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D A Y S
3day by サキサカ
ボクは、自分が大好きだ。
自分で言うのもなんなんだけど、この17年(つまり生まれてからずっと?)かなりいい想いしてきてると思う。
オイシイと思うよ?
顔もガタイも、並以上。
どっちかーてーと、かなり上?
女の子は「イケメン」ってよく言う。
運動神経だって悪いほうじゃない。
遺伝子のお陰かもしれないけど、ほんと、ボクって得してる。
頭もこのガッコウに入れたくらいだから、まあそれほど悪いってわけじゃ・・・・・う〜ん・・・・・これはもしかしたらイタイかもしれないけど、今のところ生活に支障はない。
小さな頃は幼稚園の先生や友達のお母さんたちに「かわいい〜」ってよくもみくちゃにされた。
小学校ではクラスメイトから上級生のお姉さま方まで、気がつけば取り囲まれていた。
それまで天使のような可愛い声ね、なんて言われて背も小さかったボクだったけど、中学に入って身長が急に伸びて声も随分低くなった。
だけど顔立ちは元モデルの母さん似だって言われるくらいだから、どっちかてーとオンナ顔。
毛深いほうでもない。
「いいカラダしてるのに、カワイイノネ」
なんて年上のお姉さんにはすこぶる評判がいい。
知らないガッコウの女の子からも声をかけられるようになってた。
何度か母さんの知り合いだとか言う編集者さんに頼まれて、読者モデルみたいなこともした。
その所為か、高校に入る頃にはちょっとした有名人になっていた。
嫌味みたいだけど、だからって同性に恨まれるようなキャラでもない。
だから、ホント、気楽に楽しんでる。
楽しんでた。
めちゃ楽しい。
楽しかった、はず・・・。
なのに、なんか物足りなくなってた。
「ホントハ、タノシイフリシテルダケダッタリ?」
エリに言われて。
マジウロタエタ。
いつの間にか、人に囲まれてる。
嫌いじゃない。
期待に満ちた目も好きだ。
すげー快感。
でも、ちょっと・・・?
「サキサカ、ごめ、それとって?」
昼休みになるとボクをとり囲む女の子たちで、教室の一角、ボクの周りは華やかになる。
(あ、ボクも華やかだから仕方ないんだけど)
これだけ女の子が居て、ボクを「譲くん」って呼ばない女の子、実は(嘘みたいだけど)初めてだったりする。
「お花畑状態。」
エリがいつものことなのに、凄く驚いたような顔をした。
まあね?
お花たちに集まるヤローまでが混在となって、かなり楽しい空間になってる。
だけど、ボクの隣の席のエリとその後ろの席の加奈子だけはフツーに話しかける。
むしろ、この状態は苦手という感じ。
「ハイ。」
「さんきゅ。」
机の脇にかかっていたコンビニの袋を手渡すと、エリは小首を傾げて微笑んだ。
その仕草は、どこかこのガッコウにはソグワナイ。
どこのお嬢さまだっつーのよ?
そう、エリは黙って座っていれば、清楚なお嬢様に見えなくもない。
真っ直ぐな黒髪。
色素の薄い茶色の瞳、透けるような白い肌。
どっちかというと薄い胸も、多分、そういうマニアにはたまんないんじゃないか?
清楚な可愛らしさを持っているのに、仕草もそうなのに、口を開くとかなり驚く・・・というか、引く。
言いにくいこともずばずば言うし、あえて空気を読んでないだろ?と突っ込みたくなることを言ったりする。
「サキサカ、養護の菜々子サンが呼んでた。5時限サボるんでしょ?あんま腰使うと、また歩けなくてヤバイよ?」
「エリ・・・お前ね・・・」
「ちょーっ!サキサカ、あんた菜々子サンまで手出してんの?節操ねぇー!!」
「加奈子・・・」
そして例外その2。
サキサカって呼ぶもうひとり。
加奈子はつい最近まで『遊んでます』キャラだったのにキャラ変したみたいで、茶髪(地毛色らしいけど)のストレートで・・・まあ、化粧は相変わらず濃いんだけど・・・なんつーか雰囲気変わった。
加奈子って胸でかくて、今までのキャラだとそりゃ遊ぶのにはもってこいのオンナの子に見えた。
プロポーション抜群だしな。
男子の中では、必ず話題に上ってたりする。
嬉しくはないだろーけど、夜のお友達にしてる奴は多いんじゃない?
気があえばやらせてくれるとか、そんな噂もあったみたいだし。
キャラ変してからは、そーゆーことには全然乗ってこないらしい。
ま、二人ともボクのことにはそれほど興味がないようで。
そんな女の子は初めてで、ちょっとびっくりした。
よくあるのは、気がないフリをして実は・・・なんてのはあるんだけどね。
・・・この二人に限って、ありえねーしな。
―・・・気がないってのはちょっと違うのかな。
エリなんてすげーきらきらした目で見つめてたりする。
本当は、ボクのこと好きなんでしょ?って、勘違いしそうな目でね。
(さすがに飢えてないボクは、そんな間違いはしないけどね)
そう、美術鑑賞って・・・そんな感じ。
裸にされてくようーな、そんな感じだ。
まさに、視姦。
「二人とも、そーゆこと大声でいうなっつーの」
えーーーー!と悲鳴に似た声を上げる女の子たちと、ずりー!って大声上げるヤローたち。
そりゃそーだよな。
菜々子さんはヤローどもの憧れの存在だ。
ごめん、みんな。美味しくいただいてるんだ!なんて笑って言えば、とりあえずはこの場はおさまる。
「譲くん、どこ行くの?」
「菜々子さんとこぉ〜!?」
「ん、ちょっと」
でも、この際無視して、舌を出して教室を出て行こうとする二人を追いかけることにした。
「何?ついてきても今日はお菓子ないよ〜?」
「昼寝。すんでしょ?ボクも眠いー」
「夜、遊びすぎなんだよ。サキサカは。」
「おねーさんが寝かせてくれないんだよ」
「菜々子さんはいいの〜?」
一緒にくんのかよ!ってげって顔する加奈子に、くすくすと笑うエリ。
なんか、面白いんだよね。
今までの自分も好きなんだけど、この二人と居ると・・・今まで知らなかった自分を見つけられるような気がする。
ボクは自分が大好きだ。
でも。
「で、加奈子ぉ、お前コンビ二ユキくん、落とせたのか〜?」
「うっせっ!サキサカ、マジでシメル」
"タノシイフリ"をしなくていいこの二人が、ボクは結構好きなのかもしれない。
2007,11,1