TMS-2
アメリカのジョン・E・サーノ博士が開発した理論に「TMS理論」と呼ばれるものがあります。

以下、「TMS」の説明は、書籍「サーノ博士のヒーリング・バックペイン」「腰痛は〈怒り〉である」から引用します。

「TMS」とは、「Tension Myositis Syndrome」の略で、日本では「緊張性筋炎症候群」と訳されています。

サーノ博士の理論では、運動器系の疾患(たとえば、肩こり、腰痛、手足の痛みやしびれ、五十肩、手首、足首、膝、肘などの関節痛など)を、すべて共通の潜在的な意識の「抑圧」からくる症候群だと位置付けています。

「抑圧」とは心の防御機制の一種で、ストレスによって生じた感情により、精神的破局を避けるための意識的・無意識的な心の働きをいいます。(心の安全装置による防御機構)

わたしたちは、自分自身を見失ってしまったり、パニック状態を避けるために、不快な感情を極端に毛嫌いします。
とにかく忘れよう、考えないようにしよう、無視しよう、無かったことにしようと、不快な感情を無意識下に押し込めてしまいます。
そして、さらに悪いことには、自分がそうしたことすら忘れてしまいます。
        
これが「抑圧」の正体です

この「抑圧」が、ふとしたことで再浮上してきたときが問題であり、無意識下での「抑圧」の再浮上は、当人を困惑させ、パニック状態に陥れてしまう可能性があります。
再浮上した「不快な感情」に対処するために、体が起こす生体防御反応こそが「TMS理論」です。

人間は「不快な感情」によるパニックを避けるため、意識の目を他に向けさせる必要があり、それには痛みがもっとも都合がいいようです。
身体に痛みがあると、不安や恐怖が意識の大部分を占め、本人の注意を完璧に身体に引きつけておくことができます。

「抑圧−慢性的なストレス」に対する体の防御反応は、虚血による筋緊張・老廃物の蓄積→神経障害であり、神経は筋肉よりも繊細にできていて、ほんのわずかな酸素欠乏でも症状を出します。
腰痛、坐骨神経痛は肩こりと共に特に出現しやすい症状だと言われています。

サーノ博士によると、多くのストレスの中でも特に「怒り」の「抑圧」がTMSを発動させます。
  1. 日常生活におけるプレッシャーによる怒り
  2. 幼少時代に受けた心的外傷(トラウマ)による怒り
  3. 欲求を満たすために自ら課したプレッシャーによる怒り(タイプT−完全主義者・善良主義)
治療法としては、次の2つのことが必要とされています。
  1. 客観的な疫学的データにより、腰痛にまつわる正しい情報を入手する
  2. 認識療法を行う(抑圧の原因追及−改善できるものは改善し、できないものはただ観察する)
TMS治療プログラム−最初の説明
  1. 痛み、凝り、灼熱感、圧迫感、知覚異常、筋力低下などは、筋肉や神経や腱の中の軽い酸素欠乏によって起きている。
  2. TMSの症状は、臨床医学の中で経験するどんな疾患よりも強い痛みを生み出すが、症状が消えてしまえば後遺症は残らないし、基本的にはまったく無害なものである。
  3. その原因は無意識下に抑圧された怒りである。TMSとは、抑圧された怒りから意識の焦点をそらすために作り出されたものである。
  4. 痛みの原因となる怒りは、日常生活上のストレス、幼少時のトラウマ、完全主義や善良主義による内的葛藤の総和であり抑圧された怒りの程度と症状の程度は一致している。
  5. 症状はTMS理論の内容を理解するにつれて消えていくので心配はいらない。
これらの事項を意識下だけでなく、無意識下でも認識できるように徹底させることが重要です。

徹底させるために、「ストレス・リスト」の作成、書籍の再読、講義討論会への参加、TMS理論の復習が勧められています。

TMS理論の復習−毎日の注意
  1. 痛みは構造異常ではなくTMSのせいで起こる
  2. 痛みの直接原因は軽い酸素欠乏である
  3. TMSは抑圧された感情が引き起こす無害な状態である
  4. 主犯たる感情は抑圧された怒りである
  5. TMSは感情から注意をそらすためだけに存在する
  6. 背中も腰も正常なので何も恐れることはない
  7. それゆえ身体を動かすことは危険ではない
  8. それゆえ元のように普通に身体を動かすべきである
  9. 痛みを気に病んだり怯えたりしない
  10. 注意を痛みから感情の問題に移す
  11. 自分を支配するのは無意識ではなく自分自身である
  12. 常に身体ではなく心に注目して考えなければならない
TMSは抑圧された怒り(無意識下)が原因であるため、簡単に自覚できるような怒りとは関係ないとされています。
よって、
腰痛を解決するには、そのとき表面に浮上している怒りではなく、心の底に隠されている怒りを探し出す必要があります。

TMS理論をきちんと理解し、自分の心と対話する必要がありそうです。
理解するにあたり手っ取り早い方法は、関連書籍を読むことだと思います。(前ページ参照)

私の経験から照らし合わせてみると、TMS理論に当てはまりそうな患者さんは少なくありません。
発症原因が、外傷であり負傷程度が同じ程度でありながら、回復力の個人差が大きく違う場合なども、単に自然治癒力の違いや栄養状態の差だけでなく、TMSが絡んでいるような気がします。

ストレス社会である今日では、運動器疾患全般にしても、大なり小なりTMSが絡んでいると思われます。
私見では、発症は外傷であったとしても、TMSが症状を悪化させていると考えられます。

「マイオセラピー」が、筋・筋膜に対して治療することにより、多くの症状を改善させてますが、何故筋・筋膜が緊張するのかは、今ひとつ究明されていませんでした。
骨格筋の疾患を悪化させる誘因のひとつに、ストレスが深くかかわっていると思っていましたが、「TMS理論」ではもう一歩踏み込んで、ストレスの中でもさらに「抑圧」が原因であり、その開放により症状を改善させているという点で、画期的な治療法であると思います。

サーノ博士は、TMSの患者は既存の治療を一切やめて、TMSプログラムを開始するべきだとしていますが、この理論は約20年も前のものであり古さも感じられますので、「マイオセラピー」などの筋肉に対する治療に「TMSプログラム」を融合させることが、必要であり理想であると強く感じています。

痛みが頑固な方、痛みの質が強い方は、是非「読む薬」
   と呼ばれている「ヒーリング・バックペイン」か「腰痛は(怒り)である」を読んでみましょう。

細かく説明するよりも本を読まれた方が、きっと理解しやすいと思います。


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下記文章は「TMS理論について」の引用のまた引用です