第8章 須佐之男の命 八俣の大蛇退治
高天原を追放された須佐之男の命 スサノオノミコト は 中洲国(地上)・出雲の国に 降り下った。
人里を探していた彼は、川に流れる箸を見つけ、上流に人が住んでいると思い 河を上流へと向かいました。
上流には一軒の家が‥‥ナント?家の中では 老人夫婦と美しい娘の三人が、オイオイと泣いているのです。
スサノオノミコトが 何が悲しくて泣いているのかと聞くと、
☆「私は 国津神くにつかみ 大山津見の神 おおやまつみのかみ の子です。
私の名は足名椎 あしなづち 妻は手名椎 てなづち 娘は櫛名田比売 くしなだひめ といいます。
私達には 八人の娘がいましたが、八俣の大蛇 ヤマタノオロチ が毎年、この時期に襲って来て
毎年、娘を一人づつ食べられてしまって ついに 一人の娘になってしまいました。
今年もまた 八俣の大蛇がやってきて 最後の一人娘も食べられてしまうのかと思うと
悲しくて・悲しくて泣いているのです」と、老夫が答えました。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
足名椎あしなづち は、晩生おくて の稲で 手名椎てなづち は、早生わせ の稲を意味します。
櫛名田比売くしなだひめ は、奇稲田姫くしいなだひめ で 稲作の神の意味しますので
八俣の大蛇とは 稲の収穫期に、米を略奪に来る盗賊とうぞく どもの比喩なのかも?
あるいは 神の時代には 八つの頭をもつヤマタノオロチが本当に いたのかも知れません?
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
老夫(足名椎)は、泣きながら 話をつづけます
「八俣の大蛇は、八つの頭と八つの尾が有り、眼はまるで赤かがち(ホオズキ)のように真っ赤で
その身体中一面に 檜や杉の木や苔こけ が生えているものすごく大きい恐ろしい大蛇です。
大蛇の身体の大きさは 八つの谷・八つの峰に渡るほどなのです」。
話を聞いたスサノオノミコトは う~ん!と しばし考えて 足名椎に向って言った。
「俺にまかせろ。 私は天照大御神の弟である。わしがその大蛇を 必ず成敗いたす。
わしが お前達を守った暁あかつき には、娘を嫁にするとしょう 異存は無いな」
足名椎夫婦は 「恐れ多いお話でございます、喜んで娘を差し上げます」と、畏かしこ まり答えた。
須佐之男の命スサノオノミコト は、さっそく
櫛名田比売を聖なる湯津爪櫛 ゆつつまくしー櫛ーに変えて、自分のみずらー結い束ねた髪の毛ーに刺した。
次に 足名椎・手名椎に向かい
「醸造を幾度も繰り返した強い八塩折の酒 やしおおりのさけ を用意し 家の八つの門の垣根のすべてに
八塩折の酒をタップリ入れた・酒船の樽を置いて、待つように」と、命じた。
老夫婦は、スサノオノミコトが命じた通りに用意万端整え あとは オロチの来襲を待つばかりです。
ジャジャーン! まもなく 聞いた話まんまの大蛇 オロチ がやって来た。
オロチは よほどの酒好きらしく 酒樽めがけて猛突進。 作戦通りです!
イキナリ 八つの頭を八つの酒樽につっこみ 勢いよくガブガブ・グイグイと 飲みはじめた。
八つの酒樽の酒をむさぼり飲み干したオロチは 酔い潰れグッスリと 眠りこけてしまった。
スサノオノミコトは 隙すき を見てすぐさま 十拳の剣とつかのつるぎ で、オロチの身体を こなごなに切り刻んだ。
オロチから流れ出る血は 肥の河ひのかわ に流れ出し 河の水を真っ赤に染まり 血の河になりました。
それ以後 斐伊川ひいかわ は 赤い水が流れていると伝わるが 実際の成分は鉄分の錆なのです。
スサノオノミコトが ヒーローになった瞬間でした。
※草薙の剣 くさなぎのつるぎ
スサノオノミコトが オロチの尾を切ったとき カツンと音がして十拳の剣 とつかのつるぎ の刃が こぼれた。
スサノオノミコトが使った十拳剣の別名 天羽々斬 あめのはばきり “羽々”とは“大蛇”の意味。
オロチの尾を切り開くと、一本の刀が出てきた。 この刀を都牟羽の太刀 つむはのたち と名づけた。
ミコトは この太刀のもつ深い因縁を考え 高天原・天照大御神に大蛇退治の一部始終を話し 献上した。
この太刀が 今尚 現存するあの有名な 草薙の剣 くさなぎのつるぎ です。
スサノオノミコトは、大山津見の神 おおやまつみのかみ の子 足名椎あしなづち 妻の手名椎てなづち
そして、娘の櫛名田比売 くしなだひめ を、八俣の大蛇から無事守りぬいたのでした。
高天の原を追放された暴れん坊・須佐之男の命は 中洲国なかすくに でヒーローになりました。