アルカス千夜一夜 スペシャル

「銀河鉄道の夜」

アルカス佐世保
11/23(金・祝)16:00〜

出演:安寿ミラ

演奏
笠松泰洋(作曲・指揮)
安田謙一郎(チェロ)
木ノ脇道元(フルート)
早川りさ子(ハープ)
太田雅音(ヴァイオリン)

安寿ミラと共に赴く『星めぐりの旅』
音楽と文学が出逢う、素敵なひととき

さ〜〜〜〜あ、観劇記行ってみよお〜!

というお元気モードはおいといて

銀河めぐる汽車の旅
ロマンチックにノスタルジックに行ってみよお!(おい)

銀河鉄道の夜、オーバーチュアが流れる中

舞台下手のドアからヤンさんが出ていらっしゃいました

キラキラ光るホルダーネック風の濃紺のトップスに
ドレープがたっぷり入ったドレス
足元は華奢なサンダル
おぐしはふんわりカールしたロクサアヌ色

四重奏の方々の後方をコツコツとゆっくり歩いて
舞台右手のクラシックな椅子に腰かけられました

椅子の前には書見台があります

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり
乳の流れたあとだと云われたりしていた
このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」

先生は、黒板に吊るした大きな黒い星図の
上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら
みんなに問をかけました

カムパネルラが手をあげました

それから4、5人手を上げました

ジョバンニも手を上げようとして、急いでそのままやめました

は〜〜〜〜〜〜〜〜

今、こうやって原作を読み直していくだけで
ヤンさんの声が聞こえてきます〜〜〜〜

なんて心地よいんでしょう〜

「銀河鉄道の夜」

宮沢賢治さんの数ある童話の中でもこれは特に有名です
けれど実はあまり知らなかったし
読むのに苦労もしました

ただ、銀河鉄道で星を共に巡った友が死んでいたんだ
という切なさだけは胸に残っておりました

ジョバンニとカムパネルラ

ヤンさんの朗読の中からクッキリと二人の少年の姿が立ち上がってきます

もの静かでけれども強い意志を秘めた少年ジョバンニの声は少しハスキー

優しい視線でジョバンニをいつも見つめているカムパネルラは
おっとりと無垢な声

ジョバンニとカムパネルラ

このふたりには、テレパシーで通じ合っているのではないかという
不思議な関係を感じました

ジョバンニには病気の母親がいます

「おっかさんの牛乳は来ていないんだろうか」

「来なかったろうかねえ」

「ぼく、行って取ってこよう」

きゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

また、ヤンさんの声が聞こえてきちゃう〜〜〜〜

少年たちだけでなく、おっかさんの声だってヤンさんなんですもの

病気で寝ておいでだけれど、あたたかいお声の
やさしいおかあさん・・・
先生のお声はもう少しキリっと知的

はあ〜〜〜〜〜素敵だわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

牛乳をもらいに行った先では牛乳屋のおばさんも登場します

このおばさんの役だってヤンさんです!
わーい*^^*

「いま、だれもいないでわかりません、あしたにしてください」

ちょっぴりぶっきらぼうな言い方で
ジョバンニとの距離も感じられました

あしたにはならないんですが、ちょっとしてからまた牛乳を取りにいくことになって

物語はその間の夢物語

ケンタウルスまつりの夜に
川へカラスウリ流しに行くザネリたちの中にカムパネルラの姿を見つけ

この時、ふたりは会話はしないけれど
多くのことを互いの瞳の中に感じ取り
お互いの気持ちが心の中に流れ込んでくるような
まるでテレパシーで感じ合っているみたいです

そしてこれが生きて見交わした最後になるのです

ザネリたちと共にいるカムパネルラにいいようのない寂しさを感じ

ひとり星に近い丘へかけあがっていくジョバンニ

先生の銀河の授業、流れる川

過去と現在、夢と現実、ジョバンニの中の強さと弱さ
そんなものが混じり合って川を流れて銀河へ流れ出て
銀河鉄道の夜は始ります

「銀河ステーション、銀河ステーション」

という声にハっと気付くと
ジョバンニは列車に乗っていました
そしてカムパネルラも・・・

ザネリはもう帰ったよ、お父さんが迎えに来たんだ」
カムパネルラはそう云いながら、少し顔色が青ざめて苦しいというふうでした

これが全てを暗示しているようです

カムパネルラは最後にジョバンニに会いに来たんだなあと
私は思いました

「死」へと星空を列車に乗って旅をする

宮沢賢治さんはこんな夢を見たことがあるんじゃないかしら?
死に行く人を見送る夢
もちろんその人の死を知らぬ時に

地図や切符を持っているのはカンパネルラだけ
何も持っていないジョバンニは終止居心地の悪さを感じているのだけど

白鳥の停車場へ向う

ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、
そらのすすきの風にひるがえる中を
天の川の水や、三角点の青白い微光の中を
どこまでもどこまでもと
走って行くのでした。
「ああ、りんどうの花が咲いている。
もうすっかり秋だねえ」
カムパネルラが、窓の外を指差して云いました

ああ〜〜〜〜〜〜
なんて美しい情景なんでしょう〜〜〜〜〜

ヤンさんの語られる美しい文章が
そのまま絵のように心に浮かびます

北十字は白鳥座
ハレルヤを歌う旅人たち

シグナルの緑の燈(あかり)が過ぎ
白鳥の停車場へ

河原の礫(こいし)は、みんなすきとおって・・・

水晶やトパーズの光る水に手をひたしてみる

このように
宝石キラメク「プリオシン海岸」から
鳥を捕る人のところへ

「ここへかけてもようございますか」

人生の苦み味わい尽くしたようなおじさま、鳥捕り

「わっしはすぐそこで降ります」
「居ますとも、さっきから鳴いてまさあ」

あ〜〜〜〜ヤンさん
おじさまの声も素敵ですう〜〜〜〜〜〜〜

サウザンクロス目指して汽車は走っていきます

切符の改札が来て慌てるジョバンニは可愛かったです*^^*
わけもなく灰色の切符を出すカムパネルラはちょっとホラーだな、と思ったりして^^;

鷲の停車場

そこには
つやつやした髪をした黒い髪の六つばかりの男の子が
赤いジャケツのぼたんもかけずにひどくびっくりしたような顔をして
がたがたふるえてはだしで立っていました。

そのそばには背の高い青年と12くらいの可愛らしい少女と

この3人兄弟(?)の声も見事に使い分けられて
(声を使い分けるっていう言い方は違ってると思うけど^^;)

ヤンさんのお芝居にすっかり聞き惚れ
3人の姿が目に浮かび
カットはされていたけれど、パシフィック号(タイタニックを思わせる)が
沈没してボートに乗れなくて命を落とした子どもたちと
ふたりは出逢うのです

女の子は蠍(さそり)の火の話をしてくれます

ヤンさんは星座にまつわるギリシャ神話から
「オリオンと蠍」ではなく^^;
「アルテミスとオリオンとアポロン」の話をして下さいます

もうひとつは「おおぐま座とこぐま座」のお話

星座の話の時は、ヤンさんは立ち上がられて舞台の前面に出てこられ
ギリシャ神話の本(?)をお持ちになっておはなしして下さるのです

きれい〜〜〜〜〜〜〜〜〜

まるでアルテミス、月の女神のようです〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いろんなことを共に語らった少女たちとも別れの時が訪れ
ジョバンニは言いようのない寂しさを味わい

「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ」
と振り返った時、
そこにはもうカムパネルラの姿はないのでした

ジョバンニは眼をひらきました
もとの丘の草の中につかれてねむっていたのでした
胸はな何だかおかしく熱り(ほてり)
頬には冷たい涙がながれていました

ジョバンニは大慌てで牛乳屋さんへ向い
牛乳をもらい
帰りの道で「子どもが水へ落ちた」ことを知るのですね

さっきザネリやカムパネルラと一緒にいたマルソという子が
ジョバンニに教えてくれるのです

ザネリを助けようとしてカムパネルラが水へ入り
そのまま見つからないことを

そしてカムパネルラのお父さんの博士から
ジョバンニのお父さんが近々戻ってくるだろうことを聞き

ジョバンニはそれを早くお母さんに知らせようと
一目散に河原を街の方へ走りました

物語が全てなのだなあ〜と思いました

ヤンさんの朗読劇は音楽とともに物語を際立たせ

人物を立ち上がらせ、情景を眼に浮かばせてくれます

少年の日の懐かしくほろ苦い思い出に
涙のしずくがポトリと落ちて
銀河の星になります

ヤンさんのおかげでまたひとつ宝物が増えました

「銀河鉄道の夜」

宮沢賢治さんの世界をもう少し
味わってみたくなりました

音楽も耳に心地よく、朗読と響き合って
世界を広げて下さいました

是非、近いうちの再演を!と願っております

ありがとうございました

アンダーラインの部分は原作より引用させていただきました

おわり

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