙も素晴らしかった〜)
ロクサアヌの嗚咽が悲しく響く

その嗚咽加減が絶妙で
最後の涙がドド〜〜〜とあふれてしまう

素晴らしかったです!!

再演希望です!

このキャストで!!!

もっともっと見ていたかったです!

素晴らしい舞台を見せていただき
本当にありがとうございました!

終わり

読んで下さってどうもありがとうございましたm(__)m


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