.    '11年4月7日

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片葉鹿の子(かたは かのこ)

 カタクリの開葉がはじまりました。やがてこのあたり一面、カタクリの花でおおわれることでしょう。しかし、写真の株に今年花が咲くことはありません。 発芽した 1年目は針のような葉が出るだけ。 それから 7,8年の間はこのような一枚の葉 『片葉(かたは)』で年を重ねます。そして 2枚の葉が出た年に、ようやく花をつけます。 カタクリの名の由来として…片葉に‘鹿の子模様’(子鹿の背中のまだら模様)があることから【片葉鹿の子】、それが【カタカゴ】に変化し、さらに【カタクリ】に転訛したとの説があります。他にも諸説ある中で、この説に説得力を感じます。 ところで、当園地のカタクリについては、市民会議会員により開園以来これまで蓄積してきたデータがあり、それはもはや‘素人の研究’の域を超えています。その成果をカタクリ観察会 でお聞きになってはいかがでしょう。





  花が咲き、実がなり、5月には地上部は消失する


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早寝早起き

 作業中に誤って折ってしまった ハウチワカエデの小枝。 径 5ミリほどの小枝の折れ口からは 瞬く間に水滴がしたたり落ちました。すでに盛んに水を上げているようです。 この時期、活動を開始している樹木は少なくありませんが、カエデはもっとも早く目覚める樹のひとつです。  秋に休止状態に入るのも早く、『早寝早起きの樹』との健康的な愛称もあります。
 葉のない時期に水上げができる理由(メカニズム)は、いまひとつよくわかっていません。〔←根圧や水の凝集力だけでは説明がつかない〕  そんな基本的なことさえ未解明であり、人知の及ばぬ樹木の神秘や奥深さを痛感するのでした。 一方で、 コナラミズナラ は、水を上げる組織〔導管〕を盛んにつくっていることでしょう。 それらの樹の導管は一年しかもたないため、まずは 今年の水上げパイプをつくる必要があるからです。多くの植物は、すでに目覚めました。







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今年の春 (東日本大震災から 1ヶ月後)

 森林エリアを 8つの区域に分けてそれぞれにゾーン名称をつけています。 1.やましごとの森 2.大助広場 3.うつろいの森 4.彩(いろど)りの森 5.みはらしの森  6.みんなでつくる森 7.斧研沢(ゆきとぎざわ)の森 8.森のわき水 です。 写真は‘みはらしの森’からの眺望。見えているのは前常念岳(標高 2661m)です。 この左には 蝶ヶ岳(標高 2677m)が、後ろには常念岳(標高 2857m)が連なります。 当園地が開園して 10年目の早春風景です。
 このような定点で自然観察をしていると、同じ頃に同じ野草が芽吹き、同じ樹の花が咲くのを目にします。 山の眺望もある意味単調といえるほど律儀に毎年同じ姿になります。それはここに限らず日本中がそうであり、今年もまたいつもと同じ心躍る春がきて、 いつもと同じ季節が繰り返されることになんの疑念も抱いていなかったのですが…





    ついこの間まで、自然の脅威を忘れていた